迷い猫オーバーラン!〈4〉みんな私が拾います (集英社スーパーダッシュ文庫)

【迷い猫オーバーラン! みんな私が拾います♪】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

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うーん、じんわりと心に沁み入る温もりかな。やはりこの空気、最高である。この雰囲気、好きなんだなあと改めて実感。
チームや仲間、親友同士というのとは少し違う、それこそ家族のような彼らの関係。それも、普通の家族モノとはちょっと違うんですよね。
血の繋がった家族のそれとは違う、一人一人孤独に生きてきた力のない存在が、寄り添うように集い、たとえ寒空の下でもお互いの温もりで温め合うような優しい関係。その意味では、このタイトルはまさにこれしかないと言わんばかりの最適さ。そしてなにより登場人物の一人一人を迷い猫と称してテーマに据え置いたのは、本当に見事だと思う。何を書きたいか、何を書こうとしているかが実に明快で、なによりそのテーマから一切ぶれず、フルスイングで書き切ってるもんなあ。
仲間内でもちょっと浮いた存在だった千世も、彼女自身が迷い猫として描かれ、迎え入れられてからは金持ちのお嬢様という位置づけにも関わらず、ストレイキャットの掛け替えのない家族として、違和感なく収まってるし。
今回、少しですけど家康と大吾郎、二人の男の親友たちがどうして巧とつるんでいるのかの心情も語られてるんですけど、こいつらもなんだかんだとストレイキャットの内側にいる連中なんだなーと。

そんなストレイキャットの大黒柱。みんなの中心、乙女姉さん。サブタイトルからして、今回は乙女姉さんのお話かと思ってたんですが、クリスとの並列になっちゃったかな。如何にして乙女が人助けをして回る人になったのか、という点はよくわかったんですけどね。でも、この人は足元がおぼつかないよなあ。理由はよくわかったんだが、それでも人助けのために弟たちに苦労を強いすぎている感があるのは否めない。一時期はストレイキャットそのものが潰れかけていたのをほったらかしにしていたわけだし。それでも、巧をはじめみんな、その乙女の人助けによって本当に助けられた人たちだから、そんな乙女を制止できないんだろうけど。いやでも、余裕出てきた最近こそおおらかに構えてるけど、ほんとにヤバいときは本気で乙女の人助け失踪に頭抱えてたからなあ、巧も(苦笑

クリスについて。可愛ければ性別はもうどうでもいいという境地に達しつつある今日この頃なので、ショタでも好し。唇にキスされてしまった巧を、うげげ、ではなく素直に特したなこの野郎、と思ってしまった時点で、いささかどうしようもない所まで至ってしまっていることに気がつかされる。まあいい。
不覚にも彼の父親に関しては本当に最後まで気がつかなかった。彼が英語ペラペラという時点で気づくべきだったのかもしれないけど。あのみんな英語なんかペラペラですよ〜、の流れが上手いこと誤魔化してたからなあ。

さて、クリスの探し人と並行して進行するのが、クリスマス祭を前にしての三人娘の恋模様。お互い、巧への恋心を認め合い、正々堂々真っ向勝負に出ることを誓いあった文乃、希、千世の三人なわけですけど、恋敵という以前に、前にも増して姉妹みたいに仲良くなっちゃったからなあ、この三人。文乃の狼少女な言動を、あの千世が何でもない事のように真意を読みとってるあたりに、あー他人同士という壁がとっぱらわれたんだなあ、となんだか感動してしまったわけで。
そんな三人ですから、勝負も陰惨な形にはならず、でも慣れ合わずに真剣に勝ちにきてるので、なかなかお目にかかれない、火花散る激しさとすっきりとした清々しさを兼ね備えた、気持ちの良い恋の鞘当てになっている。
一番可愛さが凶悪なのは、やっぱり希なんですけどね。以前は意図的に前に出ようとせず後ろから見ているだけだった希が、心を押し殺さず素直に前に出始めると、これほどナチュラルボーンキラーとなり果てるとは。
マジ可愛いんですけどw

ただ、読者視点からすると、明らかに圧倒的に優位なのは文乃なんですよね。見ている限りでは、巧が明確に異性として好意を抱いているのは文乃以外にいないわけですし。希や千世に対しては家族的な親愛はあまりあっても、異性に対する熱はあんまり感じられないんだよなあ。
なので、わりとすっきり決着する可能性もありそうななさそうな……。