アニスと不機嫌な魔法使い3 (HJ文庫)

【アニスと不機嫌な魔法使い 3】 花房牧生/植田亮 HJ文庫

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ヤバい、ビアンカがかわいい。異常にかわいい。本気で年頃の女の子みたいじゃないか。
風の始原魔導師ジュリ・メイガスという希代の魔術師。本来ならシドやセイ・ノーマンに並び立つだけの超一流の魔法使いなんですよね、彼女。だから、当初はアニスに構ってくれるのも彼女なりの何らかの思惑があってのことかと疑っていたのですが、二巻での親身な友達振りやこの巻での体を張って彼女を守ろうとする姿勢を見てると、本気で親友として、それも対等で目線の上下のない、本当に同世代の女の子同士の接し方で、アニスと付き合ってるんですよね。変に大魔法使いとしてよりも、それはアニスにとって頼もしい存在感だったりするんだよなあ、これが。
すぐに妄想モードに入って本筋から逸脱し、悪気なく天然で破天荒な行動に出てしまうアニスを、あわてながらも嫌な顔一つせずせっせとフォローして回ってるあたり、根っから世話好きというか、案外苦労性なのかもしれないですけど。
それにしても、二巻では席を外していて居なかったビアンカの思い人、ジークが今回は常に行動を共にしているので、ビアンカの反応がいちいち可愛らしい。ジークの竜馬鹿度合が度を越しているせいか、こいつのドコがいいんだろうと多少首を傾げたくもなるところだけど、彼の反応に一喜一憂し、わりと手玉に取ってる素振りをみせたと思ったら、彼の馬鹿さ加減に振り回されて拗ねたり落ち込んだりへこんだりw
わりと何が合ってもめげたり落ち込んだりせず平然としてるアニスと比べて、ビアンカってけっこう落ち込みやすかったりするのね。実力的には飛び抜けた魔法使いなんだから、もっと超然としてたらいいのに、魔法とは関係ないところはまるで普通の女の子らしくて、ううんやっぱり可愛い。
今回はビアンカの恋のライバル的な少女も出現して、立ち位置的にも大変美味しくなってきたし、これはビビッときましたよ(笑 

さて、アニスとシドの奇妙な親子関係は、段々とですが成熟の度合いを増しているようで。シドもアニスの扱いになれたというか。前はもっとうんざりとして不機嫌になっていたところが、逆に喜々とアニスの言動を捕まえてイビリ倒しているあたり、彼なりにこの関係を楽しみだしているのがほのかに伝わってくるわけです。
機嫌がいいほど意地悪になってくるというのはアニスの分析ですけど、言い得て妙かと。
当初は姿形だけ幼くて、中身は非常に老成した人物かと思っていたのですが、今回の父親に対する執着と劣等感や、旧友との再会で機嫌を良くしている様子というのを見ると、彼も単なる人間であり、どこか容姿に沿うような精神的に成長しきっていない部分もあるのが見えてきて、なんだか余計に魅力的に見えてきました。
アニスもなんだかんだと、シドのことを心底から慕っていますし。
最後のシドに対する無邪気な、でも無視できない強固な意志を含んだ宣言は、だからこそ胸に来るもので……。
二人の関係は義父と養女なわけですけど、やっぱり親子とは違うんですよね。シドを親と思っているならあんなセリフは出てこない。でも、二人はもうすでに誰にも否定できないくらい絆で結ばれた家族であることも間違いんですよね、あのセリフを見る限りは。
シドにとっても、アニスはかけがえのない存在になっている。
今のところ、そこに恋だの愛だのといった異性間の感情があるかどうかは定かではありませんし、二人の関係を見ているとそういうのはまだ無粋だな、と思えるようなものなのですけど……見ていて、いいなあ、なんて感じてしまうんですよね、この二人。
代理公やムルタン老の言うように、ほんと、お似合いだわ。