レンタルマギカ  旧き都の魔法使い (角川スニーカー文庫)

【レンタルマギカ 旧き都の魔法使い】 三田誠/pako 角川スニーカー文庫

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みかんは将来、超ド級のイイ女になるよなあ、と再認識。なにしろもうすでに現時点で十分イイ女なんだから。十歳に満たない年齢ながら、過酷な宿命の元に生まれ、多大なコンプレックスに苛まれながら、それらを克服し、なおも将来に厳然と立ち塞がる運命に立ち向かう事を覚悟しているだけあって、幼女とは思えぬほど他人の苦しみに敏感で、そっと寄り添うように癒してくれるんですよね。その聡明さが小賢しさではなく優しさや思いやりの細やかさに流れ落ちているのは、この少女の掛け替えのない美徳に思えるわけです。長く猫屋敷が彼女の事を保護してきたわけですけど、彼は彼でどれだけこの小さな女の子に心救われてきたのかと言うのと、実感させられる今回の話でありました。誰よりも魔法使いらしい魔法使いとして恐れられ、憎まれてきた猫屋敷を救いあげたのは、かつての<アストラル>だったのでしょうけれど、その<ホーム>が失われたあとの彼を支え続けたのは、間違いなくみかんだったのですねえ。
以前、絵本形式で、アストラルが猫屋敷とみかんの二人きりだった頃を描いた話がありましたけど、これを読んだあとだとまた一味違った感慨が湧いてきます。
しかし…最近はみかんのお気に入りはオルくんことオルトヴィーンなんだと思ってましたけど、みかんの本命カップリングはやっぱり猫屋敷の方になるんかなあ。

というわけで、今回の舞台は古都京都。サブタイトルで、敢えて古い都ではなく旧い都としているのは、ちょっと意味深。
そして、京都こそ、猫屋敷が元いた魔術結社が本拠とする土地。
前々から猫屋敷だけは、メンバーの中でその実力の底が見えていない感があったのですが、この人本気で凄まじい来歴の人だったんですね。これまで、この作品ではたびたび魔法使いと言う生き物が魔法の探求という狂気によって成り立つ存在であることが示されてきたわけですけど、猫屋敷蓮という青年の存在こそ、その狂気の産物の一つの究極ともいうべきもので、その背に負うものもそれだけ飛びっきりのものだったんですよね。魔法使いってのは大概、背負いきれないものを背負ってるものだけど、この人のそれはホントに救いようがないからなあ。よくぞ、今みたいなまともな人格を持つに至ったと、彼の過去を見せられると思わずにはいられない。
現在もなお、その根底には怪物としての彼が横たわっているのは、時折見せるその横顔からもわかるのだけれど、でももう彼にとってそれが本質足りえないのは、いつきの彼への絶大な信頼の言葉からも伝わってくるのです。
いつきのあの言葉は、正直感動させられたなあ。単純な行動の是非ではなく、彼がたとえなにをしようとも、それを受け入れることが出来る、受け入れられないことはあの人は絶対にしないという信頼。男女を問わず、多くの人が――その精神構造が人と言えない別の生き物である魔法使いたちですら、彼に魅了されていくのも仕方がないと思ってしまう器の大きさ。やっぱり、アストラルの社長はこの少年でないと。穂波が、卒業を口にしたのもよくわかる成長ぶりです、ほんとに。
だからこそ、彼のいないアストラルは、もはやアストラル足りえないわけで。社長として、皆に支えられながらも、今や明確に皆の支えとなり拠り所としての存在感を示しているいつき。彼がそれだけの存在になったからこそ、今回の話になるんだろうなあ。

以前の葛城の地での鬼の祭りと同じような展開をたどるかと思われた今回の話。もちろん、そんな単純な話をなぞるような展開になるはずもなく、今までに類をみない、今度こそ本当に最悪で最大のピンチが<アストラル>を見舞うことに……。

いや、今回の窮地はいったいどう対処したらいいのか、さっぱり見通しが立たないんですけど。もちろん、話の展開もまるで予想がつかないわけで。個々の登場人物がどう動くのかも、事が此処に至ってはいったいそれぞれどうするのか。最近、穂波に対して心なしかアドヴァンテージを得ていたアディは、それが完全に裏目に来た感があるなあ。彼女が彼女である限り、今回に限っては本気で雁字搦めだぞ。
あらゆる意味で、アストラルが試される時が来たわけだ。