プリンセスハーツ―恋とお忍びは王族のたしなみの巻 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 恋とお忍びは王族のたしなみの巻】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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前巻であれだけ管理の徹底を誓ったくせに、管理できてないよ! 管理が足りない!(笑

しかし、ルシードとジルの仮面夫婦生活がはじまってからもう二年になるのか。二人の当初の利害関係だけで繋がった冷たい関係を思い起こせば、随分と変わったものです。思慕するメリルローズの偽物ということでジルにつらく当たっていたルシードも、今となってはジルの事を誰よりも信頼し、頼りにしているわけですし。ジルだって、最初はルシードを自分の目的のために利用するだけの相手、として感情なんかこもってなかったはずなのに、今の彼女の行動原理って本来のパルメニア打倒の目的からずれて、純粋に王妃としてルシード第一。ルシードを名君として盛りたてていくことしか考えてないみたいになってる気がします。
もちろん、アジェンセン公国の戦略目標としてパルメニアの併吞があるわけですから、彼女の目的としてはズレてはいないのでしょうけれど。今の彼女はその前にルシードありき、の感じがするんですよね。
そのわりに、自分のルシードへの感情、彼からどう思われているかの認識が相当鈍い。今のルシードにとって、半身といったら誰がどう見てもジル本人しかいないじゃないか。
二人の関係性については、むしろルシードの方が正確に把握しているのかもしれない。彼がマシアスに語ったトーナメント出場の動機なんて、ちょっと感動ものだったですよ。よっぽどジルのこと想ってなかったら、あんなこと言えないですよ。
でも、彼の場合複雑なのは、その感情を認めるわけにはいかないってところなんでしょうね。ジルはあくまで彼が愛したメリルローズの偽物として送り込まれてきた存在。その彼女を愛してしまうのは、メリルローズへの裏切りになってしまうわけですし。彼にとっては辛い現状なんですよね。もしメリルローズの存在がなければ、ジルが本当の意味で王妃でも何の問題もないのだけれど、そもそもメリルローズの存在がなければジルが王妃としてルシードの前に現れる事もなかったわけで。
結局のところ、この二人が本当の意味で夫婦になれるには、メリルローズとの決着が必須となってくるんでしょう。
それに加え、ジルにはグリフォン、という心を占める男性がいることをルシードは知っているわけで。それが、ジルをいずれ自分から離れていく存在だと思い込んでる要因となって、彼が躊躇する鎖となっている。自分にとってのメリルローズ、ジルにとってのグリフォン。二重の鎖は、ルシードに二の足を踏ませる戒めとしては重すぎるくらいのものだ。

そのルシードだけど、前回で一気に単なる脳筋君主からいっぱしの王の器を示したわけですけど、やっぱり王としての存在感が増してます。
今までだったら、今回のケースだとジルが一人で対処しても、こんな風にルシードの不在を心細く思うようなことはなかったはず。ルシードは決して智者でも政治家として傑出した存在でもないけれど、居ると居ないとではジルの判断に迷いが生じるほどの重きを為すようになっている。
この辺は、ジルの女性としての感情を抜きにした、純粋な王としての重みに見える。成長したなあ、うんうん。

そのルシード不在の中での、オズマニア王子オースとジルとの剣を持たない戦争は、もう凄まじい見応え。こうしてみると、武力による戦争というのが単なる政治の延長の一手段に過ぎない、というのも納得の、言葉と言葉のギリギリの鬩ぎ合い。この手の国家間で手持ちのカードを切り合う外交戦は、やっぱり読んでて面白いったらありゃしない。並みの合戦よりも手に汗握る緊張感ですしね。
これでも、ある意味前哨戦。あくまで本番前の主導権争いですからね(それでも、場合によっては息の根止めにきてますけど)。実際、政争の本番となったらどうなることやら。

帰城が遅れているルシードの方も、意外な人物との出会いで面白いことになってるし。味方の少ないルシードだけど、ここで何とか身内が増えることになるんだろうか。
しかし、ほんとに女に見えんな、あの人。