とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

【とある飛空士への恋歌】 犬村小六/森沢晴行 ガガガ文庫

Amazon


約束された悲恋か。
どうやら作者は、このシリーズにおいては徹底的に恋愛を成就させるつもりはないらしい。いや、恋愛の成就をたとえ一緒にいられなくても心さえ通じていれば良し、と定義するのならその限りではないのだろうけれど。

なんにせよ、過去に起こった革命の場で起こった惨劇がある限り、たとえカルエルが抱える暗い情念が晴らされることがあったとしても、カルエルが淡い慕情を抱いたクレアと一緒になることは、まずないのだろう。
お互いが惹かれあったとしても、お互いの正体を知ったとき、二人とも一緒にいることはお互いを傷つけ続けることになるのだろうし。そうなると、やはり結末は前作と同じ道をたどることになるのだろうけれど……はたして、過程は異なっても結末の形は同じ、というパターンを踏むかな。
それだと、いささか面白味に欠ける気もするのだけれど。でも、キャラクターの感情を考えると、どう考えても一緒になる、という結末だけは想像しづらい。
ここで気になるのは、義妹のアリエルなんですけどね。彼女の立ち回り如何で、話がどんな方向にも転がって行きそうで、なかなか恐ろしい立ち位置にいる娘だなあ、と。
配置的にはカルエルを掻っ攫われる場所に置かれたアリエルですけど、案外最終的にはカルエルのこと、捕まえそうな気もするなあ、この娘は。
相手の一番が自分じゃない、という事実を飲み込んでなお、諦めずに挫けずに、相手にしがみついていられるか、という執念みたいなものが彼女にあるかどうか、なんでしょうけれど。
まあ、カルエルもクレアにさえ出会わなければ、素直にアリエルに惹かれてる部分もあったわけで、眼中にもない、という最悪な状況でもないわけだから、あとは彼女の負けん気に掛かってるんでしょう。
ぶっちゃけ、カルエルの気持ちをくんで背中を押してやりながら自分は涙をのむ、みたいな出来た反応はこの娘にはして欲しくないなあ。

とりあえず、カルエルは確かに王族から転落して貧乏な家庭に転がり込むようになったわけですけど、お父ちゃんは頑固ながらよい人ですし、姉ちゃんズには猫可愛がりされるわと、お前甘やかされすぎだ!w
この王子様の、根っこの部分での増長しがちな性格は、王族としてちやほやされたからじゃなくて、むしろ後天的じゃないのかと疑いたくなるんだが(苦笑
でも、素直だし自分の現状をしっかり受け止めて、自分を助けてくれた家族に感謝を惜しまないその性格は、可愛いし善良だし、うん、生意気だけどイイやつだから、好感度は高いなあ。
ちゃんと旅立ちの時に、親父さんにああいう別れの挨拶出来るくらいだから、大した奴だと思うよ。
悲劇的な別れ方をしたとはいえ、最期の瞬間まで母親から十分な愛情を与えられ、新しい家族にも愛情を以って迎えられて育てられたんだから、この青年にはしっかりと幸せになって欲しいのが本音なんだけど。