ナインの契約書 2 (2) (MF文庫 J に 2-2)

【ナインの契約書 2.―The first day of last days―】  二階堂紘嗣/山本ケイジ MF文庫J

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一巻ではかなり多かった悪魔側の描写がごっそり削られ、契約者側のストーリーに重きがなされている感がある。
一巻の場合、悪魔の少女「九」の描き方が琴線に触れるものがあったものの、話そのものは救いがないバッドエンドのものが多かったという点を省いても、いささか低調であったという感想だったのだけれど、この二巻を読む限りそのへんが大幅に強化された感がある。九と一は徹底して狂言回しに徹しているのだけれど、存在感という意味では前巻から決して減衰はしていない。登場地点やキャラクターたちへの影響は、ピンポイントで現れる分強力に作用しているし、九という悪魔少女が契約者の人間たちに垣間見せる憐れみや優しさは、焦点がはっきりしているから登場頻度が減ったからと言って曖昧になることなく、明確に浮き彫りになってきている。
その九にまつわる背景や、彼女に対する悪意の醸成なども、本編の裏側でジリジリと進行している雰囲気がジワリジワリと滲み出て来ていて、この構成バランスシフトは大成功だったんじゃないだろうか。

最初の話。【サヨナラをおしえて Teardrop】は、どこかアニメの【シゴフミ】の衝撃の第一話を彷彿とさせる少年少女の別れの話。
この二人に恋愛感情があったかどうかはなかなか見解の別れるところだろうけれど、個人的には物語上の同性愛者のとても親しい異性との関係というものには、単純なノンケの同性同士、男女間の親友関係を超越した、でも恋愛関係とはまた少し形の違う、特別な惹かれあう関係というものが確かにあるように思える。
事件の真相は、これが答えか! というところからさらに二段三段と認識をひっくり返す状況が仕込まれていて、なかなか読み応えがあった。

次の話、【シリアルキラー Today is a good day to die-】も形は違えどボーイ・ミーツ・ガール。じゃないか。ある人に好かれ求愛されることで、興味も関心もなかった相手が好きになり、翻って自分も好きになる話。求愛していた相手も自分の事が好きではなかったのだけれど、人を好きになり、その想いを突き動かされることで自分を前にすすめ、相手から帰ってきた想いに、自分を肯定する話。
出会うたびに変わっていく相手への印象。徐々に近づいてくる距離感。重なったと思った瞬間に裏で進行する謎の連続殺人事件とのリンクで壊れかけた関係。それが追い詰められた場面で別の意味で重なり、お互いを求めていたことがわかり、再び強く結びつく物語。
この巻の中でも珠玉の出来だと思います。この話、かなり好き。

最後の話、【誰か一人多い Tom boy】。これは究極的には九の人間たちへの姿勢を示しているような話だよね。悪魔というのは屁理屈をこねて、契約を自分に有利な解釈に持っていこうとするものだけど、彼女に関しては逆に屁理屈をこねて、契約を人間に有利な方有利な方に持っていこうとしている。
そりゃあ、他の悪魔たちからは評判が悪くなるにきまってる。人間の善性を尊び、守ろうとする悪魔があってはならないだろうし。
彼女の蓮っ葉で攻撃的な態度とは裏腹の優しい本質。それがどんな物語によって生成されたものなのか。いずれ、彼女本人の物語も描かれることになるのだろうか。それが待ち遠しい。

個人的に蘊蓄語りは好きなので、一の語りは好きである。ウザイのは同意するが。程よい所で九がとっとと蹴り倒してくれるしね。