コードギアス 反逆のルルーシュ R2  TURN―4― (角川スニーカー文庫)

【コードギアス 反逆のルルーシュ R2 TURN―4―】 岩佐まもる/toi8 スニーカー文庫

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「――いまのご気分はどうです? あなたがご自分のお父さまを殺してまで命を救おうとした二人の兄妹は、どちらも立派な殺人鬼に成長しましたよ。本当に余計なことをしてしまったものですね」


黒い、黒いよナナリーッ!!
ゼロ=ルルーシュの事実を知ってしまって以降のナナリーの鬼気迫る黒さの凄まじいこと凄まじいこと。
アニメでは、シュナイゼルの傀儡になっていいように操られているように見えたナナリーですけど、この小説版ではルルーシュ側よりもむしろ、実際のダモクレス要塞の内部の様子や、ナナリーの周辺の内情が詳しく語られているのですが、ナナリーが凄いんだ、これが。
怖いのなんのって。
これまで、小説版ではナナリーの英邁さ、賢君としての資質が前面に押し出されて描かれてきた感があったのですが、一転この巻では、まさにマリアンヌの娘に相応しい、苛烈で火傷しそうな激しい気性があらわに。
以前、シュナイゼルの腹心のカノンが、ナナリーのことをユーフェミアとは違う、怖い人だと評していたのを、他人の恣意的な思惑に左右されない指導者としての資質に恵まれている、シュナイゼルの腹心の立場から政敵となりかねない相手への評価だと思い込んでいたんですけど……違ったのか。ものすごく単純な意味で「怖い人」だったのか(汗
この小説を読む限り、シュナイゼルはナナリーの掌握に半ば失敗している。不都合な情報を伏せて、手駒として利用しているつもりだったようだけど、ナナリーはペンドラゴンの人々がフレイヤによって虐殺された事実も把握していたし、シュナイゼルの最終目的もとあるルートから決戦前に入手しており、決戦後にシュナイゼルが勝利した場合でも、ダモクレス要塞を破壊し、シュナイゼルのもくろみを全世界に暴露する手を打っていたんだから、驚いた。
ルルーシュの打つような緻密な謀略とは違う、拙いと言える手かもしれないけど、託した相手がアーニャだったわけだし、どう転んでもシュナイゼルが完全勝利し、ダモクレス要塞が衛星軌道上から世界を見下ろし、フレイヤの火による支配体制を確立する、という可能性は低かったわけだ。
半ば自暴自棄になりながら、親しい人々と決別し、退路を焼き払いながら、罪を背負い、一族全部の贖罪のために、すべてを薙ぎ払おうとするナナリーの鬼気は、ほんとに凄まじかった。
特に、唯一本心を、おのがうちにのたうつ負の感情、ドロドロの闇を吐きだし、荒れ狂う悲しみを、苦しみを、辛さを、弱さ、醜悪さ、感情のすべてをアーニャに向かってぶちまけるシーンは。
この時、この瞬間、きっとナナリーとアーニャの二人は、本当の意味で繋がれたのに。親友になれたんだろうに。
アーニャにもし、マリアンヌにつけられた傷がなかったら、と思わずにはいられない。
彼女もまた、ブリタニア皇族の、自分の母親の犠牲者だと知ったナナリーは、アーニャを突き放す。

「さよなら、ナナリー」

なんでエピローグで、アーニャはナナリーの傍らにいなかったんだろう、と常々疑問に思ってたんだけど……二人はあの戦いの前に、既に決別してしまってたわけだ。となると、オレンジとの戦いの中で吐き出したアーニャの虚無的な物言いには、記憶がないというものとは別の意味が透けてくる。
そう考えると、ナナリーはやはり罪深い。記憶の曖昧さから、常に自己に疑念を抱き、自分と言う存在の薄弱さに苦しみ続けたアーニャという少女に初めて出来た親友を。アーニャをアーニャとして確立させてくれるかもしれない存在を、ナナリーは奪い去ってしまったんだから。
この妹は、やっぱり本質的なところで兄貴そっくりだわ。
でも、それだけに、兄貴と同じく愛おしい。

個人的に、スザクがなぜ父親を殺したのか。その理由を誰も知らずに、闇に葬られてしまうのは、スザクがあまりに報われないと思っていたので、その当事者であるナナリーが真実を得てくれたのは、ひとつの救いだったように思う。まあ、冒頭で引用したように、ナナリーさんその件については挑発とはいえ、めちゃくちゃ言ってますけど(汗
ナナリーは、それに加えてルルーシュの真意についても知っちゃってるんで、たった一人で随分と重たいものを背負わされるはめになっちゃってるんですよね。しかも、彼女にはそれを支えてくれる人がひとりもいない。
本来ならゼロことスザクがそれに当たるんだろうけど……スザクに対してあそこまで言っちゃった以上、ナナリーは彼によりかかることは絶対にしないだろうし。
アーニャにも負い目がある以上、以前と同じような態度で接することはないだろうし。過酷な人生だぜ、こりゃあ。
それでも、託された以上は。自身の手で幾つもの罪を背負った以上はやり通すんだろうけど、ある意味スザク以上に彼女の人生には個の幸せというものはないのかもしれない。
辛いねえ。

しかし、ナナリーの本性を目の当たりにしてしまうと、彼女が健全に育った場合を連想すると、けっこう怖いことばかり思い描いてしまうんですよね(苦笑
マリアンヌが、ルルーシュとの近親相姦を目論んでるような回想シーンがあるんだけど、もしその通りになってたら、あれですよ。お兄さまに近づく女は、片っぱしから虐殺です☆ というヤンデレにでもなってそうな……。
あとがきによると、初期設定ではブラックレベリオンでC.Cとっ捕まえてボコボコにするようなルートまであったらしいしw
ドラマCDなどでチラチラと現れていた黒ナナリー、あれってあながちギャグじゃなかったみたいですね、マジで。
いやあ、ナナリー……やっぱり素敵だw


一方で、マリアンヌの外道さは、想像以上。登場人物中でこの人が一番邪悪だわ。人体実験でかなりの人間殺してるわ、ルルとナナリーも後の目的のために、卵子の段階から手を加えてたみたいだし。
よくまあ、こんな母親からあんなやさしい人間が生まれたものだと思う。まあ、あの兄妹も、その「優しい」の定義はいささか歪んでると思うけど。

ラストの描写は、かなり踏み込んでると思うけど……個人的には違うと思いたい。とはいえ、その逆の結論もまた心のどこかで望んでいるわけで。
複雑。


なんにせよ、裏設定もふんだんに読ませられ、なにより全般にわたってナナリーが主役かと言わんばかりのナナリー祭り。アニメ視聴が前提の、本編補足が主だった役割とは言え、さすがは岩佐まもる氏というべきか、キャラの心情描写は素晴らしく、ノベライズとしては望外の読み応え、歯応えのあるシリーズでした。
あー、面白かった。