純愛を探せ! (GA文庫)

【純愛を探せ!】 速水秋水/玲衣 GA文庫

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うん、これは面白かった。

虚言と姦淫を司り、大天使をも倒す力を有す魔神・カルマ。無敵の彼に最大のピンチが訪れていた。それは魔王陛下の愛娘レイナ王女からの求愛である。誰もが恋い焦がれる魔界きっての美貌の持ち主だが、その性格には少々……いや、大きな難があった。カルマの誕生日にペットの「触手生物」を送って来るくらいに……。己の貞操に危機を感じたカルマは、かねてからの思惑もあり魔界を家出した。そう、そんな心配の要らない、真実の愛を探すために!

 そうして赴いた人間界で一人の少女と出会えたのだが、彼女と愛を育むには様々な障害が待ち受けていた。カルマの純愛は成就するのか!?


この主人公のカルマ、伊達に虚言と姦淫をつかさどった悪魔ではありません。決して名前ばかりの悪魔ではなく、これまで彼が犯してきた悪業の数々は、まさに魔神の名にふさわしいもの。それこそ今まで数えきれないほどの人間や天使、女神を殺し、犯し、嬲ってきた罪深き存在である。
そんな輩がいまさら純愛に目覚めるというのは、これまでやってきた所業を鑑みれば、ちゃんちゃらおかしい話なのですが、不思議と彼のひたむきな想いには応援したい気持ちが生まれてくる。
もし、カルマが人間の少女・カナデに出会い一目惚れしたことで純愛に目覚めたのなら、もっと冷めた心地で顛末を眺めることになったでしょう。それだと、単に今までの彼の悪魔としての生き方から変節したようにしか見えないからね。ところが、彼の純愛探しの価値あるところは、虚言と姦淫の悪魔としての本能のままに欲望をまき散らす生き方に疲れ苦しみ、疑問を抱くようになった結果、自分の在りようとはまったく相反する<純愛>という概念を求めようとしたところなのだろう。
面白いなあ。これって、神の敵対者であるところの悪魔が、愛に飢え、愛を求め、愛を手に入れる話になるわけだ。

とはいえ、純愛を探してうろついていた人間界で、人間の少女カナデと出会い、運命の恋をするカルマですが、それまで愛のなんたるかを全く知らない悪魔だったかというと、そうでもないんですよね。彼の傍らに従者として寄り添い、人間界まで付いてくる人形のリビエラ。主を主と思わない傍若無人振りで主人であるカルマを振り回す彼女ですけど、リビエラとカルマの関係って一種特別なんですよね。魔玩具人形というのは、本来主人に対いて忠実で絶対服従が旨なのに、リビエラの態度ときたらカルマを舐めてるとしか思えないような部分がある。かと言って本気で主人を主人とも思っていないのかというと、時折びっくりするくらい的確な指針を示したり、カルマの心情を慮った母親のような優しい言葉で傷ついたカルマの心を包みこんだりもするわけです。
カルマはカルマで欠陥品としか思えないようなリビエラを、何だかんだとずっと傍に置いている。しかも、他に誰も自分の周りには残らなかった、みたいな言い方すらしてるんですよね。
カデナに二人の関係を問われたとき、カルマが語ったように、二人の関係というのは純愛ではないのかもしれないのですが、お互い掛け替えのない存在として、主従の枠を超えた領域で結ばれたそれは、ひとつの愛情の形であるはずなんですよね。
ある意味、リビエラの存在があったからこそ、魔神であるカルマに純愛を探そうという発想が生まれたんじゃないだろうか、とも思ったり。
とはいえ、そのリビエラは一貫してカルマの恋を応援し、アドバイスし、茶化して引っかき回しているわけですけど。この二人の関係は、恋愛というよりも肉親のそれなのかな。

魔界でも有数の実力者であり、天界にも恐れられる強大な魔神。人の心など簡単にもてあそぶことのできる身でありながら、カルマが生まれた初めての恋に右往左往し、頭を抱え、嫉妬に身を焦がす純朴そのままの姿は、一途で正々堂々としたその姿勢と合わさって、非常に好感度高かった。
何気に恋敵の兄ちゃんが、これまた出来た傑物で、めちゃくちゃいいやつなんですよね。カナデの心はすでに決まっちゃっていたのだけど、お互い自分の恋した人に向き合い、想いを伝えようとする戦いは真っ向からのもので、くだらない詐術や策略など使わず、ぶつかっていったその姿は惚れぼれするものでした。
カナデの幸せを願い、相手を陥れることもせず、自分の能力も封印してもがき苦しんだカルマもカッコ良かったけど、九条さんのフラレっぷりも潔くてカッコ良かったなあ。振られ方がこんなにカッコイイ人も珍しいよ。

何気にラスト、ハーレムっぽくなってきてたけど、これはこれでよし。まだ続くみたいだし、大いにラブコメって欲しい所である。