いぬかみっ!EXわんわん!! (電撃文庫)

【いぬかみっ! EXわんわん!!】 有沢まみず/松沢まり 電撃文庫

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【いぬかみっ!】、最後の最後の後日譚。これで最後。ほんとのラスト。
ああーーー、面白かった。やっぱり、このシリーズ、この作品、ここに出てくる全部の登場人物キャラクター、みんな大好きだ!
両手を天に広げて空を見上げて大きく絶叫「みんな大好きだ!!」

いやいや、しかし最後に色々と驚きのネタが満載で、吃驚したり仰天したり楽しかったり、切なかったり。色々と据え置かれていた伏線にも決着がついたようだし、ああこれで本当に終わりなんだなあ、と。
啓太とようこの話はこれで終わりなんだなあ、と思うとなんだかしんみりしつつ、でもどこか明るく気持ちよく。心地の良い終わり方でした。
とはいえ、この【いぬかみっ!!】の世界観はそのまま現在進行中の【ラッキーチャンス!】でも引き継がれているわけで、いずれこの中の誰かがあちらに出張出演、なんで機会もおそらく虎視眈々と狙われているでしょうから、寂しがる必要はないのかもしれません。
この作中でも、あちらの主人公の話らしい話題が一瞬、仮名さんの口から出てますしね。

冒頭の一作は、かなりキツいホラー描写の入った古の約定が若い母子に襲いかかる現代怪奇譚。お気楽ドタバタコメディを中心に書いている有沢まみず氏ですけど、この人本気出すとかなりマヂ怖いホラー書けるからなあ。だからこそ、この作品が何だかんだと場面場面で引き締まって、単なる変態が闊歩するコメディではない代物になっているんだと思いますけど。
その、典型的ホラーを吹き飛ばす啓太とようこのつうかいにして爽快感。暗く奈落のように深い圧倒的な絶望感を、そう啓太とようこはこうしてぶっ飛ばしてきたわけだ。このいぬかみっ!!の濶たる部分を凝縮したような話でした。なんでこのエピソードをこの最後の後日譚に入れなくてはいけなかったのか、うっすらと理解できたようなできなかったような。


そしてラストエピソードは、宗家の引退に伴い、啓太と薫、どちらかが河平宗家を継ぐことになるというお話。
いやー、啓太自身は自覚なかったんだけど、確かに死神事件以降、邪星、三神と尋常でない試練を潜り抜け、大小様々な事件でその大きな器振りを示してきた啓太は、いつの間にかみんなに認められてたんだなあ。
その象徴というべきなのが、薫の犬神たち。みんな当初の毛嫌いが嘘のように、今の懐きよう。でも、実際啓太はそれだけの事をやってきて、皆に慕われるだけの態度を見せてきたんだから、それが皆に認められているというのは、付き合ってきた読者としても何となくうれしくなる。

それでもヤッちゃうのが、啓太なんだけどね(大爆笑

後継者指名の大事な席で、とんでもないことをしでかしてしまう啓太殿w
こいつの可哀想なところは、決して啓太本人が望んでやらかしるわけでなく、彼本人に責任があるわけでないところか。
変態、もしくは変態的出来事が向こうから押し寄せてくる体質、と(笑
後継者問題棚上げの理由も、啓太の人格や能力は今更疑わないが、あの変態体質は川平家の代表としてどうなのよ? と、至極首を上下に動かしてしかるべき代物で。そりゃ、霊能界でも有数の名家である川平家の当主様が、毎度ことあるごとに変態的出来事を巻き起こしてたら、……単純に嫌だよなあ(爆笑

というわけで、なんだかんだとお祭り好きな川平家の血が騒ぎ、宗主の後継者は啓太と薫が直接対決して決めることに。
仮名さんが薫に味方する理由があまりに切実で爆笑したよ。確かに、仮名さん、啓太に巻き込まれさえしなければこの作品でも稀に見る常識人だもんなあ。でも、過去を顧みると一番変態的なことをになってるのも仮名さんなわけで。いやいや、ほんと凄まじいまでに変態だもんなあ(大爆笑

と、その影で薫の犬神たちの色々な思いも垣間見えてきます。
特に印象的だったのが、人間と犬神との種族を越えた、でも寿命という運命に隔てられた哀しい関係。明るい雰囲気の裏側で、この問題は常に逃れられない重たさを以って話の裏側で流れていたからなあ。
その傷を一番深く負っているのがあのフラノ。ごきょうや曰く、愛した人との別れに心を凍らせてしまっているという。そして、その痛みを知らず恋を知ったのがたゆね。今回の、啓太への想いを素直に告白するたゆねは、本当に可愛らしくなった。潔癖なボーイッシュな突進少女が、恋する女の子として花開いていくその集大成みたいな話で。
……そうか、君、愛人体質だったのかー!(どかーーん
まあ、この子の性格じゃ、ようこを押しのけることなんか土台無理な話か。でも、ちゃっかり傍に侍っている雰囲気の子でもある。そんで、初めての恋で、大きな傷を負うんだろうなあ。この子は、人間との恋がどんな結末になるかを本当の意味で知らないから。
そして、現在進行形で傷を負い続けているのがごきょうや。こっそりと私が一番好きだった犬神。もとは啓太の父親の宗太郎の犬神だった娘であり、彼に恋したが故に遠ざけられた犬神。
今回描かれるのは、彼女が胸にひっそりと抱き続けた切ない恋の終わりの話。なでしこの話を聞き、遂に自分の想いに決着をつけるごきょうやの想いが、なんとも切なく哀しく、でも美しかった。
やっぱり、自分は一番この人が好きだったわ。
そして、ごきょうやとの酒席で明らかになった、なでしことようこが天地開闢医局に通っていた理由。
これは本当に驚いた。とてもとても驚いた。
そうか、二人はそういう選択をしたのね。
でも、それは残される連中からしたら、やっぱり哀しいことなんだろうねえ。みんな、許してくれるだろうし、祝福するんだろうけど。寂しい、と思わずにはいられない。

もう一つびっくりしたのが、せんだんの恋。
ああ、まさかまさか、そう来たか(笑
うんうん、これはまったく頭になかったけど、言われてみるとすっごいお似合い。とびっきりにお似合いだ。あの人にとっても、ようこが上のような選択をした以上、彼女が傍にいてくれるということはとてもいいことだと思うし。
祝い事である。

新藤ケイは、やっぱりやっぱり最大のようこのライバルであり続けると思うんだ。ヘンタイたちが味方にいるからじゃないけど(あれはケイが可哀想だぞ(笑
たゆねはあの愛人体質からして、上手いこと傍に侍りそうだけど、ケイはどうなんのかなあ。普通はようこと啓太の間には入る隙間なさそうなんだけど、この娘だけはたとえ隙間が溶接されててもえいやと腕力で観音開きに開いて足突っ込んでマテやこら、と割って入りそうなパワフルさがあるんですよね。啓太に対する引け目もないし。
ようこと啓太は間違いないベストカップルだとは私も思うけど、それでも頑張って欲しいね、彼女には。

そして、決戦。楽しい楽しい、お祭りごと。
ああ、楽しい、楽しい最後の大騒ぎ。薫と啓太、やっぱりこの二人はとびっきりの大親友だわ。犬神たちが嫉妬するくらい、がっちりと気持ちがかみ合ってる。この二人が内外から支える川平家は、今までで一番の繁栄を迎えるに違いない。

楽しかった。とっても楽しかった。最高のお祭り騒ぎを堪能させていただいたとても楽しく素敵な作品でした。

ごちそうさまでした♪