迷い猫オーバーラン!―拾ってなんていってないんだからね!! (集英社スーパーダッシュ文庫 ま 1-1)

【迷い猫オーバーラン! 拾ってなんていってないんだからね!!】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

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うわっ、これは思いのほか強烈にハートを撃ち抜かれた、素敵なお話だった。
表紙絵のダンボールに描かれた文句。
拾ってなんていってないんだからね!!

これって、最後まで読んだあとだと単純なツンデレ文句のそれじゃなく、この作品の趣を端的かつ叙情的に表現した味のある文句に見えてくる不思議。
寂しさや孤独に打ち震えながらも、その臆病さから居場所を作れない迷い猫たちの真情だと考えるなら、あれって単なる文乃のセリフというんじゃなく、拾われ猫の希、主人公の巧、そしてヒロインの文乃全員に通じる文句になってくるんですよね。
そう考えると、これってラブコメっていうより家族モノなのかも。
いろんな人から受け入れられ、友達になり、家族になり、自分の居場所を見つける物語。

ヒロインの文乃がまた、可愛いんだ。
素直じゃないのか、不器用なのか、とにかく本当の気持ちとは裏腹の天の邪鬼なことしか言えない女の子。おかげで美人な容姿なのに、周りの人間からは攻撃的でちっと厄介な人間と思われてるんだけど、ただ、その辺を幼馴染の巧は全部ちゃんと理解してあげてるんですよね。どれが嘘で、どれが本当か。彼女が本当はどうして欲しいのかを、しっかり察してあげるわけです。
そんな通じ合ってるところは、幼馴染という関係の醍醐味だよなあ、と。
単純なツンデレじゃないんですよね。彼女がそういう性格になるには、巧の存在が深く作用していて、ある意味彼とのコミュニケーションを至上として生きてきたがために特化した人格形成と言えるのかも。
ツンツンすることがそのまま巧への甘えとなってるようにも見えるんですよね。
だからこそ、あの告白場面。
「……違う。大嫌い。巧のこと、大嫌い! 大好き!」

思わず口を突いて出た彼への本音が、彼女が作り上げてきたモノとぶつかって、あんな支離滅裂な叫びになったんじゃないでしょうか。
あのシーン、めちゃくちゃ好きなんだわ。
幼馴染って、お互い傍にいるのが自然と思える関係と言うけれど、兄弟のそれとは違って、あくまで他人なんですよね。それぞれがお互いに傍にいようと思い、コミュニケーションをとる努力をし続けなければ、案外簡単に疎遠になってしまうもののはず。
その意味では、巧と文乃の幼馴染の関係というのは、それぞれお互いを求めあい、理解しようとする努力によって維持された、ただ流されて続く腐れ縁とは一味違う、しっかりとした絆なんですよね。
だからこそ、あのシーンが映えるわけで。

家康や幸太郎との屈託ない友達関係。姉、乙女との大変な、でもあったかな家族関係。そして、お互いを大切にする文乃との幼馴染関係。
そこに新たに拾われてきた迷い猫の希。
ポッと心があったかくなる、素敵なお話でした。