機工魔術士 -enchanter- 19 (ガンガンWINGコミックス)

【機工魔術士 -enchanter- 19】 河内和泉 ガンガンWINGコミックス

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やっぱ、メルクーリオはかっちょいいんだよな。機工魔術士に登場する女性陣はなんだかんだとみんなイイ女なんだけど、その中でも一際際立ってるってのは凄いと思うんだ。悪魔時のメルの人気って大したものだったらしいから、それに取って代わって出てきた以上、半端なキャラクターじゃいられないというのもあったんだろうけど、本来なら被害者にも関わらず、悪魔メルと親しんだ人たちから見たら、悪魔メルを消滅させた加害者という複雑な背景を持つキャラという立場を逆手に取って、キャラ立ての錬磨がえらい深度になったからなあ。
この作者って、キャラの掘り下げに全くというほど手抜きせず、偏執的と言ってもいいほどその生き方の方向性を探究し続けていくもんだから、キャラの立脚点の難易度が高けりゃ高いほど、物凄い事になっていくんですよね。メルクーリオやパラケルススはその典型。晴彦の場合は主人公だし、リアルタイムで難易度乗数倍されていったからこそ、クライマックスのあの盛り上がりになったんだろうしね。
サディストで傍若無人、天上天下唯我独尊を地で行くようなメルクーリオだけど、まいったことにこれで面倒見が吃驚するくらいに良かったり、気遣いや繊細な心配りが尋常でなく行き届いていたり、パラケルススの善行が本質的に我儘に基づいているのと少し違って、こっちは素直に「本質的に優しい、良い人」なのは、多分間違いないかと。その発露の仕方が横暴だったり嗜虐的だったりするのは、まあ性格的なものもあるんだろうけど、なによりその多大な自信が振る舞いや行動に他人の有無を一顧だにしない態度に表れてるんだろうなあ。自分の生きざまに確信を抱いた上で邁進しているというか。それでいて、カリオストロみたいに近視眼的な自己中に陥っていないのは、自分の生きざまに確信は抱いていても、それを絶対ししていないところか。一顧だにしていないようで、他人の考えや感情を実に丁寧に汲み取り、自分の考えの一方的な押し付けではない、相手を尊重した手助けをしてくれるし。まあ、譲らんところはこれっぽっちも耳貸さないで譲らないみたいですけどw
自分の確信が確定的なものではなく、あくまで過程。自分が成長途中であるものだと自覚しているのも、その柔軟性の正体か。今回の話<エチカ>なんか、その集大成みたいな話だもんね。よくもまあ、これほど【メルクーリオ】そのものな話、組み上げたもんだと呆気にとられる。
よっぽどの自分の作ったキャラクターを隅々まで理解してないと、こういう出力の仕方はできないと思うんだけど。骨先生のエピソードといい、十全に自分のキャラクターを(しかも生きたキャラクターを)掌握しきってるのは、ほんとにすごいなあ。

ちなみに、私、カコ姉が大好きでござんすw
あそこまでカッ飛んだキャラも、そうそうお目にかかったことはござんせん。
マナに、しっかり失恋させたか。結局、随分出番目減りしちゃったけど、うーん、もう少し活躍させてほしかったかなあ。押しが足りなかったな、押しが。


んで、最後の最後のエピソード。
ユウカナリアは、こっちは失恋じゃなくて別離の物語か。あれは空気読んでるようで、全然読んでないよなあ。バカだなあ(苦笑
フルカネルリとの別離を現実のものとして飲み込んだら、晴彦から離れようとしてしまうあたり、結局のところフルカネルリ=晴彦という認識が根っこのところにこびりついてたってことなんでしょうかねえ。別に、ユウカナリアと晴彦の絆が、フルカネルリとの別離によって断たれるわけじゃないのに。
いや、正しい男女関係を考えるなら、無事に結ばれた晴彦と優香姉からユウカナリアが離れるというのは、当然のことかもしらんのだけど。ユウカナリアが離れようとした理由は、どうもそういうのとは違ったっぽいし。
二人とも、お互いの関係についてはっきりしないことで納得しちゃってるんだけど、あのシーン、なんか好きなんですよねえ。何事も明瞭にすりゃいいってものじゃなくて、なんとなくそこにあるものとして曖昧なまま捉える結論、というのも、むしろ良かったなー、と思うわけですよ。
変に三角関係にせず、こういう着地点としたのは、この作品らしくて良かったなーと。

うん、こういう小難しく物事を掘り下げて、グルグルぐにゃぐにゃ捏ねまわして造形していくような作品って、苦手な人もいるかと思いますけど、私にとっちゃびっくりするくらいに性に合って、つぼにはまる作品でした。巻を重ねるごとに読んでるこっちのテンション青天井だったしなあ。
最高傑作でございましたよ。ごちそうさまでした。お腹いっぱいです、ありがとうございましたっと。

7月には新作も出されるみたいだし、楽しみ楽しみ。