放課後の魔術師  (1)オーバーライト・ラヴ (角川スニーカー文庫 208-1)

【放課後の魔術師 1.オーバーライト・ラヴ】 土屋つかさ/ふゆの春秋 角川スニーカー文庫

Amazon



ビビッときた、ビビっときましたよ。これは面白かった。さらに言うなら、この作者は書けば書くほど面白くなると感じましたね。作品としての完成度の高さも去ることながら、まだまだ広さと奥行きを感じさせるモノカキとしての基礎部分の大きさ、ポンテンシャルを秘めてる感じ。
スニーカー大賞の奨励賞か。これは投稿作品を手直ししたのかな。文章の雰囲気も、良きスニーカーの系譜のイメージ。これは後々、スニーカーの中核を担う存在になってくれればいいのだけれど。

特に好きなのはやはりヒロインか。知性的で冷静沈着、論理的に物事を進めるタイプの主人公を引っかき回す存在なのだけれど、人格的にはむしろまともで優等生。律儀で一本芯の通ったきっちりものであり、自分が動転してたり感情が乱れているのを、客観的に認識できるタイプ。
破綻した人格で主人公を振り回すタイプではなく、その躍動感漲る行動力で、主人公の思惑を突きぬけて、引っ張るスタイルか。その行動も決して強引だったり強制的なものではなく、ある種の正統性に基づいてのものであり、また虚を突くようなユーモアというべきかなんというべきか、いい意味で意に添わずとも思わず苦笑を浮かべて許してしまうような洒落た行動で主人公を促すので、引っかき回すといっても決して不快でないどころか、気持ちがいい。
どこか論理(ロジック)と前提条件にとらわれがちな主人公を、ドンと押す形になり、快である。

主人公は主人公で理に基づいて動く人ではあるけれど、決して頭が固かったり融通のきかない人ではない。むしろ、柔軟で多少思惑を外れても受け入れる余裕のある人でもある。年齢は17歳だけど、ヒロインたちが感じているように精神的には大変大人な人物。姉がえらく公的にも私的にも迷惑な人なので、その辺からの達観か。
ただ微妙な女心には完全に疎いタイプ。普通、まったくの他人とはいえ年頃の女の子の前で平然とああいう事をしてしまうというのは、いささか問題であろうw
恋愛ごとや女心など眼中にない、と言ってもいいのかも。敵として登場するイドとの因縁からして、どうやら過去に何らかの人間関係での破綻、もしくは悲劇があったようだし、女性に対しては一途な人物なのかもしれない。ヒロインが主人公に徐々に抱きだす恋愛感情のふつふつと生まれていく過程は、なかなか繊細かつ大胆で物凄い好みなんだけど、けっこう前途多難なのかも。

妹の存在は、あれは今後は鬼札となっていくのか。人前に出られない、というのは気軽に前線に出られないファクターとして有効に機能する設定だし、もしかしたら能力的には飛びぬけて優秀なのかも。
ここぞという時に、出番がありそうで、なかなか楽しみ。かなりのシスコンだしw

ともあれ、非常に面白かった。さらなる飛躍も期待できそうで、今後が楽しみな新人さんの登場でした。