オウガにズームUP!2 (MF文庫 J ほ 1-5)

【オウガにズームUP! 2】 穂史賀雅也/シコルスキー MF文庫J

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前作の【暗闇にヤギを探して】でもそうだったけれど、穂史賀作品における自分の気持ちを自覚した後の、主人公の迷いのない果断さには目を見張らせられる。自分の尻尾を追い回してその場でグルグル回っているようなはっきりしないラブコメの主人公を多く見てきたせいだろうか。その果断さ、率直さには、清々しさを覚えるのだ。つまるところ、非常に好感が持てる。
と、言ってもそこに至るまでの彼――ユージの現実逃避は見苦しいの一言なんですけどね。彼の場合はあれだね。自分の気持ちがはっきりしない、というのではなくて、明らかに明瞭な答えが自分の中にあった上で、必死にそれを否定しているような感じ。まあ、この作品の初っ端が、僕はロリコンになりたい、だもんね。ロリコンじゃない身の上としたら、クルルみたいな外見幼女が、突然嫁なんていう立場で傍に寄り添われたら、そりゃあこう、なんというか、現実を認めたくなくなるのも仕方ないっちゃ仕方無いのよね。その現実否定が、段々とクルルを好きな自分の否定にスライドしていたのは御愛嬌。
まあ、もともとクルルのことは可愛いと思ってたわけだし、ロリコンになってしまえば彼女の事を素直に好きに思えるのになあ、なんて思ってたわけだから、一旦自分が彼女が好きなんだ、と納得してしまえばグズグズはしないわなあ。と、ここで納得してからすぐさま彼女に素直にそれを伝えるあたりが、ユージの非凡なところというか、このサバサバとして捉えどころのない少年の特異なところだよなあ。
で、こいつが実際にロリコンになってしまったからクルルが好きになったのかというと、実際本物のロリコンが登場してクルルに接近してきたおかげで、上手いこと対比して見せてくれたとおり、微妙にやっぱり違うんですよね。あくまでアイスクリーム王子の方は、クルルの容姿が自分の好みに合致したからのアプローチであり、まあロリコンという普通とは言えない性癖に悩んでいた王子からすれば、外見と年齢の合致しないクルルのような少女が現実に存在して自分の眼の前に現れたことそのものを運命に感じるのも、彼の苦悩の境遇からすれば共感を覚えないこともないんだけれど。でも、やっぱりユージのそれとはちょっと違うんだよなあ。この辺は読んでての微妙な感覚に頼らざるを得ない差異なんだけど。

しかし、これラブコメとしてはこういう展開はどうなんだろう。ユージって、性格的にちょっとやそっとじゃブレないですよ、これ。あんまりテンションに抑揚のないタイプだからか、あんまり揺さぶりには動じそうに見えないんですよね。ほかの女の子が寄ってきても、ほとんど華麗にスルーしそうで(苦笑
宮内さんは非常に頑張ってるんだが、ユージは明確にクルルと彼女に差をつけちゃったからなあ。どう頑張っても歯が立ちそうにないんだけど。
とはいえ、ラブコメとして終わっちゃったのかというと、そうとも言えないんですよね。ユージとクルルの関係が鉄板になってしまったのは置いておいて、この第二巻で脇に配置されたクラスメイトたちのピックアップに印象強化がなされた上で、恋愛群像劇みたいな雰囲気が広がり始めてるんですよね。変に夜の世界の勢力事情を中心に据えた第一巻と方向を捻って、学園内の恋愛模様にスポットを当ててきた感があって、ちょっとこの辺、どうなるのか楽しみだったりする。吹奏楽部の女の子たちとか、クルルの友達たちと、ユージの友人たちの鞘の当て合いとか、ねえ。
ま、男連中の無神経さは、女性陣が怒るのも仕方ないなあ、と苦笑がにじんでしまうけれど。でも、激しい反発の中からこそ、面白い恋愛模様が浮かび上がってくるわけで。クルルとユージの仲の進展とともに、そっちも大事に転がして行ってほしいなあ、と期待してます。