断章のグリム〈10〉いばら姫〈上〉 (電撃文庫)

【断章のグリム 10.いばら姫(上)】 甲田学人/三日月かける 電撃文庫

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ほんとに、もう、勘弁してつかーさいogz
今回のグロさは、とびっきりもとびっきり。もう、うわー、である。うわーー。悪寒が止まらない。これ、夢に見そう。勘弁して。
罷り間違っても、この作品だけは映像化はしない方がいいなあ。いや、それともこの人の書く文章だから、これだけ怖いしグロいのかもしれないけど。
夢見子と目が合う瞬間の描写なんて、それ自体は映像にしても大したことないんだろうけど、文章で読むとめちゃくちゃ怖いんだよなあ。

今回はいばら姫、ということでもう明らかに痛そうなことになるの間違いなし、と気構えはあったんだけど、中に入ってくるんじゃなくて中から生えてくるとは予想してなかった。うう、夢に見そう。うええ。
舞台配置も、今回は大胆に敷いてきましたね。閉じ込められてた閉鎖環境、次々と襲いかかってくる怪異、と完全に今回は余裕なし。雪乃の能力も、この空間のおかしな作用のおかげで普段のような切り札になり得ず、御蔭で彼女の精神面もえらい事に。
登場人物が限定されているだけに、配役も分かりやすそうなものだけど……前回の【なでしこ】が敢えて明快な配役だったのに比して、今度のは何が何だか。いばら姫の童話に秘められた寓意も、まだ解釈は端緒に取り掛かったばかりだし、真喜多家での問題といばら姫がどうつながるのかも、今のところ取っ掛かりが見えないし。追い詰められているわりに、それとも追い詰められているからこそか、泡禍の解体がまるで進まず間断なく襲い来る怪異に絶体絶命に追い込まれていく様は、今までにない切羽詰まった瀬戸際感がある。
この作品の場合、誰が犠牲になるかわかったもんじゃないからなあ。ホラーにおける定番はまるで当てにならないし。だいたい、セオリー通りなら一番最初にやられるのはこっちじゃなくてあっちでしょうに。普通なら一番考えにくい立ち位置にいるやつからあんなことになるんだから、油断のしようがない。

それにしても、いつもにも増して雪乃の精神面が不安定だ。切り札である彼女の憎悪の炎が現状で役に立っていないというのは、それほど彼女の存在意義を揺るがしたのか。これまででは考えられないくらいに、蒼衣のことを考えてるんですよね。蒼衣への嫉妬、劣等感。怪物であることを自身に求めながら、この場において切り札として機能するのは普通であろうとする蒼衣であることが、彼女を揺るがしまくってる。
もっとも、雪乃も神狩屋も、というか作中におけるほぼ全員が、蒼衣こそが普通とは程遠い異常性を秘めていることに気がついていないのが、そら恐ろしいわけです。
なでしこの時もぞっとさせられたけど、今回もところどころ明らかにおかしいんですよね。風乃は気付いてるんだろうか。

息を抜く間のない緊迫した展開続きで唯一、ホッとできた瞬間が雪乃が「殺すわよ!」と言うところというのは、なんなんでしょうねえ(苦笑
もちろん、雪乃の照れかくしというか、複雑な感情の発露を示す言葉ゆえであることもそうなんですが、この「殺す」という言葉の、本来なら物騒極まる意味が、この作品では非常に即物的で、現実的で、人間的なものだからというのもあるんじゃないかなあ。悪夢が現実に浮きあがってきたようなこの常軌を逸した状況の中で、彼女の発する殺すという言葉は、むしろ常識的な自分たちがよく知っている地に足のついた世界を連想させて、どこか安堵を誘うような、そんな解釈をしてみたり。
どれだけ異常なんだよ、まったく。


そして、ラストのあまりにも予想外の人物の再登場。そういえば颯姫がここまでまともに泡禍に巻き込まれたのは初めてだったっけ。あの服装の描写と、颯姫との関連性から、出てきたのはまずあの人で間違いないはずなんだけど……なんで、ここで出てくるんだ!?

あと、あとがきの渡瀬さんとのやり取りには吹きだしましたw
この人、私生活でも恐ろしいヒトやぁww