迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの (GA文庫)

【迷宮街クロニクル 2.散る花の残すもの】 林亮介/津雪 GA文庫

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この表紙絵の人物、最初に見た時はぼんやりと葵かなー、と思ってたんだけど、よく考えると全然デザイン違うじゃないですか。で、誰かなーと思って本分読んでようやく理解。
なるほど、鈴木秀美かー。そういえば、奥で絵を描いてるのって、今泉くん以外の何者でもないものね。実のところ、秀美ちゃんは快活な少女というイメージこそあったものの、その方向性は短髪で世の中舐めてそうな猫系女子高生というものだったので、ポニテという意識が全然なかったせいか、まったく思い浮かばなかったや。
と、登場当初は友達へのメールに象徴されるように、大人も世界も何もかもを舐めてみていた秀美ちゃん、外面は良かったもののあんまり印象は良くなかったんですよね。才能が際立っているが故の傲慢と、それを上手く隠している如才のなさがなんとも、ね。
まあ、メールで友達に見せていた顔が素顔かというと、そんなこともなかったんだろうけど。本音と本心はまた別ですしね。心で舌を出していても、良い子に見せている外面がまったくの仮面でいられるわけでもなく、付き合いが長くなるにつれて、段々とその外面と内面が混じりいってくるのも人間関係の面白い所であるわけですし。
その意味では、ルームメイトの落合さんや真雪さんに可愛がられ、小林先生と仲良くなり、今泉くんと異性のドキドキを共有するようになっていたクリスマス前の秀美は、この段階でも決して悪くない成長を続けていたんでしょう。
もし、この後の惨劇がなかったとしても、この娘は自戒を覚え、他人を尊び、自分の傲慢に足元をすくわれることのない人生を送れたような気がします。
それでも、残酷に運命は彼女をどん底に叩き落としてしまうわけですけど。

こっからの彼女、実は登場人物の中でも特に好きな一人になるんですよね。痛みを知り、地獄を見せられ、大切な人を失って、それでも目をそらせない尊敬すべき人の生きざまを目の当たりにし、その光景を糧として新たな自分として生まれ変わり立ち上がる。
頑張れ、頑張れ、女の子。


しかし、読んでると思いのほか書き下ろしの部分が多くて、これは嬉しい所だなあ。津差さんのシーンなんか、だいぶ増えてるんじゃないのかい? この人はもっと泰然としたイメージだったので、こんなグルグルと考えてあんまり良くないところに潜ってしまっていたこともある人だということは気がつかなかったな。
みんな、何がしかドロっとした闇とも影ともつかないものを胸の奥で淀ませている中にあって、真壁ってこうしてみるとやっぱり変なヤツだわなあ。何で皆がこの男に一目置いているのか、言葉にするのは非常に難しいんだけど、読んでたら一目瞭然ではあるんですよね。
独り、とらわれていない、といったところか。

さて、今回は翠よりもむしろ葵の方が目立ってたと言うか、人間関係のグルグルの中で活躍していたというか。このあたり、だいぶ書き下ろしの部分あったんじゃないかな。恩田くん関係のところで、真壁と葵のあのシーンはちょっと記憶なかったし。
描き下ろし部分のことごとくが、グッとキャラクターに深度を与えるモノになってて、うん、これは加筆されてて良かったなあ。

と、次が最終巻になるのか。