迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)

【迷宮街クロニクル 1.生還まで何マイル?】 林亮介/津雪 GA文庫

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和風Wizard純情派のタイトルでウェブ上にて連載されていた現代版ウィザードリィ小説の書籍化された作品です。
自分、これ連載時にも読んでて、同人誌としてだったかな。通販で出された時も買ったんですよね。モノは、部屋の魔窟のどこかに埋もれてますけど。記憶している限りではわりと表層の方じゃなかったかな。捜したら多分見つかるだろうけど。

うん、でこうして久々に読み返したわけなんですけど、やっぱり面白いなあ。とびっきりに面白い。界隈でも徐々に評判になってきているようですけど、それに値する読み応えのある作品であることは間違いないです。
さすがに加筆修正箇所まではわかんないなあ。ところどころ、こんなシーンとか会話あったっけ、と感じる所はあったわけですけど。
そもそも一日に三千万近い売上があがる、というのがとんでもないよなあ。探索者が持ち帰った迷宮内の怪物の死体から抽出される化学物質などが非常に高価だったり地上では生成できないまったく未知のものだったりして、それらが商社に買い上げられて利益になってる、というんだけど。単純計算で年間百憶ですよ? 全体的にどうなってるんだ?
と、そんな迷宮街探索事業団や契約を結んでいる商社などの話も入ってくるのですが、個人的にこの商社の新支店長として赴任してくる後藤さんの婚約者の人が好きなんですよね。この一巻ではその性癖というか好みについてはさほど露呈していないんですが、この二人の話、面白いんですよ〜(笑

読んでて特徴的なのが、やはり探索者たちの死生観。生き死にの軽さ重さでいうのなら、戦地なども同じなのだろうけど。やっぱり自分から望んで死亡率14パーセントの場所に飛び込んでくる人達と言うのはどこかしら独特のものがあって、そういう人たちが日本の中で日常の中で生きている人たちとそれほど距離のない場所に混ざるように存在している、という妙な感覚。相互の違和感が、独特なんですよね。
同じ生き死にを生業としている兵士とも、また違うわけです。傭兵ともちと違うんじゃないだろうか。まさしくファンタジーでいうところの冒険者、というべきか。ただ、何でも屋的側面を持って色々な依頼をこなしていく冒険者と違って、この探索者は迷宮に巣食う怪物たちを殺すことに特化しているので、やはり別の存在か。
んで、どこか読んでて冷や水を浴びせられるような感覚を味わう。漫画やライトノベル、実写の映画でもいいや。とにかく戦闘モノに慣れ親しんでいるほど、この作品で描かれるあっけない死は、ぞっとさせられるものなんじゃないだろうか。人って、どれだけ鍛えても強くなっても、死ぬときはこんなにあっけないものなのか。こんなに人は簡単に死んでしまうのか。作中で主人公の真壁が最初の方で言ってることだけど、現実には人間、どれだけレベルがあがったってHPはあがんないわけですよ。転んだって、ウチどころが悪ければそれだけで死ぬ。
そして、この作品の戦いの舞台は、いつどこから敵が襲ってくるかもわからない洞窟迷宮の中。コンディションだって一定じゃないし、人間生きてたらメンタル的な変動だって色々あるでしょう。運不運も見逃せない要素。様々な因子が、どれほど鍛えた人でも容易に死の罠に足を踏み入れさせてしまう。
記憶が確かなら、この作品、ウェブ連載時には、迷宮に潜るたびにあらゆるキャラクターに対して、Javaで生死判定を下していたんですよね。2パーセントだったかな、よく覚えてないんだけど。
もちろん、主人公の真壁やヒロイン格の碧ですら死んでしまう可能性があるわけで。群像劇として卓抜とした人間模様を描くこの作品、長く続けば続くほど魅力的なキャラに出会い、はまるわけですけど、そうした人たちが唐突に帰ってこないかもしれない展開が待っているかもしれない。
あの連載を追っている時のドキドキ感は、ちょっと忘れられないなあ。

なんにせよ、これからさらに人間関係が複雑に絡み合い、迷宮探索という地獄に身を置くが故の因業、心の変転、人情の機微が鮮やかに描かれていき、さらに面白くなっていくので、続きはぜひぜひ出していただきたいところ。これからが本番なんだから。
しかし、真壁くん。鈴美に顔はあんまり、と言われてたけど、イラスト見るとほんとに朴訥とした顔だなあ(苦笑
笠置町姉妹のビジュアルは、素晴らしいの一言です。雪姐も、あの最初の挿絵の手前の人がそうなら、イメージ通りか。
ちょっと違ったのは後藤さんか。私はもっと痩身の剃刀みたいなヤクザの幹部のイメージを持ってたので、ああそっちなのか、と。

一連の戦闘シーンを見ていて深く思ったこと。ヘルメットは必須装備だ。