プシュケの涙 (電撃文庫)

【プシュケの涙】 柴村仁/也 電撃文庫

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全部読み終えてから、この表紙絵見たら……ちょっと泣く。
あの繋がれた手には、どれほどの想いが込められているのか。舞散る蝶たちと、墜ちていく男女。
前編での、最後の由良の行動の真意とは、もしかしたらこの表紙絵そのものだったのかも。

ああ、それにしても。なんというひどい構成。これは、読んでる方のダメージ、半端じゃないよ。やるせなさにへこむへこむ。
前編、最初は由良の傍若無人で他人の心の内にズケズケと踏み込む行動に腹が立つわ、なんだかんだとその行動につきあう榎戸川の不可解な挙動が苛立たしいわと、なにこれ変なの。と、物凄い違和感感じてたんですよね。それぞれの行動が、支離滅裂で、なんか神経逆なでされてイヤだなあ、と半ばうんざりしながらページめくってたんですよ。
こりゃ、ハズレかなあ、と。

ところが!

途中で、由良の真意と事態の真相が明らかになった途端、不可解だった二人の行動が、いきなり筋の通った明快なものになり、本当にもう、愕然。
気がつけば、そこから、綱渡りのような切羽詰まった神経のすり減らし合い。剥き出しのようでグチャグチャな、追い詰められた者同士のギリギリのせめぎ合いが目の前に繰り広げられてて、あとは息をのむばかり。
追い詰められた者の心理。思い詰めた者の心理。相手の喉にナイフをつきつけているのか、それとも自分の喉にナイフを突きさしかけているのか、どちらなのかわからなくなるような、本当にグチャグチャの切羽詰まった想い。それがふっと途切れたあとにくる、現実を目の前にした空虚感。

前編の終わりも無常感があって、胸にくるんだけど。
ここからの後編が、本当にヒドイんですよね。時系列は、前編よりも前。
悲劇が起こる前の物語。悲劇に至る物語。これが悲劇となってしまう所以たる、少女の幸福の物語。
優しくもあったかい、微笑ましいボーイ・ミーツ・ガールの物語で。絶望の淵にあった一人の少女が、一人の変な男の子と出逢うことで、段々と未来を見つけていく物語で。
ほんとに、読んでてじんわりと女の子が幸福を見つけていく過程が沁み込んで来て。
それが、激痛なんですよね。読んでるこっちとしたら。
ナイフでザクザクと切り刻まれるような。劇薬で生きながら身体を段々と溶かされていくような。

痛くてもう、泣きそうだ。
この構成は、卑怯。もう、鬼。悪魔。
まいった。