鳥籠の王女と教育係―婚約者からの贈りもの (コバルト文庫)

【鳥籠の王女と教育係 婚約者からの贈りもの】 響野夏菜/カスカベアキラ コバルト文庫

Amazon



自分に触れた異性をカエルに変えてしまう呪いをかけられてしまったお姫様。このシチュエーションって、一見メルヘンチックではあるんだけど、実際としてはかなり悲惨、というべきか本気でエグいことになってるんですよね。
本物の蛙に変えられてしまってるわけだから、カエルの王子様みたいな童話と違って、この話で蛙になってしまった人はあっさり短期間に蛙の寿命で死んじゃってるわけです。実質、触れた相手を殺してるようなもの。しかも、これまで犠牲になったうちの大半は呪いを知りながら果敢に挑戦したある意味自業自得の連中なのですが、何人かは呪いの事実を知らずに触れてしまった、というケースもあるわけで(これ、娘を思ってとはいえ、仕組んだ王様、マジ外道だと思うんですけど)
王女エルレインが、これまでどれだけ傷ついてきたか。何気にけっこうヘヴィなシチュエーションなんですよね、これ。
さらに、離宮から一歩外に出れば死んでしまう、なんて呪いもセットになってるものだから、生まれてこの方、館の外に出たことがない、という境遇のおまけつき。
エルレイン、聡明で芯が強く挫けない性格というのが、この場合逆に不憫なんですよね。自身の境遇の理不尽を理解しながら、それを受け入れ、ぐっと耐え続けているわけですから。
そんな頑なに強張った王女の心を解きほぐしていくのが、王女に求婚してきた魔法大国エリアルダの王子・アレクセルが送り込んできた、魔法使いゼルイーク、なわけです。
……解きほぐすって言っても、嫌味しか言わないんですけどね、この魔法使い。一方で王女も王女で気が強いもんだから、言われたら言い返し、得意の皮肉で切り返し、必死にゼルイークを言い負かしてやろうと奮起しているあたり、似た者同士のひねくれ者というかお似合いというか。
ただ、ゼルイークも王女を嫌っているわけではなく、むしろしっかり敬意を払ってるんですよね。常人ならば、精神を病み心を腐らせてしまうような境遇に負けずへこたれず、歯を喰いしばって誇り高く生きてる王女の姿勢には、感銘すら受けている様子が随所に見られる。彼女の呪いを解くために、涼やかな表面とは裏腹にけっこう必死になってるっぽいし。

まあ、このゼルイークが、ダナーク領の領主だという話が出た時にはびっくらこきましたけどね!
これ、ダナーク魔法村シリーズと同じ世界観だったのか。確かに、魔法に関する概念がよく似てるなあ、とは思ってたけど、同じ作者だからとしか考えていませんでしたよ。どうやら、随分と過去の話になるみたいですけど。ダナーク魔法村の時代には、魔法はほとんど絶えてますしね。
……ああ。なら、えっと。エルレインって、王女の名前みたら、ある程度バレバレじゃないですか? あとの展開とか(苦笑


王女、これまで生まれてこの方、異性を身近に近づけたことがないせいか、男性に対して色々と態度辛辣なわけですけど、けっこうこの娘、惚れっぽいですよね(笑
まあこれまでは恋も出来ない許されない立場だったわけですから、自分の呪われた体質をもろともせず、まっすぐに好意をぶつけられたりしたらクラッとくるのもわかりますし、聡明なだけにゼルイークの冷たい態度の端々に垣間見える優しい本性を察してちょっとドキドキしたりするのもわかります。
そのくせ、幼馴染ともいうべきローリオの態度にはまるで気づいていないっぽいのは、けっこうひどい(笑
まあ、ローリオも態度も酷いんですけどね。好きな子をいじめてしまう性分は仕方ないにしても、言い方が見てたらちょっと棘がありすぎ。そりゃ、王女もなんだよこいつ、自分の事嫌いだろ、と思ってもしょうがないくらいキツい言い方しかしてないしw
でも、触れたら蛙になってしまうような危険な相手に、幼い頃から頻繁に逢いに来る、というのはけっこうわかりやすい態度にも見えるんだけどなあ。幼い頃からのことだから当たり前になってしまってわかんなくなるのかな、そういうの。

しかし、王子様は本気なんですかねえ、王女に一目ぼれしたって。いや、あの真摯で馬鹿まっしぐらな態度見てたら本気としか思えないんですけど、あれで腹に一物持ってそうな変な表裏のなさがあるからなあ。もしかしたら、ゼルイークの方が最初に姫に興味抱いてて、そんな彼をけし掛け、姫に近づけさせるために仕組んだ、なんてケースもあるんじゃないかと、少々疑ってます。
だいたいこの王子、王女にまっしぐらな態度とは裏腹に、物語の流れ的に王女よりも親衛隊長のオルフェリアの方にフラグ立ちまくってるもんなあw
うーん、でもアレクセル王子がエルレインにべた惚れ、とまんま受け取っても違和感無いくらいには、メロメロに見えるしなあ。エルレインもまんざらじゃなさそうだし、実際彼の馬鹿さ加減には何度も救われてるわけだし。

結末は見えてそうで、其処に至る過程がけっこうグルグル絡まりそうなのが、なかなか面白そう。
惜しくも終わってしまったダナーク村の系譜の話でもあるわけですし、今後とも長く続いて欲しいなあ。次回楽しみ。