ベン・トー 3 (3) (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 9-5)

【ベン・トー 3.国産うなぎ弁当300円】 アサウラ/柴乃櫂人 スーパーダッシュ文庫

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やべえ、やっべえ。鳥肌立った。三巻にしてなおこれか。これほどか。
なんという、なんという誇り高い戦い。気高い狼たちの闘争か。
半額弁当の奪取購入という戦いの趣旨を一切ぶれさせず、身震いするほどの魂の高潔さを感じさせる戦いを描きだす作者の筆に戦慄を感じずにはいられない。
【オルトロス】の姉妹が見せる謎の歓喜と悲壮感。その真相が明らかになったときの衝撃と、【ヘラクレスの棍棒】の来訪にともなう惨劇の再現、そして狼たちの気高き本能を目の当たりにしたときの衝撃と言ったら。
繰り返すけど、これほど感動させられたのはこの戦いが、半額弁当の奪い合いであるからこそ、なんですよね。腹が減り、空腹が故にそれを満たすために弁当を奪い合う。半額シールの貼られた弁当を。
そういう戦いだからこその、感動。変に闘争を神聖視せず、別の格式ばった戦争に比喩的に置き換えたりもせず、純粋に弁当の奪い合いだからこそ発生する、この感激。素晴らしい。とてつもなく素晴らしい。

この本読んだのが飯食った直後で満腹だったにも関わらず、描かれる弁当の美味そうな描写の数々に、腹いっぱいにも関わらずとてつもない空腹感が襲いかかってきた。今回はメインの弁当のみならず、本来なら敗者が手に取る喰いモノであるカップ麺、どんべえやチキンラーメンといったインスタント食品についてもねちっこいほど丹念で美味しそうな描写が続いたものだから、たまらん。たまらんぞ。買い置きしてあるチキンラーメンに手が伸びたのも仕方ないことなのである、これ。
あのチーズカツ弁当の美味そうな描写といったら、もうどうしてくれるんだこれ。あんなの読まされたら喰いたくなるにきまってるじゃないか。作者、三食スーパーの弁当食ってるんじゃないのか? この世で一番美味い食べ物はスーパーの弁当である、と勘違いしてしまいそうじゃないか。はきりいってこれ読んだあとに外食とか、考えられん。無理。


前回、初登場した幼馴染があまりに圧倒的すぎるヒロイン臭をぶちまけてしまったせいか、今回はかなり意図して槍水先輩が巻き返してきた感じ。風邪ひいた佐藤の看病にきてくれたときの甲斐甲斐しさといい、逆に伏せっているところをお見舞いにいったときの、普段と違う素顔とか。
あの鋭角のキリッとした姿って、意図的につくったのか。化粧せずスッピンのときの槍水先輩の思わぬ容姿とか、予想もしていなかっただけにかなりびっくりさせられましたよ。

一方のあやめだけど、今回は出番少なかったなあ。前半はわりと出ずっ張だった分、後半は狼たちの饗宴に主眼が置かれたせいで、出番なくなってしまった感じ。あれはオルトロス姉妹と佐藤、二階堂のコンビ、そして狼たちのガチな魂のぶつかり合い、ってな展開だったから無理ないんだけど。
その分、前半は存分に幼馴染分を堪能。やっぱりこの二人、精神的物理的な距離感の近さがそんじょそこらの幼馴染とは格が違うんですよね。ちょっとしたアクシデントで(あれがちょっとしたアクシデントで片付けられてしまうあたりに、佐藤の悲惨さが感じられるんだけど)、一日検査入院することになった佐藤の病室に、普通に看病と称して泊まり込むしなあ。それで桃鉄やりこむあたりがこの二人らしく、そのあと平然と同じベットに潜り込んでしまうあたりがやっぱりこの二人らしく。平気でお互いベタベタ触るようなスキンシップしてるのが、えらいエロいんですよね、こいつら。高校生のくせに、小学生低学年みたいな触り方してるし。あやめはともかく、佐藤の野郎は何も感じないんだろうか。感じてないあたりに、二人の近すぎる関係というのが見えてくるんですが。
一旦意識したら、一気に行くとこまで行ってしまいそうでもあるんですけどね。

白粉は、とうとうヒロインの座から転げ落ちてしまった模様。口絵からも消えてたし(笑
相変わらず、まっさかさまに腐界に滑落中だし。止まる気一切ないもんなww

あらすじにも載ってたような気がするけど、ついに佐藤にも狼としての二つ名が……ついたわけですが。
これは酷い!(爆笑
未だかつて、これほど端的でかつ酷過ぎる<二つ名>は見たことねーよ! 冠もつかず、単純に一言で言い表しているあたりが、特に酷過ぎる。解釈の仕様とか、どうしようもないじゃん!
しかし、その二つ名である程度納得されてしまう辺りに、佐藤の普段の行状が垣間見えてしまうところが涙を誘うわけで。本人、決してそうそう無茶苦茶な人物ではないと思うんですけど、客観的に行動やら格好やら見てると、誤解されても仕方無いんだよなあ。真剣に可哀想に思うんですけど。
そういえば、槍水先輩が現在の二つ名【氷結の魔女】(これも由来はけっこう酷いんですよね)を得る前の二つ名。ぽろっと口端に上っただけですけど、これってけっこう意味深ですよね。次回以降、このへんが関わってくるのか。

ちょっと意外だったのが、ピアスの男。あのガブリエル・ラチェットの頭目だった男が、今回前面に出てきてたこと。まさか、再登場はあり得るとしてもここまでメインキャラ。ほとんど、オルトロス姉妹に佐藤と同じ、もう一人の主人公ともいうべき立ち位置になるとは想いもしなかった。
それも、かつての猟犬から、再び孤高の一匹狼に戻った男の矜持や、その生来の輝きみたいなものがギラギラ光ってて、実にカッコ良かった。ツードックはいかないみたいだけど、いずれ固有の二つ名がつくかもしらんね、こいつも。もしかしたらそれは、オルトロスの姉、梗が連想したあの闘犬の名前なのかもしれない。

相変わらずギャグパートもぶっとんでて、そっちでも大満足。佐藤のオヤジは本当に最低だな! 最悪だな!
クラスメイトネタも相変わらず酷いし……いや、ほんとに酷いよ。酷い酷い。佐藤、やぱり変態だよ、変態ww


三巻に至ってなお、このテンション。この激燃えストーリー。そしてなにより美味そうなお弁当。
どこまでいくのかこの傑作。どこかでも行ってほしいこの傑作。いやあ、最高でしたわ。

Marvelous!!