迷い猫オーバーラン! 2 (2) (集英社スーパーダッシュ文庫 ま 1-2)

【迷い猫オーバーラン! 2.拾わせてあげてもいいわよ?】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

Amazon


うん、これは良かったなあ。このシリーズ――既に三巻の発売も決定しているようなのでシリーズでいいですよね――、<迷い猫>という一つのテーマを、一貫してブレなく追及しているあたりに、非常に好感が持てる。
特に方向性もなく登場キャラクターがギャーギャー騒ぐだけの仕様だと、どうしても読んでる方もダラダラと眺めてしまいますしね。よっぽどキャラクターが魅力的じゃないと、なにか毎度同じことをしているなあ、という飽きも来てしまいますし。その点、この迷い猫オーバーラン! は、一巻も続編であるこの二巻も、<迷い猫>と<帰る家>という主題からブレることなく、キャラクターの行動原理からストーリー構成の帰着まで一本筋が通って非常にスッキリしているので、読んでいるこっちも前のめりに作品に集中できる。
と、言ってもわりと後半になるまでこれらの主題というのは、意外なほど意識されなかったのだけれど。
千世が皆を呼び集めるばかりで、自分の方から輪に入っていかない、という構造は、ほんと、なんでか気づかされなかったんですよね。みてりゃ明白な構図だったのに。
千世の傍若無人で我儘な性格が前回から強調されていたせいで、彼女が巧
たちを呼び集めてなんか仕出かす、というスタイルに何の違和感も覚えなかったのと、集まったら集まったでみんなワイワイガヤガヤ屈託なく壁らしいものは感じられなかったし、千世は千世で無茶苦茶言いながらも巧たちのケーキ屋<ストレイキャット>の現況はちゃんと理解してくれていて、譲る所は譲ってくれていたからなんでしょうけど。
違和感に気づいたのは、千世が唆されて暴走を始めてから。あれ? なんで彼女、ストレイキャットに顔出さないんだろう。みんなが呼んでもこれないなら、自分から行けば、それだけなのに。
そう、それだけの些細なことだったから、気づけなかったとも言える。その些細な行動が取れないところに、千世がある意味、以前の希と同じ<迷い猫>と呼ぶにたる在り様に囚われていた、と言う事に。
彼女の寂しさや臆病さ。温かさを求めながら、実際それを目の前にするとついつい逃げ出してしまうその姿は、やはり<迷い猫>というに相応しく。
いや、感心させられるんですけどね。この<迷い猫>という名付け方は、ほんとに。上手いこと言うなあ、と。

前回の迷い猫だった希は、見事にストレイキャットの家族として馴染んでいて、いいキャラになってますわ。以前あった人との間に張り巡らされてた壁が取り除かれて、無表情型ほんわか天然少女として時にみんなの雰囲気を和ませ、ときにお惚けかまして。ほんと、この家族たちの欠かせない一員になってます。

そんで、メインヒロインたる文乃。一応、あれ本気で告白のつもりだったんだ(苦笑
自分は告白したんだから、次は巧のターンだ、と意地になって普段どおりに振舞ってるあたり、この娘は本気で不器用だなあ、と微笑ましくなる。確かに、そのロジックは正当性があると思うし、文乃があれだけ言ったんだから、巧は幼馴染としてちゃんと彼女の意を汲むべきだとは思うけど、もうちょっと思わせぶりな態度を取って巧の意識を揺さぶるくらいの芸当はしてみせるべきなんじゃないかなあ。その辺を頑なに、徹底してやらないのが、この娘の可愛げでもあるんだろうけど(苦笑
でも、彼女は彼女なりに頑張ってるわけで、はっきりと自分の巧への好意を自覚し、それを認め、逃げる事も曖昧にぼかすこともせず、彼女なりにだけどしっかり意志表明して立ち向かってるあたりは、とても好ましいんですよね。結果的に二人の関係はあいまいになっちゃってるけど、それは彼女が極度に恋愛下手である結果的にであって彼女のちゃんと行動してるんですから。
多分、最後の迷い猫は文乃になるんでしょうし、その辺は期待しながらじっくり待ちます。不安はなく、ただただ楽しみ。