鋼鉄の白兎騎士団 VIII (ファミ通文庫)

【鋼鉄の白兎騎士団 8】 舞阪洸/伊藤ベン ファミ通文庫

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ついに呼び名が暗黒大魔王にまでクラスアップしてしまったか、ガブリエラ(笑
しかし、なるほど。今回のコリントゥス国に訪れた危機に際してガブリエラが見せた作戦指導は、これまでの戦術規模のそれと大きく違って、限定戦争という戦争規模を最大限に利用し、政戦略を駆使した代物になっている。剣を打ち合わせるもの同士、つまり現場を出しぬき状況をひっくり返すものではなく、今回の事件の背景にいるベティス大公国とイリアスタの国力や国際状況、コリントゥス近郊の諸勢力の思惑、白兎騎士団の名望、その他もろもろの幾多の外交カードを睨み、効果的に利用することで望むべき状況を構築するという、非常に政治色の強い作戦だったというところが非常に興味深い。
作戦を立案したガブリエラが現場にいるから惑乱させられることだけど、今回の作戦の主体というのは、現場そのものはあんまり関係ないんですよね。重心はあくまでもっと高い所にあったわけで、だからこそ今回の事件、見た目の派手さは非常に少ない。ただし、政戦略レベルで今回の作戦を見てると、物凄いアクロバットの連続で、確かに蜘蛛の糸の綱渡りなんだけど、非常に効果的で冷徹なロジックに基づいている。
流血沙汰にならなかった、というのもある意味当然。ガブリエラはこの一件を、武力衝突に至る遥か手前の段階で、完全に相手の統合戦略を叩き潰してしまったわけですから。
彼女の怖い所は、その政戦略のベットに自分や仲間の命を平然と賭けてしまえるところなんでしょう。ここで敵さんが当たり前の損得勘定も出来ない、論理的な思考の出来ないバカモノ揃いであったなら、あっさり彼女らは殺されていたわけですし。
ただし、そうなればイリアスタは外交的に致命的といえる大ダメージを受けるでしょうし、。コリントゥス国王個人は消されたとしても、ベティス公国としては将来的にはこの地域全体に多大な影響力を及ぼすことが出来る結果になる、という意味ではある意味ガブリエラには今回、負ける要素がなかったとも言えるわけで。
まあ、彼女の才覚を見れば、ここで彼女が死ぬことそのものが、後々にみたらイリアスタなどの敵性勢力からすれば、より良い結果だったという見方もあるのかもしれないですけど。

そう、ここでガブリエラが見せた才覚というのは、明らかに一騎士団員のそれではなく、はっきり言って番隊隊長という戦闘指揮官の器ですらない。作戦参謀ですらまだ足りない。明らかに騎士団という他の国に対して強い影響力を及ぼす力を持つ組織を動かすに足る、国家戦略を編める人材だということを示しています。
これまでは、レフレンシアがガブリエラを自分の上の団長に据えたのか、いまいちわかんなかったんですよね。たびたび政治的なセンスを見せていたものの、これぐらいだったらレフレンシアが団長で、ガブリエラが副団長でもいいじゃないか、と。
でも、今回のガブリエラの動き方を見てたら、ある程度なるほどと納得させられてしまいました。これなら、レフレンシアが横に従えてガブリエラを働かせるより、ガブリエラを上に据えてレフレンシアが脇から強固にサポートした方が、組織の稼働力がより効率的に、ダイナミックに動きそうだ。

この作品の面白い所は、変に万単位の大軍団を動かさず、百から千単位の規模で描いているところだよなあ。火魅子伝でもそうだったけど、なかなか興味深い所。
ドゥイエンヌが騎士団を離脱することになる理由も、どうやら見えてきたし。個々の事変は解決しつつも、連鎖的に戦乱の機運は高まってるし。
うん、どんどん事が大きくなってきて、やっぱり面白いなあ、これ。

個人的にはアスカさんが大のお気に入り。どうやら、この人もどっぷり足を突っ込んだまま離れられなくなるみたいだし。ああ、可哀想に(笑