月色プラットホーム (一迅社文庫 み 2-1)

【月色プラットホーム】 水口敬文/松崎豊 一迅社文庫

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くぅぅぅ、これだ。これを読みたかったんだ。やっぱり、この人最高だよ。
この作者の名前を発見した時には、ガッツポーズを決めたモノでしたが、こうして期待していたとおりのものを読ませていただけると、こう…あれだ。しあわせ〜〜

水口敬文さんといえば、あれですよ。スニーカー文庫から出していた【憐 Ren】のシリーズ。最近、実写映画になったんでしたっけ? 観てないけど。
あのシリーズにおける、年頃の男女グループの気の置けないやりとりの描写の素晴らしさといったら。
未だに、こうした友達グループ描かせたら、この人はラノベ界隈でも最高峰だと思ってます。その水口さんの新作。ほぼ二年ぶり、ときたら驚喜するのも仕方ないでしょう。しかも、しっかり男女6人グループ、しかも幼馴染同士というキャラクター配置。
おーけー、パーフェクトだ。
惜しむらくは、主人公と綾芽を除く、薫やつぐみたち他の四人の友人衆のイラストがなかったことか。四人とも個性的なキャラクターだから、絵にしても映えるだろうに勿体ない。勿体ない。もう一度いったる、勿体ない。
まあ、それは今後のお楽しみというところで。もちろん、続編は出るんですよね、という期待を込めて。つぐみの参戦とか、薫の好きな人とかネタは色々あるわけですしねえ。周吾と薫なんか、良いコンビなんだと思うんだけど、どうも薫の好きな人は彼じゃないみたいだしねえ。なぜか周吾だけが知ってるみたいな素振りみせてるところが、意味深なんだけど。
……と、友人連中の話だけでも気になる所は多々あるわけですが、メインストリームはあくまで幽霊列車とのその乗員である紗月と白塚。彼女らの仕事を手伝うこととなった匠海と、幼馴染の綾芽のねじ曲がってしまった関係なわけで。

主観というのは一度固定してしまえば、それも確固とした意思をもって固めてしまうと、よっぽどのことがなければなかなか固定観念として凝り固まってしまって、なかなか崩れないものなんですよね。思い込みは頑ななるもの。匠海本人はまったく気が付いていなかったんだろうけど、綾芽は今回の一件だけじゃなく、それまでだって色々と試行錯誤してきたんだろうなあ。傍から見たら何も考えてなさそうなお気楽晴天少女なわけですけど、それこそそう見えるのは匠海の視点が大きく作用しているわけで、他の連中から見たらもっと違う風に見えるのかもしれない。
でも、幼馴染っていうのは難しいもので、幼いころから付き合ってきた仲だからこそ、匠海の頑なな思い込みを引っ繰り返すことは難しかったのかもしれない。日常に大きな変化をつけるのって、なかなか難しいことだし、これまでの固定観念を打ち崩すようなイベントなんて、普通に生きてたらなかなか起こせないものだしねえ。普通に生きるって、そういうものだし。それに、匠海に多少の不満はあろうとも、綾芽もみんなで騒いで過ごす日常は楽しいものだったんだろうし。
その意味では、彼女が幽霊列車を探しに行こう、と提案したのは、これまで彼女が試行錯誤してきたなかでも、一番大きな決心をもってやろうとした変化だったのかもしれない。
図らずも、その行為が匠海と本物の幽霊列車とその乗員たちを巡り合わせ、巡り巡って、匠海の兄の死を経ていびつな形で凝り固まってしまっていた匠海と綾芽の関係を解きほぐすことになっていくんだけど。
うん、となると綾芽の思いきりも、決して無駄ではなかったということか。ただ、変な恋のライバルを引っ張りこんでしまったのは余計な副産物だったんだろうけど(苦笑
匠海が兄の死を通じて極め込んでしまった生き方ってのも、まあ不器用だし、随分勝手なものだけど、それだけ大事に思ってたってことなんですよね、綾芽のこと。単なる幼馴染じゃ、そこまで決意を固められないし、それを高校生になるまで揺るがさずに続けることなんて不可能だろうし。
性格もあるんだろうけど、一途といって然るべきものなんじゃないだろうか。彼のそれは、鈍感さではなく、一途であるが故の近視眼性によるもの、というべきなのかもしれない。紗月にゃ、厳しい勝負なのかもね。もともと、彼女幽霊だし。そのわりに、積極的だしハンデにもめげずにタフに挑んでくるし、生前は病弱で外を出歩くこともできなかったみたいな素振りを見せてるけど、かなりヤンチャで前向きな性格だったんじゃないだろうか、彼女。

今回のMVPはやっぱり兄ちゃんでしょう。こりゃあ参りました。幽霊の鑑というべきか、これぞお兄ちゃんというべきか。わりといい面の皮だと思うんだけど、ああいう手にでるあたりこの人の生前の人品が想像できるというものです。大したお人だ、うんうん。

ぶっちゃけ、人間関係のカラクリといい、その解きほぐしかたといい、期待していた以上の肉厚ジューシーな出来栄えで、たいへん満足させていただきました。面白かったよ〜〜。にゃはははは、上機嫌上機嫌♪
もちろん、続きは出るんですよね。出るものとしてにへらにへらとニヤケたまま待つとしましょう。にひゃひゃ。