プリンセス・ビター・マイ・スウィート (MF文庫J)

【プリンセス・ビター・マイ・スウィート】 森田季節/文倉十 MF文庫J

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やっぱり好きだわぁ、この人。デビュー作【ベネゼエラ・ビター・マイ・スウィート】でビリビリ感じた熱いソリッドなソウルは本物だった。

ベネゼエラでもそうだったんだけど、この物語、決して大団円のハッピーエンドには終わらない。タイトルあるビターの名の通りに、苦味あふれる結末に終わる。
だけれど、それは決して悲劇ではないのだ。それは、この物語に出てくる人々が戦って勝ち取った確かな成果でもあるのだ。
その多くを失いながら、清々しいまでの笑顔を見せるチャチャの力強さに、ただただ魅了されていく。

飄々として暖簾に腕押し。性格も捻くれていて、一言多く、常に急所をえぐる言葉を投げかけてくる小悪魔みたいな女の子、チャチャ。友達らしい友達もおらず、魔性の女の異名にふさわしい、心底が見えず捉えどころのない孤独な女の子の正体は、とっても熱くストレートに自分の想いにビートを刻む、恋するとびっきりにカッコイイ女の子でした。
ひねくれ者のくせにまっすぐで、ひたすらにまっすぐで、意地悪で性格も歪んでいるくせに一途で昔からの想いをとても大事に守ってて、そして最後まで諦めることをやめようとしないタフネスガール。
こりゃ惚れるさ。小悪魔っぷりに惚れ、小悪魔のくせに純情なところに惚れ、その絶望に屈さない【スクーティン・オン・ハードロック――ハードロック通りを駆け抜ける】その全力疾走な強さに惚れる。

彼女が失ったものは、読者である自分から見ればとてつもなく大きいものだ。今の彼女を形作った原点ともいうべきものであり、今まで彼女が生きるために必要としてきた支えそのものであり、これからの彼女が得るはずだった幸せの要となるようなものだったはず。
でも、彼女は笑顔を無くさなかった。たとえ、それが相手の中から失われても、世界中のどこにも存在しなくなってしまったとしても、それを自分の中に残せたから。
そして、残ったものを、そのままではないにしろ、相手につなげられる可能性が残ったから。
だから彼女は、笑顔を失わず、もう一度零から始めるのだ。

ビター・マイ・スウィート。苦々しくも愛おしい人との語らいを。
それが、かの恋するプリンセスの所望である。