黄昏色の詠使いVII  新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ (富士見ファンタジア文庫 さ 2-1-7 黄昏色の詠使い 7)

【黄昏色の詠使い ?.新約の扉、汝ミクヴァの洗礼よ】 細音啓/竹岡美穂 富士見ファンタジア文庫


クルーエルのヒロイン性は完璧だなあ…(慨嘆
ようやく前回までのアマリリスによる浸食、というかアプローチ?の影響によってクルーエルの身体を蝕んでいたモノが拭い去られ、元気になったと思ってたら、結局問題は何も解決していなかったというわけなのね。
彼女が背負い続ける破滅へのリスクは、まさしくヒロインとして相応しい特性なんだけど、ちょっと辛いよなあこれは。
本来クルーエルとは、世話好きで明朗快濶、少しやんちゃなところもある正義感たっぷりの、でも女性らしさに満ち溢れた優しいお姉さんで、まだ幼い主人公のネイトからすれば、どちらかというと甘えたい対象というべき存在になるはずだと思うんですよね。実際、クルーエルは自身が負っている破滅を意識することなく(無意識には自覚しているのでしょうけど)、ネイトという少年を自分は庇護し支えるべきだと考えている(恋愛感情も自覚し出しているけど、まだそこらへんは擦り合わせてる段階のようにも見える)。
でも、ネイトからするとクルーエルを襲う運命の末路を知ってしまった以上、ただ頼り甘える相手ではいられないんですよね。母の軌跡を追い、母の想いを探して、どこか周りの全てを、自分ですらもかなぐり捨てて母が残した【夜色】を一身に、一心に追い求めていた少年を振り向かせるほどの強く眩しく、そして暖かい光。その光は、同時に今にも消えてしまいそうな儚さを秘めていて、自然と少年にその光を守りたい、守るために強くなりたいという意識を芽生えさせる。
これはまさしく、子供でしかない幼い少年を、一人の男に成長させる要因であり理由そのものなんですよね。
守ってくれる庇護者であると同時に、守ってあげなければならないお姫様という両面の特性を有しているクルーエルのヒロイン性は、完璧なんですよ(力説
ただ、そのためにクルーエルが背負う羽目になった運命が、半端ない過酷さで、正直たまんないんですが。
でもね、その分ネイトが男の子としておっきく成長してきているので、不安はないのですけれど。カインツが母イブマリーに対して果たせなかった想いを、ネイトが受け継ぐシーンはちょっと胸にきましたね。
お互いに、お互いが自身の根幹を支える存在、か。この二人にとって、相手を守ろうという想いこそ、時に崩れそうな自分を支え、時に自分を大きく成長させる支柱となってるわけだ。こういう関係、めちゃくちゃ好きなんですよね。

一方で、メンバーの中で騎士的・戦士的役割を担ってきたエイダの新しい一面も見えてきて……。
今まであんまり女の子扱いしてなかったくせに、いきなり反則級の見せ方してきたなあ(苦笑
そりゃあ、お互いを強く守ろうと意識し合ってるネイトとクルーエルを一番間近で見てきたのは、エイダなんだろうけど。茶化す風でもなく、あんなに真剣に、深刻に、守られる女の子を羨ましく思ってるとは、普段の男勝りで…というより冷静沈着なプロフェッショナルな彼女の在り様を見てたら、全然想像もしてなかった。
考えてみればこの子も年頃の女の子なんだよなあ、とテンプレ的なことを思ってしまうほどの不意打ち。
そんなエイダの女の子的な側面を、余人にまで垣間見せてしまうほどの刺激を与えることになった存在が、このアルヴィルってわけか。
なんかエイダの様子見てると、まだ自分の感情を把握しきれてないクルーエルやネイトと違って、かなり自覚的なような……。

そして完璧に予想外だったのが、灰色詠名。これまで敵役が使ってきた詠名式なだけに、ある種の邪法のように認識にインプットされてきたのですけど、まさかこういう形で再登場してくるとは……。
これって作者の詠名というモノに対しての強いメッセージを感じるなあ。
いやいや、素敵だと思います。