イスカリオテ〈2〉 (電撃文庫)

【イスカリオテ 2】 三田誠/岸和田ロビン 電撃文庫

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うおっ、展開に一切躊躇がないッ!?
ジリジリともったいぶらず、アクセル全開で煉獄への道に主人公たちをたたき落としにきましたよ。
朱鷺頭玻璃に秘められた爆弾の存在を、一巻では秘匿せずにイザヤに突きつけてきたわけですけど、まさか速攻でそれを炸裂させてくるとは。
その伏線の活用の思いきりの良さに、冒頭から呆気にとられる。ただでさえ、救世主の偽物を演じなければならないという状況のイザヤを、徹底的に追い詰めにきましたね、こりゃあ。

うーん、これは図らずもイザヤは【アンチクリスト】という立場に押しやられつつあるんじゃないだろうか。
双子の兄、救世主であり聖戦の英雄であった男の偽物を演じるイザヤは、本来は神を信じぬ無法者。その事実ひとつだけでも、信徒たちに対する裏切りだと言えるのに、彼は禁断の存在によって力を得ることになる。彼の眼の前に現れた玻璃の中の謎の存在。その名は【バビロンの大淫婦】。
神に与えられるべき奇跡を、彼は邪悪なるモノの助力によって起こすことになるわけで、これはどう考えても救世主の再来とはいかないんだよなあ。
【バビロンの大淫婦】が本来指し示す比喩の形を考えても、彼女によって力を与えられた存在は、反救世主たるアンチクリストとして成り立つ道が敷かれている風にしか見えない。
とはいえ、それがはたして聖霊教にとっての邪悪だとしても、【人類】にとってはどうなのか、がまた考え所なんですよね。
神を信じないイザヤだけど、【ベスティア】の狂気を嫌悪し、その脅威から自然と身近な人々を守りたいと考え、無力な偽物であることに苦悩する、人間として当たり前の善性を持った青年なんですよね。
そもそも【大淫婦バビロン】というのはローマ帝国の暗喩とも言われているそうで、信徒から見たら悪だとしても人類という括りから見るならば、その存在は決して悪ではないんですよね。
……まあ、この作品中の彼女の言動を見る限り、その性はまったくの邪悪と言っていいわけで。この辺は頭の悩ませどころなんだけど、彼女、邪悪そのものではあっても、とてつもなく魅力的でもあるんですよね。もしかしたら、彼女こそ正ヒロインなんじゃないかと疑ってしまうくらいに。
今のところ、彼女が【獣・ベスティア】とは決定しておらず、彼女本人も正体が分からない未知の存在であるがゆえに、今後の展開次第で最悪のラスボスにも、最大の味方にも転がりそうな、非常に面白い立ち位置にいるキャラクターになっている。
とはいえ、大淫婦バビロンはアンチクリストその人によって滅ぼされる、とも記されているので、その辺の解釈をどんな風に用意しているのか。
単純にバビロンを個人名として規定しているのではなく、その名が暗喩するように、それを都市と捉えれば、玻璃という一人の少女が権威を振るう御陵市の事とも受け取れますし、また教会そのものを指しているのだという解釈もあるそうですから、最終的に敵味方の定義がひっくり返る、なんて展開も予想し得るのかもしれません。
今回登場した新しい修道士の在り方を見てると、なかなか教会側も油断できない組織みたいですし。
どちらにせよ、本物も偽物もない自分自身の在り方を見出したイザヤ。その彼を勇哉として認めるノウェムという存在がいる限り、彼は彼の信じる道を進むんでしょう。たとえそれが、アンチクリストの道だったとしても。

にしても、ノウェムの可愛さは尋常じゃないなあ。可愛いよ、可愛いよ。
三田さんはもう、ヒロインを可愛く描くという事に関しては抜群の腕を誇るようになっちゃったなあ。人形でありながら、全然人形っぽくなく、とっても女の子らしいんですよね。いや、単純に女の子らしいというのとは違うんだよなあ。自らを人形と規定しているが故の、純心無垢な献身と、人形として矛盾する心の動きに戸惑いながらもどこか嬉しそうな、そんな姿が爆発的な魅力となって炸裂してる感じ。正直、たまらん。
妖女バビロンも、あの邪悪さが逆に魅惑となって作用してるから、こっちも強烈な対抗枠として伸びてきそう。その分、玻璃が今回は割りを食った感があるけど。
でも、イザヤはわりとノウェムに夢中っぽいんですよね。本人がどれほど意識してるかわかんないけど。

気になるのは、カルロ神父の目的なんだよなあ。この人が一番何考えてるのかわからん。まだまだ判断材料が足りないんですよね。この人の場合は敵に回っても味方に居座っても、面白そうではあるんですけど。
どっちにしろ、イザヤはヒドイ目に遭うんでしょうけどねw