彼女は戦争妖精 3 (ファミ通文庫)

【彼女は戦争妖精 3】 嬉野秋彦/フルーツパンチ ファミ通文庫

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前々から伊織の女性への温度の低さ、ドライさには瞠目させられてきたけど……いやはや、すげえなこいつ。
未だかつて、ラノベの主人公でこれほど女性に対して辛辣で容赦なくてキツい人がいただろうか。少女系レーベルの作品に出てくるようなクール系の男連中だって、もう少し女性に対して甘さがあるだろうに。
そう、この伊織。女性に対して女の甘えを一切受け入れないんですよね。別に性格が冷徹だとか女が嫌いだとかそういう話ではなく、男だろうが女だろうが良識のない言動に対しては、単にそれに相応しい敢然とした態度を崩さないだけ。だから、薬子や常葉らに対してはきっちりと礼儀と敬意を払った姿勢を崩さない。多少、伊織には年上好みのきらいはあるかとは思うけどw
クリスの我儘を受容しているのは、それが幼児に不可分な行動原理だと納得した上で、自分が世話したことに対してクリスがちゃんと感謝を示しているから、という当たり前の論理なんですね。ちなみに、クリスの我儘をそのまま受け入れているのではなく、彼、いちいちちゃんとダメなものはダメと躾けてますし。仕方ないと妥協しないあたり、偉いよなあ。
さつきへの態度は、少々辛辣すぎるようにも思うけど、ちょっと痛快でもあるんですよね、というと我ながら矮小な気もするけど(苦笑
鈍感故ではなく、好意を匂わせて気づいて貰おうという態度に対して、虫が良すぎる、と一刀両断して無反応でいる、ってのは年頃の男の子にしちゃあ、やっぱりすげえよなあ。
そんな伊織だから、新しく現れたウォークライ。叔父が預かってくれと送り届けてきたルテティアとの相性は最悪。ほんとに最悪。一応、新ヒロインなんだよね、この子。自己中心的で自分本位。男にちやほやされるのが当たり前、という環境で過ごしてきたような少女であるがために、伊織とは完全に険悪な関係で、衝突してばかり。普通、年頃の男女がぶつかれば、女の方が優勢になってしまうものだけど、この伊織はそのへんの軟弱な男子とは一線を画しているせいか、常に正論でルテティアを叩き伏せるんだから、ほんとに凄いなあ、こいつ。
いや、ほんとに凄いのは、伊織にはまったく甘さがない所なんだよね。普通ならルテティアの我儘に対して文句はいいつつも、最終的には何だかんだと妥協しそうなもんだけど、伊織はほんとに一切妥協無し。容赦なし。文句があるなら出ていけ、という態度を微塵も、一ミクロンも崩さない。仲良くするつもり一切なし。この手の主人公に見られるデレの傾向が一切なし。完膚なきまでになし。実に徹底している。
とはいえ、完全拒絶じゃないんですよね。常識の範囲内で譲る部分は譲ってる。感情的には嫌い抜いてても、嫌いというだけで相手を全否定しない公平さと叔父に頼まれたという責任感。それがこれほど対立しながらも、ルテティアから居場所を奪う形にならない要因に見える。もし伊織が完全に拒絶するつもりなら、どれほどルテティアが傲岸で自己中であろうとあの家にいることに耐えられなかっただろうし。
これほど険悪な関係だったにも関わらず、ルテティアが最後にああいう行動を取ったのも、そのへんに理由があるんじゃないかなあ。とてもデレたとは思えないけど。でも、伊織の信念に、自分が頑なに正しいと信じている生き方よりも眩しいものを感じ取ったからこそ、ああいう行動に出たんじゃないかなあ。でなきゃあ、あそこで伊織に対して悔しいとか勝ち逃げされるようだ、と思う事はないだろうし。
ただし、今のところは間違いなく、伊織のこと、嫌いだぞ、ルテティア。

しかし、けっこう驚きだったのは伊織がクリスの面倒を見ることを面白いと思いだしてることだよなあ。あれほど幼児のお世話、うんざりしていたのに。ただ単に無責任だった父親への反発だけで、意固持になってクリスを放り出さないようにしていただけじゃなかったわけだ。グチグチ言いながらも、細々と気を使って面倒見ているあたり、本来は世話好きなのかもね、伊織は。

あと、叔父さんと薬子先生って本気で何にもなかったのか。絶対、過去に付き合ってたと思ってたのに。それどころか連絡も取っておらず、疎遠だったというのは驚いた。となると、じゃあ薬子が伊織に近づいたのがはたして本当に親切心からだけだったのか、というところに疑問が出てくるわけで。今のところ、尻尾らしいものは全然出してないけど、怪しいところあるのは確かなんだよなあ、先生。
常葉先輩も、こちらは基本的に信頼できる人なんだけど、伊織が微妙に感じている不安。彼女の強さ、揺るがなさこそが脆さなんじゃないだろうか、というところ。この人、そのあたりから崩れてきそうで怖いんだよなあ。
今のところ仲間、同盟関係ともいえるこの二人だけど、信頼は出来てもはたして信用しきれる相手かと言うと微妙に不安定。ある意味、伊織が本当に間違いなく味方と言えるのは、やっぱりクリスしかいないのか。ルテティアは微妙なところだけど、相性や性格の不一致、険悪な関係性というのを無視すれば、ある意味薬子や常葉よりも信用は出来るのかも。
でも、クリスも彼女本人が知らないところでウォーライク全体に繋がるような大きな秘密を抱えているようだし、伊織の負担は増える一方だな、こりゃ。