アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)

【アクセル・ワールド 2.紅の暴風姫】 川原礫/HIMA 電撃文庫

Amazon



……すげえな。いや、びっくりした。何がびっくりしたって、タクムが眼鏡を装着してハカセくんにキャラチェンジして現れた事ですよ。一巻では、どうも個性に薄く、幼馴染の親友キャラであり重要な役どころを任されていたにも関わらず、過去回想などによる親友・幼馴染として立脚するためのエピソードなども描かれなかったため、随分キャラとしての存在感の無い登場人物だったんですよね。正直、このキャラがレギュラー入りの仲間入りして、いったいどうするんだ? と変に心配してしまったくらいに。
それが、こうも鮮やかに色付けしてくるとは。ぼんやりと霞かかって見えなかったタクムというキャラクターの顔が、一気に見えるようになってしまったあたり、凄いなあとなんか妙に感心してしまった。
いや、これが出来るなら一巻でやっとけよ、と思わないでもないけど。
でも、一巻の段階だと主人公と対照的な体育会系マッチョのイケメンタイプだと思い込んでいただけに、ハカセくんだったのはある意味衝撃だったなあ。
しかし、そうなるとタイプ的にハルユキと被ってくるんじゃないかと考えられるんだけど、ハルユキってオタク系ではあっても知略深慮型ではなく、集中突貫型だから、そういう意味では被ってこないのか。二人とも、リアルとは裏腹にバトルでのアバタースタイルはどっちも肉弾型というのもバランス取れてるとも言えるのかもしれない。黒雪姫のレギオン、リアルでメンバーみたら体力的には貧弱的に見えるメンツで固まっちゃってるように見えるのに、バーストリンクサイドに移ると完全ガチンコスタイルだもんなあ、面白い。
いや、このゲームに参加しているメンツは、全員中学生以下という事実をよく鑑みてみると、けっこう現実世界とバーストリンクとの実像の乖離って大きいんだよなあ。
意外とこれ、この作品、ネット上の世界を主軸として展開しているのに、いやだからこそか。現実世界で顔を突き合わせてコミュニケーションを取ることについて、作中の登場人物たちが意識しているかどうかは怪しいけど、物語の根幹にかかわる部分で重要視しているみたいだし。
それとも現実と仮想という括りではなく、戦場と日常という枠組みによる区分けなんだろうか。
となると、黒雪姫先輩という存在は、ハルユキにとって現実と仮想、どっちが主体として捉えてるんだろう。本名を未だ明かさず、どこかバーストリンクの世界と現実世界での存在の境界線が曖昧な彼女の在り方は、どこか不安定さがあるようなないような。
黒雪姫と立場的には同じ位置にいるはずのニコが、確固とした現実の存在としてハルユキの前に現れ、ハルユキが彼女をスカーレット・レインとしてよりもニコとして認識し、信頼を投じたのと比べると……。
うーん、でもそれほど不自然ってわけでもないんだよなあ、黒雪姫。現実とバーストリンクでの在り方にそれほど乖離がないというのが、おかしいと思えるほどの描写は今のところ見受けられないし。ハルユキは双方の彼女を不可分のものとして包括的に受容しているとも取れるし、彼女は彼女で等身大の少女らしい側面も、きっちり見せてくれてるわけだしねえ。
個人的には、彼女にはあの場面で膝を折って欲しくはなかったけど。あんなところを見せられてしまうと、付いていく人はたまらんよ。ハルユキとタクムは、それぞれ彼女個人についていく確固とした強力な理由があるから、膝を折ったなら支え立ち直らせようとするだろうけど、純粋に彼女の思想に傾倒して彼女についていくと決めたものが相手だったら、あの弱さはちょっと致命的だったかもしれない。それは敵対者にとっても同様で、あの黄色はともかく、彼女の信念によって無残に撃ち滅ぼされた当人やその同志はたまったもんじゃないだろう。それで膝を折るくらいなら、最初からやるな、と怒り狂うぞ。
その意味では、この先輩はまだまだ守られる姫でしかなく、頂に立つ女王たるには至っていないのかもしれないな。おのが後悔から逃げず、さりとて捨てず、無視せず、真っ向から受け止め、乗り越える強さを手に入れられるかどうか。とりあえずハルヒコは、彼女を支え守る騎士たらんとして強さを求めてればいいんだろうけど、やっぱり彼には騎士ではなく、いずれ姫と戦う事も辞さない同じ頂を目指す同志として立たないと、本当の意味で黒雪姫は負い目からくる孤独、弱さを克服できないんじゃないだろうか。
はてさて。