彼女は戦争妖精 1 (ファミ通文庫 う 1-6-1)

【彼女は戦争妖精1】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫


冒頭で、主人公が訪ねてきた同級生の女の子に振舞ってるフレンチトーストが、やたら美味しそうなんですけど。
本を貸し借りする関係、というのもどこか上品な匂いがしていいんですけど、本を借りにきた女の子に、さらっとこうした軽食を調理して振る舞える主人公が、何気にスペック高いよなあ。しかも、別室に幼女に猿轡まではめて閉じ込めてる状態なのにw
しかし、ダッツか。ハーゲンダッツなんか、高くてフレンチトーストなんかには使えないよ。それだけに美味そうだ。この本読んでから、朝食や間食にフレンチトーストを作る機会が多くなったのは統計的な事実でござる。

嬉野作品では久々に、冷めたタイプの主人公がきたなあ。わりと何事にも淡々とした反応を示すタイプ。とはいっても、表面に出てくる感情の起伏が少ないだけで、内面はけっこう普通にいろいろ感じ、考えてる。
でも、全体的にみるとやっぱり冷めてる方か。
こういうクール系に対するヒロインが、年頃の女の子じゃなく完全幼児というのは、なんかこう…意地悪だぞ(笑
行方不明の父親が送ってきた十年越しの宅配便の中から出てきたのは、戦争妖精ウォーライクを名乗る十歳前後の外見容姿の女の子クリスタベル。
とはいえ、ウォークライとは何なのか、本人もさっぱり覚えておらず、記憶しているのは名前だけ。要求するのはお腹すいたーの食欲ばかり。精神年齢は外見の十歳にも満たない完全幼児。
とてもじゃないが、女の子だとか異性がどうのというレベルではない。育児レベル(笑

お前、いきなりボンキューボーンの美女とかに成長したりしないのか? などと主人公宮本伊織、年頃の青少年としてはわりと切実な期待を幼女にかけたいところですが、そんな傾向は一切なし。
でも、こいつ、冷めてるわりに冷血漢ではないんですよね。どこの誰とも知れない、それどころか人間ではない存在を、しかも生死のやり取りとなる「鞘の主」の戦いに問答無用で巻き込むクリスを、なんだかんだで見捨てられない情の持ち主。
本人も自分がいささか温度の低い人間である自覚があるのか、自分が厄介者であるクリスを処分してしまうような冷酷な考えを浮かべなかったことに、ホッとするシーンがあるんですよね。あそこで、この主人公のこと好きになりましたわ。主人公たるもの、変に熱血でなくてもいいんです。グチグチ文句言いながらも、人当たりが冷たかろうと、人としての当然の情をどんな状況でも失わず、自分の指を掴んでくる小さな手を振りほどかない意志の力があるのなら。
うん、その意味では口絵で描かれたワンシーンも良かったなあ。

一方で、同級生の読書好きの女の子。ヒロインとしてのスペックは高くて、いや本気でかなり可愛かったんだけど……伊織、相手の好意を知った上であの態度ですか。こいつ、マジで温度低いなあ(苦笑

何気に重要なキャラクターとなりそうなのが、保健の先生。この人、もしかしたら叔父さんとけっこうイイ仲なんだろうか。単に知り合い、友人、先輩の甥っこに対する手助けにしては、身が入りすぎてるようにも見えるんだけど。
単に先生、傍目と違ってホントの世話好きお人好し、という線もありそうだけど。イイ人なのは間違いないか。