付喪堂骨董店〈5〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)

【“不思議”取り扱います 付喪堂骨董店5】 御堂彰彦/タケシマサトシ 電撃文庫

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これまでは、どちらかというとアンティークという不可思議な魔法の道具に翻弄される人間たちにスポットが当たっていたこの付喪堂骨董店という話だけど、第一話の【幸運】はいつもどおりながら、第二話の【希望】と第三話の【言葉】は咲と刻也が対象となってきたんじゃないだろうか。それも、アンティークを主眼とするのではなく、アンティークを媒介にして、これまで触れられなかった咲の過去、咲という少女の根源に近づくような。
そろそろ、咲も刻也も今までのままではいられなくなってきた、ってところなんでしょうか。
決して、二人とも積極的に距離を縮めようとはしていないのだけれど、お互いの間に流れる感情は、傍に居続けることで成熟を続けているわけで。

でも、このまま順調に二人の関係が育っていくかと言うと、そろそろただ漫然と過ごすだけではいけなくなった。それが今回の第三話のエピソードだったんじゃないでしょうか。
図らずも、刻也と咲の未だ交わることのできない断絶が明らかとなったこの話。咲の過去の秘められたものが、彼女を苦しめ、悩ませ、ともすれば現実から遠ざかり幻の中に逃げ込む誘惑を抑えきれずにいることがわかってしまったとき、刻也は結局有無を言わさず彼女を連れ戻してしまったわけだけど。
優しいけれど、傲慢だと囁いた咲の気持ちは、どんなだったんだろう。嬉しさと辛さがないまぜになったような囁きに、彼女の刻也への愛情と好きであるが故の苦しさのようなものが垣間見えて、胸が痛い。
刻也は彼女の傍に居続けたいと願うなら、きっといずれ、彼女の中に秘められている苦しみと正面から立ち向かわなければならなくなるんじゃないでしょうか。おそらく、彼も今回の事である程度それを自覚したはず。
これまでも、いくつかのエピソードで、彼が他よりも咲を優先し、選んだことで他を捨て去る結果を招いたことがあったけど、それがいずれ咲を救ううことになるのか、それとも苦しめることになるのか。大事にされる、ってことはけっこう大変なことなのかもしれない。

そんな不安を払拭してくれるのが、毎度おなじみラブラブ話の第四話(笑
もう、御馳走様としか言えないよ。
鈍そうに見えて、シメるところきっちりシメてくる刻也という男はやっぱり侮れん。侮れん。咲って、けっこう難しい女の子だと思うんだけど、なんだかんだと彼女を長く落ち込ませず、すぐに笑顔を取り戻させる刻也ってかなりやり手だと思いますよw