影執事マルクの迎撃 (富士見ファンタジア文庫)

【影執事マルクの迎撃】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

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うんうん、面白い。やっぱり面白い。しかも、一巻よりさらに面白くなってる。
一巻がエルミナとマルクが主従となる話だとしたら、今回は主従となった二人が絆を深める話。
前回でお互いの人柄を知り、エルミナはマルクに信頼を置き、マルクは自分の居場所を与えてくれる掛け替えのない人として、互いに絆を結んだ二人ですけれど、まだ出会ったばかりでやっぱりお互いの事は何も知らないわけで。
マルクの外出にエルミナがくっついてきたことで、屋敷の中では分からないエルミナのいろんな顔が見えてくるんですけど、これが可愛いんだ。感情を滅多に表に出さず、どこか超然とした雰囲気の在るエルミナお嬢様だったわけですけど、街中の物珍しいものに興味を示したり、マルクの壊れた眼鏡の換えを、店で熱心に吟味したりと、そこで見えてくるのはエルミナの本当に普通の年相応の少女らしい姿。確かに、いいところのお嬢さんらしい世間知らず一面はあるんですけどね。でも、普通の女の子なんだよなあ。あの、超常的な力を誇るアルス・マグナの主として纏っているどこか浮世離れした雰囲気の方が、不自然に感じるような。
その違和感は、後々半分くらい正しい感触だったと分かるのですが。

しかし、これってよく見るとデートだよな、デート(笑

連れだっていろんな店を見て回ったり、飲食店に入ったり、アクセサリーを売ってる露天を覗いたり、休憩時にジュース買ってきたり、男の身の回りのもの(今回はメガネ)を見立てたり。なんだかんだと、マルクの方が自腹切ってるしw
やっぱりデートだよ、デート(笑
これがお嬢様の外出に執事が付き従うなら、こんな印象は抱かないんだけど、あくまで今回の外出はマルクの方の私用で、それにエルミナがくっついてきたという形だから、二人で一緒に街をぶらついているようにしかみえなかったもんなあ。

しかし、マルクのエルミナへの忠誠心を見ていると、彼がこれまで歩んできた人生の孤独さ、拠り所のなさがどれほど彼を傷つけてきたかが伺えてしまうなあ。一巻じゃ彼の底辺を這いずるような人生はだいぶコミカルに描かれていたけど、本人からすれば本当に辛かったんだろう。だからこそ、自分自身を必要としてくれる人であり、自分がいてもいい場所を与えてくれたエルミナに対して、これだけの忠義を尽くしているように見える。今回の一件でのエルミナが傷ついたり、危険が迫った時のマルクのブチ切れっぷりを見てると、それが如実に伝わってくる。常に今日という日を生き残るために、ただ自分のためだけに生きてきた彼が初めて見つけた、自分よりも大切なもの。
以前、【黒衣】と呼ばれていた時よりもずっと強いんじゃないだろうか、今のマルクは。

一方のエルミナにとって、マルクというのはどういう存在なんだろうか。
彼女からすれば、けっこう無理やりな形でマルクと契約を結び、絶対支配下に置いてしまったわけで、どうも当初の様子を注意深く見てると、恨み憎まれているんじゃないかと思ってた節があるんですよね。ところが、マルクときたら吃驚するぐらい心から仕えてくれているわけで。
そりゃあ、嬉しいですよね。
一巻のときには殆ど出さなかった絶対遵守となってしまう<命令>を、この巻ではわりとポンポンマルクに命じてるんですよね。しかも、どうも無自覚に。
ああ、これはマルクに対して、甘えてる、と思うんですけどね。どうでしょうw
この執事と来たら、他人から見ると何を考えているか一切わからないらしい鉄面皮の自分の表情を簡単に見分け、まるで自分が表情豊かな少女のように接して来てくれる。
一人では背負い切れないモノを背負い続けているエルミナにとって、アイシャのような親友やドミニクのような古くから仕えてくれている人もいるけれど、こんな風にさり気なく、気負うことなく支えてくれる心強い身近な人というのはいなかったでしょうからねえ。まだ傍において時間は経っていないはずなのですが、思いのほか精神的に寄り掛かっているのかもしれません。
だからこそ、マルクが殺されたと思った時、あれほど我を忘れるほど激怒する事となったのではないでしょうか。
主従ともに、お互いをこんなにも掛け替えのない存在として拠り所とし、支え合ってる。うわぁ、やっぱいいわ、主従モノというのも。ここからロマンスに発展するとなおいいのですが。

と、メインとなるマルクとエルミナの二人もいいのですけど、この作品のいいところはサブのキャラクターも実に生き生きとしているところ。
正直なところ、今回の敵役。特にアーロンとカナメなんか、登場した最初のシーンから、ああこりゃ長い付き合いになりそうだな、とニヤニヤしてしまうほど存在感がありましたし。
でも、最終的にああいう立場になるのは想像できていましたけど、その過程で思っていた以上に二人ともしっかりとキャラ立てしてきましたよね。登場段階でこれだけ頑丈に土台づくりしていたら、今後も息詰まることなくキャラを発展させていけますよ。今回だけで一気にそれぞれが抱えている懸案を解決してしまわず、伏線として残していますし。
それは、今回登場のカナメとアーロンだけではなく、メインヒロインであるエルミナが抱えている大きな闇や、アイシャの過去。前回の敵役だったアルバの目論見と、以前からのキャラも同じこと。いやさ、出し惜しみせず伏せられていたカードを開いていきながら、開くことでさらに新たな伏線を仕込んでいく流れは、この作品、全体の構成もかなり整えられているんじゃないかと、ワクワクしてきますね。
アルバなんか、思っていたよりもはるかに早く再登場して、しかも前回とは大きく立ち位置を変えてきましたし。セリアも、案外アルバとは別の立ち位置で大きなポイントになりそうな気がしますし。それでいて、今のところアルバの陣営なんですよね。こっちはこっちで面白くなりそう。
そういえば、アーロンの娘も、あれどうなってるんだろう。さらっと今のところ流されてますけど。これもなんかの伏線になってそう。
けっこう登場人物、多い作品となってきましたけど、その多さがむしろ大きなワクワクとなって映える感じがしますね、うんうん。

これは、ほんとに楽しみなシリーズになってきましたよ。期待、大大です。