ルナ・シューター〈2〉 (幻狼ファンタジアノベルス)

【ルナ・シューター 2】 林譲治/西野幸治 幻狼ファンタジアノベルス

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どちらかというと、月面と言う特殊環境での戦闘の説明に終始していた感のある第一巻よりも、大きく話が動いてきた感じ。
しかし、これ読んでたら……女の人って怖いなあ(苦笑
本来なら、人類とはまったく別種の異星人の侵攻端末であるらしいラミアの行動原理をどう読みとっていくか、というところにSFとしては焦点を当てていきたいところなんだろうけれど、むしろ此処で描かれていくのは閉鎖空間、もしくは戦場における人間関係の軋轢なわけで。まったくの異文明の産物であるラミアを理解する前に、まずもって人間同士で理解し合うこと自体に、人類は未だ成功していないんじゃないだろうか。そんな自分たちの事すらままならない人類が、果たして何を以って異星人の機械端末の行動原理を理解するというのか。
ジュディの今回の行動も、もしかしたら彼女の主体的な視点からすれば何の矛盾もない行動だったのかもしれないですね。ジュディの素顔にしても、サキの過去の体験であった民兵のグロテスクな二面性にしても、破綻しているとはいえ人間の本性にも思えるわけで、怖いっちゃ怖いんだよなあ。でも、怖いからと言ってそれらを排除できるのは、それこそ余裕のある環境でのみ行える悠長なお遊戯(というのは複雑だが)なんだろうかねえ。マリアの判断は実に即物的だとは思うけど、収支計算で考えたら排除するよりも取り込む方がリスクが少ないと考えたか。でも、姐さんなんだかんだと怖い人だから、アレみたいな何しでかすか分からない輩を首輪も付けずに野放しにするとは思えない。少なくともいざとなればすぐに切り捨てられるようにするだろうし、危険が仲間に及ぶと判断した場合は即座に潰すことが出来る支度はしとくんだろうなあ。なんにせよ、もうマリアが彼女を戦力とは計算しても仲間としては判断しないような気がする。

さて、一方でラミアの正体にもいささか疑問符がついてきた。最初のラミアの月面侵攻を阻止しながら全滅した、過去の月面基地の隊員たち。英雄と謳われる彼らだけど、全滅してしまったせいか、ラミアの侵攻前後からの月面での状況がわかっていなかったのが、段々と情報が解析されていくにつれて妙な部分が浮き上がってくる。
英雄として死んでしまった婚約者が、いったい何を考えていたのか。決して見つからないだろう答えを追って月面に来たようなものである主人公にとって、知れば知るほど余計に分からなくなってくる婚約者の素顔。
非公式のエリート集団、アルファ・チームの不穏な動向と、ラミアの背後に見え隠れする謎の知性の存在。そして、ラストの急展開。
これは、色々とヤバイことになってきた。
錯綜する人間関係と合わせて、盛り上がってきましたよ。


それにしても、最近の林先生は話の舞台が、突端であることが多いなあ。人類が総力をあげて生産力を集めているラミアとの最前線。月面という場所も影響しているんだろうけど、戦力も魔女小隊にばかり重要任務が振られるようなベテラン不在の環境、軌道戦闘機が一機あるかないかで戦局が左右され、ミサイルすらモドキに過ぎないガラクタ寸前のものを突貫で自作しなければならないような、超局地戦。
でも、この超局地戦が地球の運命を握ってるわけだから、これはこれで怖い話。失敗が許される余地がとてつもなく少ない、あとがない、ってことだもの。