貴方に捧げる「ありがとう」 (コバルト文庫)

【貴方に捧げる「ありがとう」】 野梨原花南/宮城とおこ コバルト文庫

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ああ、そういうことだったのか。最終巻を読んで、どうしてこのシリーズが始まったのか、なんとなくわかった気がする。
この魔王シリーズの前身である「ちょーシリーズ」は、その最後は、お姫様と王子様は家族や友達と一緒にとても幸せに暮らしました。めでたしめでたし、という見事な大団円で終わったわけですけど、ひとつだけ。ひとつだけ瑕疵ともいうべきものが残ってたんですよね。
それが、サリタ・タロットワーク。ジオの息子であるオニキスを救うために、今や十六翼真の黒色と呼ばれる魔王サルドニュクスとなってしまった青年の事。
「ちょーシリーズ」では、結局彼の自己犠牲に対してみんな怒ったまんまだったんですよね。感情の決着がつかないままだった。
この魔王シリーズは、ある意味その決着をつけるためのシリーズだったのかもしれないなあ。と、この最終巻のタイトル【貴方に捧げる「ありがとう」】と、サファイアがサリタをぶん殴る場面を見て、そんなことを思ったり。
なんだかんだと、「ちょーシリーズ」の舞台じゃ、今回みたいな決着はつけられなかっただろうしね。ラブちゃんみたいな別の魔王が出てきて、色んな世界を渡って、魔王としての在り様やその周りにいる寿命のある存在たちとの関わり合いを照らし直さないことには、この結は出てこなかったように思うし。
まー、主体はラブちゃんこと八翼白金の心の解放だったんだろうけど、同じ人間出身の魔王の変化を目の当たりにして、サルドニュクスもけっこう影響あったと思うのよ。……あんま変わんなかった気もするけど、影響はあったはず。うんうん。
それに、ラブちゃんがちょっかい掛けてこなかったら、サルドニュクスにサリタの要素が再び発現することはなかっただろうし。
サルドニュクスとサリタは、明確に別人だったわけで、だからこそサファイアやスマート師匠も、本来サリタに言うべきだった言葉を彼には言わなかったんだから。

サファイアが告げる、永劫に存在し続ける相手への言葉は、なんかジーンと来た。この作者が描く愛の形、親愛の姿は余人にはなかなか導き出せない、とても独特で、でもとてつもなく素敵なモノだと、改めて思った。
宝珠の話でもそうだったけど、基本的にこの人の描く話と言うのは生命の賛歌。世界に祝福される話なんですよね。時に、重たすぎるくらいにシリアスな話だったりするんだけど、その書き方はとてもポップで明るく弾むゴム鞠みたいで、結局読み終わった後はなんだか元気になっていたりするわけで。
生きるのって、素敵だよね、なんてことを素直に思い浮かべることが出来てしまう。これって、素晴らしいことだと思うのよね。

ラスト、あのラボトロームの慶事って結局ぼかされたけど、やっぱりアラン王子の結婚式だったのかなあ。話題にオパールがあがってこなかったところをみると、上手いこと捕まえた気がするんだけどw

うん、ついにこのシリーズも終わっちゃうのね。やっぱり寂しかったりするのです。もう1シリーズあっても、歓迎するんですけどね。