カンピオーネ!〈3〉はじまりの物語 (集英社スーパーダッシュ文庫)

【カンピオーネ! 3.はじまりの物語】 丈月城/シコルスキー スーパーダッシュ文庫

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いやー、自分、ちょっと勘違いしてたかもしれない。エリカと護堂の関係だけど、エリカの方はベタ惚れでも護堂の方はまだ惹かれてはいても、本当の意味でエリカに恋愛感情を抱いていないんじゃないかと疑ってたんだが。
二人の出会いのエピソードを見る限り、これって実は護堂の方が一目惚れだったんじゃないのかしら?
もちろん、一目見た瞬間から恋に墜ち、心奪われた、なんてことじゃないんだろうけど。まあ、この辺は異論反論あるだろうし、自分も自信ないので強く主張は出来ないけど。実際、このあと大喧嘩がはじまって第一印象最悪になってしまうわけですからねえ。

とはいえ、現在のエリカに迫られてる状態に対しての護堂の本音を見てると、とりあえず護堂は護堂でエリカに惚れてるのは間違いなさそう。既に陥落寸前だし。自分が彼女に惚れてること自体も、ある程度認めてるみたいだし。
それでなお抵抗を続けてるのは、彼自身が主張している「二十歳にもならない若い身空で将来を決定づけられたくない」という理由以上に、この少年の負けず嫌いな部分が作用してるんじゃないのかなあ。
話を追ってくと、物事に対して客観的に見ているようで内面的には非常に負けず嫌いな性格であることが明示されてるわけです。そんな彼が、エリカの強圧的な好意の猛襲に対して、無様に屈し籠絡されメロメロの幸せ状態に墜ちてしまうことを、素直に受け入れられないんじゃないかと思われるわけです。形はどうあれ、それはエリカに「負け」てしまうことになりますしねえ。だから、ああやって無駄な抵抗を続けているわけで。
この二人の関係が苦笑モノなのが、どうやらエリカはエリカで無意識か意識的にかはわかりませんけど、護堂がどうして自分の行為を素直に受け取らないのかを理解しながら、敢えて強硬に押しまくっているところでしょうか。
この少女、エリカはエリカでとびっきりの負けず嫌いなんですよねえ。だからこそ、真っ向から護堂を誘惑し籠絡し、首根っこをねじ伏せて自分の行為を受け取らせようとしている。護堂が抵抗するもんだから、余計に喜々として。
これって、形こそ変ですけど、相思相愛の恋人同士がイチャイチャしてるのと大して変わらんよなあ(苦笑
この二人の関係って、ちょっとエリカが引いて見せたらすぐに決着ついちゃう関係ですよ、っていうのは前巻でも言ったか。エリカがそういう態度見せたら、絶対護堂はあわててエリカのこと追いかけてくるに違いないんだから。この野郎は迫ってくるから逃げてるだけで、実質エリカにベタ惚れなんだから。この、贅沢なやつめ。
でも、エリカは明らかに今の状態を楽しんでるからなあ、始末に負えない。

と、二人の関係についてツラツラと書いてしまったわけですが、話の方は何の力も持たない一般人だった護堂がいかにして神を殺し、カンピオーネとなったのか。いかにしてエリカと出会ったかの、はじまりのお話。
まあ、前々からなんの力ももたなかった護堂がどうやって神を殺したのか、という疑問も去ることながら、彼の性格からして神だろうとなんだろうと【殺して】【奪う】なんて行為がいささか不自然というか、似合わないものだったから、どうして神殺しなんて真似をすることになったんだろうと、不思議だったのですが……なるほど、実に彼らしい理由じゃないですか。
ヤバいなあ。やっぱり惚れそう。カンピオーネとしての力があろうがなかろうが、彼の本質は何一つ変わってないわけか。
彼が殺すことになる軍神ウルスラグナと護堂の不思議な関係。被害を食い止める、という倫理に基づく理由づけ以上に、護堂の中にあったのは独りの少女を守ることと、刹那の邂逅で育んだ友情と敬愛を大事にすることだったわけだ。
出会った当初は護堂の事など眼中になかったエリカ、というか感情的にはマイナスのところからはじまった二人の関係が徐々に狭まっていく描写も良かったなあ。
今となっては、護堂に対して気心の知れた態度を取るエリカだけど、昔の反発を覚えながら徐々に惹かれていく姿、照れたり怒ったり、自分の感情を持て余すような態度とか、なかなか新鮮でこれがまた可愛いんだ。
そりゃあ惚れるわなあ。なんの力も持たないくせに、たった独りで真っ向から神に挑む愚か者。エリカ・ブランデッリは傲慢で高飛車でプライドの塊みたいな少女だけど、その実弱きを助け強気を挫く、誇り高き騎士の中の騎士みたいな高潔な魔女であるわけです。そんな彼女であるからこそ、護堂みたいなバカには惚れちゃうよなあ、と。
今でこそ、隙あらば熱烈なキスを求めてくる彼女ですけど、最初は初々しかったのねえ。あれくらいで真っ赤になって照れまくる彼女というのは、何度見ても新鮮だ(笑

うーん、やっぱりこのシリーズは滅茶苦茶面白い。
次回、再登場の面々もいるようだし、まだ出てきていないやつらにもとびっきり癖のあるやつが多そうだし、何より個人的には神話解釈の蘊蓄話が面白くて仕方無い。さらに盛り上がってきそうだし、これからも期待大ですな。おすすめ。