原点回帰ウォーカーズ〈2〉 (MF文庫J)

【原点回帰ウォーカーズ 2】 森田季節/深崎暮人 MF文庫J

Amazon



えっと、ああーーー。そういうことだったのか。二巻にしてようやく【原点回帰ウォーカーズ】なるタイトルの意味を理解した。
変に凝った意味じゃなくて、直球そのまま。登場人物が自らの原点に立ち返ることで、行き詰った壁を乗り越え、迷走から抜け出す話だったわけだ。
一巻は、世界観から語り口に至るまで一種の不条理小説的な様相を呈していたために、よくわからなかったのだけれど、この二巻は短編集でそれぞれ主人公が違い、さらに語り口もマイルドになっていたため、ようやくこの作品の根幹構造というものを理解できたという次第。
それにしても、二巻にして随分と物語が読みやすくなったなあ。というか、全編にわたって大いにラブ寄せがなされて、全部ラブコメになっているのはどういうことですか?(笑
まさか、これも一つの原点回帰というんじゃないでしょうかね。これはこれで大いに大歓迎ですけど!

「天ノ下芝蘭よ、愛を描け」
結局、芝蘭が恋しているのは女の子の甘南備なのか、男の子の甘南備なのか、その辺の性別を超越したところにある甘南備そのものなのか、によって彼女の恋はその様相を異にしてくるんだよなあ。どうにも読んでいる感じだと、彼女の恋心が指向しているのは、天才小学生女優であるところの甘南備が演じている冴えない男子高校生の甘南備のように見えるんだよね。芝蘭が甘南備の正体を知っているだけに、判別しにくいんだけど。女の子の、しかも小学生という素顔を知っているにも関わらず、その天才的な演技力によってこの世に確固として存在してしまっている冴えない男子高校生の甘南備という存在に心揺れ動かされてしまうという、この報われないこと間違いなしの恋心。甘くも切ない背中合わせの友情と恋情。これはこれで、ちょっとした悲恋でもあるのかなー。


「渡会竜太朗は呪い殺す。」
あまりにベタであるがゆえに、何気に一番好みの話。あとがきで触れてるように、確かに一巻での渡会竜太朗と物理火燐って妙に扱いが悪かったような記憶が。
それだけに、二人の関係がこんなことになっていたとは思いもよらず。【神をも召喚する男】竜太朗って、ペテン師の類いだと勝手に思い込んでたら普通に本物のまじない師だったのか。よく考えてみると、この作品の世界観自体、戯けた虚構を中の人たちが真面目に遂行しているような世界なんだから、神様だの妖怪だのが普通に居てもおかしくないのか。
魔術と科学が互いを否定し合う遺恨試合かと思いきや、なぜか途中から物凄いボーイミーツガールな熱い展開に。これってプロットだけなら丸々一巻費やして展開する筋立てですよね?(苦笑
挙句にラブコメになるしさ! エキが何気に可愛いんですけどw


「久我原いすみはしばかない。」
……えー!?
この惚れ薬の効果定義が本物なら、久我原いすみの足利アキラへの感情というのはあれなのか? ガチなのか?
そうなると、アキラ視点から見てきたいすみの数々の危険でおっとろしい言動も、違った意味で捉える事が出来てくるような。
たとえば、アキラの独り言をいつでもどこでも聞き逃さなかったり、内心の呟きを聞いてたみたいに突っ込んできたり、というのもアキラが考えていたのとは別の意味で危険で怖い意味を持つことになるんじゃあ……(苦笑


「足利アキラは嫉妬する。」
まさか森本森にまでフラグを立ててしまうとは。アキラは自分の感情に気づいているなら、嫉妬してる暇なんてないでしょうに。章夫のあれは、際限なくフラグ立てまくるぞ。
とはいえ、章夫は章夫で当事者の二人以外から見ると、アキラを好きなのって丸わかりなんでしょうかねー。案外、青信号同士なのが丸わかりな二人だから、周囲からは生暖かく見守られているのかも。いすみさんのアキラへの感情が不鮮明な状態のまま抑えられているのも、アキラが鈍感というのだけじゃなくて、敢えて押さえているのかもしれないし。
ただ、そういう人たちからすると、青信号にも関わらず、横断歩道を渡ろうとしないこの二人は、いい加減頭にくるんじゃないだろうか。
そういう人たちのためにも、さっさとくっついちまえばいいのに。でも、章夫のあの性格からして、くっつくためには一方的にアキラの努力と勇気と根性と我慢が試されるところだな。ある意味、ご愁傷様である。