影執事マルクの天敵 (富士見ファンタジア文庫)

【影執事マルクの天敵】 手島史詞/COMTA 富士見ファンタジア文庫

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うわっ、やべえわこれ。三巻に至ってますます面白い。べらぼうに面白いや。大好きだわ、これ。

一巻二巻で丁寧にマルクとエルミナの主従関係を描いたところで、この三巻ではアイシャを中心に、増えてきたレギュラーたちにスポットが当たったといったところでしょうか。
元々、マルクとエルミナ以外のキャラクターもキャラ立ってると思ってましたけど、こうして焦点をあてた状態で動かしてくると、想像以上にみんな存在感あるいいキャラクターなんだわな。それに、今回なんかあっちこっちであのキャラ書いて、このキャラ書いてと群像的に描いているにも関わらず、話の密度が散逸せず話の筋もブレず、これも考えていた以上に話運びが上手い事に気づかされる。
だいたい、起こってる出来事自体は決して大事件というわけじゃないはずなのに、様々な要因が有機的に絡まり複雑に発現することで話自体がダイナミックに動いていく、このストーリーテイリングの巧妙さには目を見張るものがあります。
とにかく、面白いんだわ。ぐいぐい話に引き込まれていくこの吸引力は素晴らしいの一言。

今回、マルクの兄登場、なんて大々的に帯やら粗筋やらで宣伝していたから、お兄ちゃんがメインの話になるのかと思ったけど、そうでもなかったなあ。というか、上でも書いたけどアイシャの話が本流ではあるものの、今回は流れる川が幾筋もあった感じ。

契約者の抱える闇。精霊と契約することで異能の力を得る代わりに、何らかの対価を払わなければならない契約者。その対価ゆえ、もしくは得てしまった力そのものゆえに、契約者というのはそれぞれ何らかの闇を抱えているものだといいます。もしくは、闇を抱えていたからこそ契約者などという道に踏み入ってしまった、という人もいるのでしょう。
敵として現れた時のカナメなど、その典型でした。彼女は幸いにも、マルクとの戦いを通じて彼女を雁字搦めにしていた闇の呪縛から解かれ、エルミナとの契約によってその身を苛んでいた対価も解消することができたわけですけど。
でも、同じくエルミナによって対価を解消しながらも、なお闇を抱えていた子がまだ近くにもいたわけです。アイシャ・クラン・ウィード。先住民の一族である彼女は、幼いころに街一つを住人ごと消し飛ばす、という拭い去れない罪業を背負っていました。エルミナに拾われることで、笑顔を取り戻した彼女ではありましたが、その過去は失われることなく彼女の中に大きな傷として刻まれていたわけです。
その過去が、一人の少年の姿を纏って追いついてきた。
これは、アイシャという少女の過去との対決を描いた物語でもあったわけです。……これ、ラストの彼の独白を読むと、敢えて彼女に決着をつけさせにきた、ともとれるんですよね。そりゃ、こいつが事態の張本人と言えるかもしれないけど、近年稀に見るほどしっかり責任取りやがったなあ、とこの部分を読んだ時には感心させられました。真実を一切悟らせることなく、役を演じきったその気概は、なりはガキでもいっぱしの男だよ、あんた。

一方で、アイシャの出自に関しても一連の出来事を通じて明らかになってきたわけで。なるほど、アイシャの方だけじゃなくアルバの方も気がついていなかったわけか。それで、どうにも微妙に余所余所しかったわけね。
この男も、憎まれ口ばっかり叩いて嫌味ったらしい野郎だけど、どうにも憎めないんですよね。先住民の出身のくせに、マフィアのボスにのし上がったのもなんか理解できる、妙な愛嬌があるわけで。ちゃんと筋通すところは通すし、意外と律儀だし、マルクは毛嫌いしてますけど全体通して見ていると、非常に信頼できる人物だというのが伝わってくる。今回、結局アルバがエルミナと対立する要因、なくなっちゃったわけだし。今後も、何くれとなく土地の有力者として協力してくれる事もありそう。もっとも、利害によってはあっさり敵に回りそうでもあるけれど。でも、遺恨の残りそうな敵対はなさそう。
ところで、セリアって多分、アルバに好意寄せてるんですよね? いくつかの反応を見る限り、間違いないと思うんだけどなあ。アルバはまったく気が付いてないみたいだけどw
おかげで料理人ゲット(笑

好意といえば、カナメのマルクへの急接近にはびっくりした。何らかの好感めいたものはあるかとも思ってたけど、こんなにもはっきりと強く自覚した形で、マルクへの好意を抱いているとは。そりゃ、あんな誘われ方したら意識するなという方が無理だと思うけど、このヒト、男に免疫ないんだろうなあ。エルミナと契約するまでは対価のおかげであんなだったわけだし。
にしても、アプローチの仕方がダメすぎる、というか明らかに失敗してる(笑
マルク、ちゃんともしかして自分、好かれてるのでは? と気付きかけてるし、なおかつちょっと嬉しそうだったりドキドキしてたりと反応、まんざらでもなかったのに。むしろ、エルミナに対しては主従として徹しようとしているから、実際の惚れたはれたがあるかどうかはともかく、ロマンスとかの方角には意識がいってないんだから、チャンスは大いにあるっていうのに。
カナメ、自分で叩き潰してってますって、それ(苦笑
その誤魔化し方はマルクでなくても引くw ほんの数日前、何度も殺されかけた相手だし、なまじ本音入ってるから、大いに引くw
それで悟れとか察しろ、というのはちょっと酷だと私は思うヨ?
カナメさん、前回の大けがの影響で能動的には程遠い有様だったのに、さらっとした日常パートだけで大いに存在感示してきました。こりゃ、エルミナに対抗するヒロイン一番手は彼女で決まり、かしら。アイシャはおこしゃまだし、まだまだマルクとの間にフラグ立って無いし。

もう一人の新規参入組のアーロン。このおっさんも相変わらず独立独歩というか。本来なら重し的な役割をしてくれる大人の立場にあるんだろうけど、含蓄の在る言葉を吐いたと思ったら、けっこう好き勝手に動いて事態引っかき回してくれるので、案外重石にはなってないんですね(w
それでいて、芯が一本ドシンとまっすぐ真ん中通ってるし、誰に対しても円満に行くように善処してくれる、非常に信頼できる存在感ある人だったりするから、そんな人がフラフラ動き回るのってけっこう珍しいですよね。その分、面白いことになるわけですけど。
でも、この人けっこう親バカというか子煩悩ですよね(苦笑 意外と娘さんの方も親と対立しているわけでもなく、むしろ案外仲がよさそうなのには驚いたけど。

ドミニクさんは、絶対なんかあると思ってたけど、そういう方向性できたかー。
いやでも、そこまでいくと契約者だとか普通の人間とかいう範疇の問題じゃないと思うけどw

しかし、改めて見ると着々とエルミナが従える使用人の陣容がとんでもないことになっていっていることに気づかされる。
なにしろ、闇の世界でも最強クラスと謳われていた契約者たちが、執事やら料理人やら侍女やら裁縫師やら庭師やってるんだから。もはや無敵艦隊である。あげく、屋敷自体も鉄壁の要塞級の防御機構を備えてるわけだし。いったいどこの軍隊に喧嘩売るつもりだ、これ(笑