アニスと不機嫌な魔法使い2 (HJ文庫)

【アニスと不機嫌な魔法使い 2】 花房牧生/植田亮 HJ文庫

Amazon


………あれ? あれれ? これ、こんなに面白かったっけ!?
前作は、正直言ってあんまり印象に残っていなかったんですけど、うはは、いやこれはこれは、抜群に面白くなってますよ。
というわけで、アニスと不機嫌な魔法使い第二巻。
不老不死の呪いをかけられた見た目は年端もいかない少年の気難しい大魔導師シド
のもとに、娘として引き受けられたアニス。召喚士としての修行を受けながらも、魔法でも家事でも失敗ばかりでシドには怒られっぱなし。それでもアニスはめげることなく、友人のビアンカに愚痴をこぼしながらも、妄想を垂れ流し、あらゆる意味で暴走し、やっぱりシドの激怒を呼びつつ毎日を健やかに過ごしていたのでした。
ちょっとはめげろ(笑
シドの怒り方や言い方ももうちょっと年頃の女の子の気持ちを考えろ、というようなものであることも確かなのですが、アニスが全然聞いてないというか堪えてないからなあ。そりゃまあ、内心はシドを怒らせてばっかりだったり、やることなすこと上手くいかないことに悩んでいるのは間違いないのですが、だからといって落ち込んだりへこんだりせず、懲りずにポジティブシンキング。ゴーイングマイウェイで邁進し続けるのはいいのか悪いのか(苦笑
でも、他の人が言う通り、この二人はお似合いなんだろうなあ。気難しく女の子の扱い方に難ありのシドとアニスが平気で一緒にいられるのは、やっぱりあの性格のお陰なんだろうし。
シドはシドで、アニスとの生活を代理公に問われて答えた言葉が、彼らしくシンプルでそっけないながらも、だからこそ温かい気持ちが通ったもので、それを立ち聞きしてしまったアニスの実に嬉しそうな様子に、思わずニヤニヤ。
これは、代理公GJである。
しかし、この人も他人については気が回るのに、自分の家族については、特に娘についてはなーんも分かってないのよね。父親の娘に対する認識、というのはどうしてもこーなってしまうのか。なんか、典型的な年頃の娘と父親のすれ違い、って感じで逆に微笑ましく感じてしまいます。
微笑ましく感じるのも、マリエルがアニスと仲良くなって素の姦しい表情を見せてくれたからこそ、なんでしょうけど。
マリエルの妹のロッテがしかけてくる意地悪の、鮮やかすぎるスルー振りといい、周りに壁を作っていたマリエルと仲良くなってしまうことといい、彼女の天然妄想少女振りは無敵じゃまいか(笑
今回登場の蛇型竜種のクールデール卿のすっ惚けたお喋りと言い、暴走しまくりのアニスの妄想といい、それに振り回されて何だかんだと被害を被っているビアンカといい、会話文がやたらめったら面白かった。
ビアンカ、と言えばこの人は本気でいい人だわなあ。本来ならシドと同じ魔導師の中でも頂点に位置する四元素の魔導師ジュリ・メイガスのはずなのに、同じ年頃の女の子同士のようにアニスと接し、シドの文句や愚痴を言い合い、アニスの暴走に振り回され、普通に親友してるし。結構、アニスの友達というのは大変な役割だと思うんだけど、実際けっこう被害食らってるし。でも、一緒にいるのは楽しそうだからいいのかな。ジュリ・メイガスとしてではなく、ビアンカというただの女の子として、アニスの友人として振る舞うのを満喫しているようにも見えるし。
とはいえ、ジュリ・メイガスという自分を封印しているというわけでもなく、大魔導師としての力や知識が必要となれば、惜しむことなくアニスに力を貸してくれるし。なんだかんだと、一番いい人に見えますよ、ビアンカ。

さて、アニスがアニスらしく成長しているその影で、シドはアニスの宿命に関わってくることになる俗世に広がりつつある陰謀の影と対することに。今回、代理公のもとを訪れたのもそれが理由ですしね。案外あっさりとシドの正体、というか素性を明らかにしたもので。アニスやビアンカにもあっさり教えたのを見ると、別に隠しているわけでもなかったようだけど。彼の素性や父親との因縁は、前の巻では明らかにされなかったはずだけど、これは早々に開示して良かったかも。かなり物語の全体像がすっきり開けて見えてきた。
クールデールの出現によって俄かに浮き彫りになってきたアニスの宿命や、召喚師狩りをおこなう謎の組織とシドの過去。そして、垣間見えてきたアニスを狙う黒幕の姿。と、妄想少女アニスを中心とした日常の和やかなドタバタ劇と並行して、物語の根幹を担うであろう裏の話も徐々に鎌首をもたげはじめ、これは面白くなってきた。
一巻読んだ時は、これほど面白く感じる作品になるとは思わなかったんですよね。これは化けはじめてるのかも。
次が楽しみ。