放課後の魔術師  (2)シャットダウン・クライシス (角川スニーカー文庫)

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手に取った時は、えらい本の厚さが薄っぺらく感じで、おいおいと思ったんだけど、読み終えたときには薄いという印象はさっぱりなくって、けっこう驚いた。思っていた以上に、中身に没頭していたみたい。第一巻でもかなり絶賛したつもりだけど、これは思いのほかこの作品に嵌まりつつあるということだろうか。
同い年なのに、教師生徒の関係、というのは今までにない絶妙な距離感が合って、好きだなあ、これ。プライベートでも魔術の教師と生徒なわけだし、精神的にも安芸は大人だから、アグレッシブな遥もきちんと目上の人に対する丁寧な接し方をしてるんだけど、相手が同い年だからという点は気安さや積極的な押しの強さを自身に容認することにもつながってるので、これが絶妙なんですよね。
奔放に見えてこれで遥って結構きっちりとした性格だから、安芸が本当に年上の教師だったら、もっとちゃんと生徒と教師という線引きをしてるように思えるんですよね。妹と二人で生きてきたことから、大人に対して変に甘えない自律した面もあることだし。立場としては目上で、でも年齢は同じ、という他なら多少接し方に違和感や歪みが生じるような関係なんだろうけど、この二人には逆にしっくりと行くものだったのかもしれない。

それにしても、相変わらず安芸の授業は凄いなあ。テストなんかしなくても先生は生徒の実力はわかってる、というのはそんな優秀な教師はそんなにいないよ、とも思うんだけど、彼の授業法にしてもテストのやり方にしても、変に突飛ではなくなまじ本当に効果的そうで面白そうで、その、困る。
英語の授業なんか特に苦手だった自分なんかからすると、あのテストは心理的に厳しいんだよなあ。変に誤魔化すこともできないだろうし、クラスメイトの前で喋ることになるんだから、実際やらされるとなると参るだろうなあ。対策も立てようがないし、自分の実力で頑張るしかない。
大変だし、多分受験なんかに即効性のある効果があるかはわからんけど、英語をしゃべれるようになる、という意味ではこの人の授業は本当に効果ありそう。

今回は、本格的にシリーズ化、ということで大量に伏線をばらまくことに終始していたのかも、と読後に振り返って思い至る。
でも、予想以上にてきぱきと伏せていた秘密を開示してこられたのには、少々驚いたかも。特に、ジェシカのモデルになった伊予なんかは引っ張ろうと思ったら、安芸の過去の影としてもっと引っ張れただろうに。それを、こうも明快に登場させるというところに、作者のこの作品に込めた方向性を明確に感じさせられて、なかなか好印象。なるほど、安芸と遥の関係こそが、この作品の最大の見せ場であり重要な根幹であるということですね。それも、陰湿に重たくするでなく、快濶にぐいぐいとパワフルにまい進する類いの。
それでいて、<鴉>だけではなく論理魔術師一党の中でも勢力争いはあるという展開を提示することで、単純な敵味方の対立構図ではない、様々な意図が絡まりあった暗闘の要素も垣間見えてきて、先の顛末が実に楽しみ。
これは、これからどんどんおもしろさの上昇カーブを描いていきそう。最初に感じた期待感は、どうやら間違っていなかった様子。
2009の注目作品。