コードギアス 反逆のルルーシュ R2  TURN―2― (角川スニーカー文庫 201-12)

【コードギアス 反逆のルルーシュ R2 TURN―2―】 岩佐まもる/toi8 スニーカー文庫


前巻が、アニメ本編のノベライズなどうっちゃって、ほぼ全編に渡ってエリア11総督として就任するまでのブリタニア本国でのナナリーの奮闘を描いたナナリー主人公の一冊だったのに引き続き、今回もアニメ本編のノベライジングをうっちゃって、総督として就任したのちのナナリーの苦闘と栄光を描く完膚なきまでにナナリー主人公のナナリー本なのである。
まさに、オール・ハイル・ナナリー!

アニメ本編では百万人の日本人を引き連れて海外に雄飛するゼロに合わせて、描かれるのは中華の方ばかりになり、ナナリーが治める日本の方はほとんど描写されることなかったわけですけど、こっちはこっちでナナリー、激烈に頑張ってたんですなあ。
ユフィが遺した特区構想を引き継いだものの、所詮それはユフィの借り物の理想。ゼロによって否定され、変わってしまったスザクの態度に傷つけられ、また突きつけられる現実とのギャップ、自身の無力さと空っぽさに打ちのめされながらも、だがここからナナリーの逆襲がはじまるのである。
ユフィは、スザクとの出会いやゼロ=ルルーシュとの邂逅から自分の理想を見つけ、そこに向かって一直線に突き進んでいくことになったのですが、対してナナリーはユフィのように本国でも影響力のある名家の実家などという後援も、コーネリアのような実力者の援助もなく、あるのは僅かなシュナイゼルの後押しと、皇族としての身分のみ。
無茶をすれば、あっさりと政治的・物理的に排除されかねない危うい立場であり、ユフィのような現実を飛び越えて重大事を現実化させる力がそもそもないわけです。
ジノ、アーニャ、スザクというラウンズ三人が補佐につく、という破格の待遇ではあるものの、文官のあのおばちゃんは端っからナナリーは眼中にないですし、スザクはあの通り。
味方らしい味方もなく、日本人もユフィに裏切られ、その次の総督には過剰に虐げられ、就任したてで人物像の見えない、そもそも子供でしかなく体も不自由なナナリーに対してはまず疑念と不信感を募らせるばかり。
はっきり言って四面楚歌としか言いようのない状況なのですが、ここからのナナリーが、はっきり言って凄かった。
自身が無知であることを認めたうえで、エリア11の現状がいかなる状況なのかをつぶさに、貪欲に吸収し、理想を理想として下に押し付けるのではなく、現実とすり合わせた政策として組み上げていく、その柔軟かつ重厚な政務力。
そして真備島事件に代表されるような、ゼロ顔負けの発想、行動力。

シュナイゼルの腹心カノンがナナリーに垣間見た傑物の片鱗、統治者としての資質が、このエリア11の総督として精力的に働くことで見事に花開いていくさまは、ある種の圧倒感すら受けるものでした。
いや、マジすげえ。
統治者としての能力は、歴代の総督、クロヴィス、コーネリア、カラレス、そしてユフィなどより遥かに高いものを、ここでナナリーは示してくれる。
実際、ここで描かれる懸案は、かなりシビアで理想と現実がいかにかけ離れたものかを否応なく知らしめる冷徹な代物で、特に最低賃金の問題なんか結局、平等とは程遠いところに落ち着いてしまうのだけれど、たとえそれがルルーシュをはじめとする援助・助言の賜物とはいえ、ブリタニア人、名誉ブリタニア人、イレブンという全層に不満を抑え環境・待遇の改善をもたらす結果に持っていったその手腕は、驚嘆に値すると言ってもいい。
現実的に、ゼロが海外で大暴れしている間に、日本の政情は一挙に安定し、わずか数か月で矯正エリアから途上エリア、そして近々衛星エリアに格上げされる、という驚異的な成長を見せることになる。
真備島事件で、日本人のナナリーに対する印象は一変して、その後のエリア法の発布などで支持率も急転し、このまま日本がナナリーの統治下におかれたままだった場合、近い将来ゼロへの支持とナナリーの人気は拮抗したんじゃないだろうか、というくらいの有様で。
この巻で見せたローマイヤすらやり込めるナナリーの姿は、痛快であるとともに興奮させられるもので、いやあ凄かった凄かった。

ルルーシュはルルーシュで、自分の手を離れたナナリーに対していったいどんな思いを抱いていたのかずっと謎だったのですが、なるほど、こういうものだったのか。
いや、ただの偏愛的なシスコンだった時に比べれば、実に立派な兄としての振る舞いではないですか。正直、見なおしました。
まあ、真備島事件の後の、ゼロとして振る舞いつつ実際は明らかにお兄ちゃんとしてお説教モードだったルルーシュの焦りっぷりは、笑いましたけどww

そして、なにより良かったのはナナリーとアーニャの関係。腹に一物抱えてしまい、本音を言わないスザクと違って、直言居士なアーニャとのあの関係は、間違いなく親友のそれですわな。
厳しい現実を前にうつむいてしまうナナリーを叱咤したのはアーニャの辛辣な一言ですし、判断に迷った時にナナリーが意見を求めたのはスザクではなくアーニャ。ラウンズであろうと不敬罪に問われても仕方のないような物言いをナナリーに対してしたのは、アーニャがいかにあんな性格とはいえ信頼している相手でなければ絶対に言わないような面倒事で。
真備島事件の時なんか、同じラウンズのスザクたちと剣を交える危険を冒してもナナリーの味方をし、彼女の無茶を助けるような、ある意味共犯ともとれる行動を取るわけで。
見た限り、そこにはまずマリアンヌの意志は介在してないようですし、確かにアーニャ本人の意思なんですよね。

なんで、この二人の関係、アニメ本編で描写されなかったのかなあ。
返す返すも惜しい。

最新話で、昔も言ってたか、自分とスザクが組めば出来ないことはない、と大言しているルルーシュですけど、ここにこのナナリーが加わっていたら、本当に何もできないことはなかったのかもしれない、と思わされる力強さ、眩しいばかりの資質を見せつけられた巻でした。
……それだけに、この後に訪れるあの展開はヘコむんだよなあ。

ところで、なんで表紙がナナリーじゃないですか?w