ユーベルブラット 8 (ヤングガンガンコミックス)

【ユーベルブラッド 8】 塩野干支郎次 ヤングガンガンコミックス

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うわあ、ここまでやるか!
もし、最後の展開が詐術無しの見た目通りの出来事だった場合、ケインツェルの復讐は、もはや救いようのない泥沼の中に足を突っ込んだことになる。
彼の復讐の正統性は、何一つ揺らいではいない。七英雄が過去に犯した罪はあまりに深く陰惨で、彼らが裏切ったものはケインツェルら仲間だけでなく、彼らを導き送り出し、そして死んでいった数えきれない人々を裏切る、絶対許せない所業だった。ケインツェルの怒りや憎悪は、決して自分への裏切りに対するものだけではない。もし、己に加えられた裏切りだけで彼が動いているなら、ケインツェルが復讐を果たしていく中であれほどの哀しみを抱くことも、人々に対して英雄性を示す事もなかったはず。
彼の怒りは、自分以外の誰かの為の怒りだからこそ、その復讐の原動となる激情に、正気が塗りつぶされておらず、彼は彼のまま剣を揮っているわけだ。
だけど、その剣がグレンを切り裂くことは、これまで彼が斬った二人の英雄と明らかに意味を異にしている。
英雄としての座に胡坐をかき、かつて自分が行った裏切りを罪とも思わず、更なる悪行を重ねる外道に落ちていた二人を討つことは、国家秩序の観点からこそ悪としても、復讐や虐げられていた民の視点からすれば決して曲がった事ではなかった。故に、ケインツェルは辺境の英雄として人々から讃える声があがることになったわけだが。
だが、グレンを斬ることは決定的にこれまでと異なっている。
これまで登場した彼の部下が、人品に優れた、敵であるはずのケインツェルが好感を抱くような人物ばかりだったのが奇妙な違和感として残っていたのだけれど。
まさかとは思っていたが、グレン、本当に改心していたなんて。
彼が、過去の罪を己に刻み、贖罪として国に尽くし、民に尽くしてきたのなら。今なおケインツェルが忠誠を誓う王に、誰よりも忠を尽くしてきたのがグレンなのだとしたら、ケインツェルが過去の罪の断罪として彼を斬る事の意味は何なのか。
あの瞬間、ケインツェルは<現在>の敵になったのかもしれない。それは同時に、本当に彼が国家に対する敵になったということ。
あの瞬間、ケインツェルは本当に【裏切りの槍のアシュリート】として生きざるを得なくなったのかもしれない。
ある意味、とんでもないところで切られた8巻。あのシーンが意味する所は何なのか、これからどうなるのか。予想もつかない衝撃の展開で、次巻が待ち遠しいばかりです。