ガンパレード・マーチ九州奪還 4 (4) (電撃文庫 J 17-22)

【ガンパレード・マーチ九州奪還 4】 榊涼介/きむらじゅんこ 電撃ゲーム文庫

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いや、まさか。
これは、今までの対幻獣戦争の前提条件が根本からひっくり返されるパラダイムシフトじゃないですか!
幻獣と人類、どちらかが滅ぼされるまで戦うしかない殲滅戦争。そこに交渉の余地はなく、そもそも交渉が可能な知性を有する相手なのかすら分からなかった敵との戦争だったのに。
鈴原先生たち和平派幻獣共生派の存在などで徐々に下地を作ってきたとはいえ、カーミラの正体と彼女の提案はまさにこの作品そのもののパラダイムシフトと言ってもいいんじゃないでしょうか。というか、幻獣の正体ってそうだったの?

無理に無理を重ねて精神的疲労もピークに達していた5121小隊も、壬生屋が狂乱するという最大の危機を乗り越えたところで、なんとか山場を越えた、と言ったところでしょうか。九州の戦局もなんとか最悪の所を脱し、新たに司令官として就任した荒波少将と岩田参謀の遅滞作戦により、一応の安定を見たことで、舞にも原の助言を聞く余裕が出てきたみたいだし。
まあでも、これまでも舞が部下を気遣ってなかったって事じゃないんだけど。指揮官として就任してからの舞の精神的成長は実際著しく、周囲に対する気遣いもあの唯我独尊の頃と比べれば雲泥の差。読んでても、常に壬生屋や滝川たちのことを気遣いつつ指揮していたように見える。けど、それでもまた人型戦車の危険性に対する認識が薄かった、と言うことなのか。
でも、同じミスは二度繰り返すことなく、芝村として指揮官として成長の歩みを止めない舞の姿は頼もしい限り。
ただ、まだ彼女の視野は戦場、前線に限られていて、後方・政治についてはさっぱりなんだなあ。あの具申書は拙いよ。素人目に見ても、あんな内容の具申を何の政治的下拵えもせず、ぽんと中央に放って寄越すなんて。善行が青くなるのも無理ない。マヂで5121小隊含む関係者、全部粛清対象、なんて展開も考えられたわけで。へたすりゃ戦時下で恐怖の大粛清、芝村と会津閥の権力抗争が物理衝突に発展する余地もなくはなかったわけで。どれだけ危ない橋を渡ったものか。それを無自覚でやるんだからなあ。あれが、首相に直接渡ったのは運が良かったとしか言いようがない。
おかげで、戦争の落とし所も見えてきたわけだけど。
ただ、その落とし所も結局のところは一時的な休戦に過ぎないともいえるわけで。カーミラの理想を聞く限り、一時的に共闘は出来ても、急進派の討伐が終われば、じきに対立に入りそうなものだけど。
ただ、交渉できる相手との戦争と言うのはまだ救いがあるからなあ。野間・鈴原ラインの幻獣共生派の和平派はさらに共存という意味では認識が人類よりだから、交渉の窓口としては最適な存在として活用できそうだし。
現実的に、人類側に日本を出て厳重に支配された外国地域を奪還できる戦力、国力があるかというと、かなり怪しいどころか戦争遂行能力すら既に限界に達している風なところ見るに、戦局は限定的なものにできそうだけど。
……あれ。となるとオーケストラの方はどういう状況なんだ?