蒼穹のカルマ1 (富士見ファンタジア文庫)

【蒼穹のカルマ 1】 橘公司/森沢晴行 富士見ファンタジア文庫

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……ぶはっ。あは、わはははははははは!(喝采
やばい、これはやばい、最高最高。この話の転がし方はまったく予想していなかった、上手い上手い。
冒頭からの入りは、完全に異世界ファンタジーの枠組みだったので、途中までそういう話だと完全にミスリードされてましたよ。いや、空獣や飛翔機関、国の歴史や騎士団の組織構成とか簡略的ではあるものの辻褄とか無視して適当にでっちあげたものとは違う、ちゃんと考えられたものでしたし、その辺は近年の富士見ファンタジアの新人作に見られるファンタジー系作品より、よほどしっかりした世界観なんですよね。
それを、途中から積極的にたたきつぶしていくあたりに、とにかく喝采をあげたい(笑
とはいえ、前記したものを完全に叩きつぶしているわけじゃないんですよね。台無しにはしておらず、今後続編が出るならば、ちゃんとした異世界ファンタジーの括りで話を展開させていくつもりがあるらしいことは、エピローグでの上司の動向や、同僚の三谷原の妙な反応、過去の兄の死に関する謎など、いくつか伏線を忍ばせていることからも容易に予想できるわけですが。

しかし、それにしても後半の怒涛の一直線展開は笑った笑った(w
この構成ってよく考えると、ライトノベルではあんまりお目にかかれない類いのものですよね。
とある目的のために目的地に急ごうとする登場人物の行く手に、予期せぬハプニングが次々と襲いかかり、それを主人公がいちいち引っかかって、時間に間に合わなくなりそうになり大ピンチ。みたいな。
あるとしたら、ギャグ系の短編や書き下ろし中編とかその編だろうか。よく見かけるのは、多分コントとかコメディ映画。いや、昔話や童話、古典作品などにも見かける類かと。

これはなんの予備知識もなく読んだ方が面白いかもしれませんねえ。それ一つ一つが一冊の長大な物語を構築できそうな要素を、闇鍋みたいにつぎ込んでは切って捨て切って捨て、捨てたように見せかけて最後に一つに収斂させ、大撃破!
全体にスピード感があって、爆笑しながらも痛快。主人公カルマの突っ込みどころ満載な姪至上主義の徹頭徹尾ぶりも、あそこまでやられると爽快でした。
まあ、実際あの姪っ子の在紗は実に可愛らしい少女なので、目に入れても痛くないカルマの対応は無理もなかろうと首肯するばかりなのであります。……その在紗にも、なんかあるのかもしれないですけどね。いかなる時もうろたえない<鉄仮面>のカルマの感情を容易に動かしてしまう存在、というだけでなく。あの人の、秘書に告げた一言は、それ以外の意味も含んでいたような気もするのだけど……ふむ。

なんにせよ、面白かった。展開そのものは壮大な一発ギャグ、というべきものなのかもしれないですけれど、それを構築している様々な要素が非常にしっかりとしている雰囲気があり、基礎、基盤、小説を書くにあたっての土台が出来てる感じなんですよね。まともな異世界ファンタジーを書いても、ドタバタコメディを書いても、面白いものが出てきそうな雰囲気がありましたし、これは続編が出ても、新シリーズになっても期待できそう。久々に、富士見ファンタジアから楽しみな新人さんが出てきたかも。