スクランブル・ウィザード3 (HJ文庫)

【スクランブル・ウィザード 3】 すえばしけん/かぼちゃ HJ文庫

Amazon


いやいやいや、この表紙。月子がきちんと小さいのはいいんですけど、これは小学生というよりも単なるSDキャラじゃ…(笑

本編の方だけど。今からもう一度一巻読んだら、十郎の変化は大変な代物なんでしょうねえ。あれだけやさぐれてて、退廃的・厭世的だった男が、今やぶっきらぼうながらも子供たちの家族環境にまで頭を悩ませる立派な先生ですよ。
正直、月子との関係性から多少まともな人間性を取り戻すことは想像できたけど、ここまでしっかりと先生するような男とは思っていませんでした。ごめんね、見誤っていたわ。きっと、元々は性格的にも生真面目でしっかりと目配りの出来る親切な青年だったんでしょう。それがあれだけ歪んでしまっていたのは、どう考えても問題だよなあ。
前々から思ってたんだけど、この作品における日本の魔法士という存在のぞんざいな扱い方には眉をひそめざるを得ない。社会的な認知度、危険性が指摘されているとはいえ、これほどの特殊な技能者たちだっていうのに、完全にただの道具扱いなんだもんなあ。
これだけ重要な国家財産を消耗物扱いするわ、変に特別扱いしているくせに、与えるべき教育や福祉関係、メンタルケアなどのソフト面をおなざりにしているようにしか見えなかったり、とか。
魔法士という特別な存在に対しての、もっと効率的な、狡猾な、ロジカルな利用の仕方というのがあるだろうに。
まったく、粗雑で頭の悪い扱い方に、溜息しか出てこないんですよね。別にここで人権問題とかを定義したいんじゃなくて、この人材の腐らせ方、間違った使い方、利用の下手くそさ、その他もろもろの酷さは……ううん、ある意味日本らしくて素晴らしいと絶賛するべきなのかしら。

なんにせよ、その国家の愚鈍さが、あのラストでの酷い有様をもたらしたというのなら、とにかく無性に腹立たしさばかりが湧いてくるんですよね。馬鹿が特に考え無しにやった馬鹿のせいで大事なものが壊されたら、なんかもう救い様がないじゃないですか。はぁ……。

なんとか、月子の親父殿のようなまともな政治家がまともな世の中にしようと努力している姿を見せてくれたからこそ、まだまだ希望はあるのかもしれないと錯覚できるのでしょうけど。でも、この親父殿だって人間としては最高でも、父親としては落第点しか与えられないですよ。まだ小学生の女の子に、彼の公明正大さなんてものは何の意味も持たないのですから。もし十郎に月子が逢わず、数々の事件による成長がなかったら、この父親の正しさは月子に歪んだ成長しか与えなかったのでしょうから。
今の月子だからこそ、この父親の正しさをまっすぐな成長の糧にしていけるようになったわけで。本来なら、段階的に父親が促していかなければならない成長だったはずなんですから。
……はぁ。

しかし…もし、十郎が月子と出逢わず、ラストの再会がなっていたらどうなってたんでしょうね。
結局は悲劇か惨劇かの違いか。

意外とこのラストの彼女と、能勢くんって表裏一体に見える気がするなあ。あちらとこちらを跨いで背中合わせにくっついた。
でも、案外普段からむちゃむちゃに暴走しがちな能勢の方が、肝心なところで踏みとどまることが出来そうな気がしてきたのは、この巻においてはじめて彼が見せた、あのちょっとした表情だったかも。

ちょっと面白かったのは、大祓のあの兄ちゃんの扱いでした。こういう、一度凝り固まった信念に暴走しながら、ふとしたことで自分を顧みてしまい、自分の在り様に迷いだす人って、好きなんですよね。しかも、立場的にかなり脇役の方にも関わらずw
晶との奇妙な協力関係もそうですし……今後、なんらかの大きな鍵を握るキャラになってくるでしょうか。だったら面白いんだけどなあ。