スクランブル・ウィザード4 (HJ文庫)

【スクランブル・ウィザード 4】 すえばしけん/かぼちゃ HJ文庫

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こう言っちゃなんだが、某国さんは関税率だきゃあ弄らんと思うぞ。国内での突き上げを考えたら、とてもじゃないが件の協力だけじゃあ割に合わんし。

しかし、十郎にとって一花という存在は彼のアイデンティティの根幹に位置する存在だったはずなのに、ガチンコで対決することなく終わっちゃったなあ、という印象だ。結局のところ、十郎は姉の後を追って執行官に就き、そこで自分が思い描いていた理想と現実とのギャップに心折れたときに、すでにある程度姉への崇拝に似た気持にも折り合いをつけてしまっていたのかなあ。現実に対してやる気をなくしていた、という事は姉が殉職した事になっていた事件に対しても積極的に追及していなかったわけだし、姉への理想化は続いていたとしても、彼女の生き方を追いかけていた訳でも、彼女が殉職した理不尽に対して戦うでもなく、色々と諦めてしまっていたのが、シリーズ当初の彼の有り様だったわけだ。その後、彼が立ち直りを見せたのは姉に一切関係なく、月子たちを導く教師としての在り方によるものだから、つまるところ十郎は、再び現れた姉一花に対して積極的に立ち向かい、変貌した彼女の在り方を否定したり、対抗するための理由を特に持っていなかったのかもしれない。姉に対して引き摺るものをあんまり持ってなかったみたいだし。彼の中では、終わったこと、っぽくなってたんだよね。
ゆえに、愛する姉に殺されかけたことに落ち込み、自分が見ていた姉の姿が一面でしかなく、彼女の苦しみをわかっていなかったことに気づいて悔んだとしても、そこに葛藤は少なく、帰ってきた姉の有り様を否定する熱量には乏しかったのかな。
姉の変貌に対して悄然とし、半ば捨て鉢になりながらも、その一方で教師として生徒や学校の事に意識がいっている十郎の内面を見れば、すでに彼が姉にこだわる弟ではなく、一人の教師として立脚していることがよくわかるように思う。
その辺が、一花という存在と十郎がどこかスレ違ったまま事件が収束してしまったような感じが付きまとう原因なような。

彼が月子に告げたセリフ。ありゃあ月子からしたら夢みたいな、彼女がこれから生きていくうえで固めた覚悟を、支えきるに足る宣言だったんだろうけど、残念ながら十郎からすると、あれは異性に対する愛情とは程遠いものだったんだろうなあ。まず、色恋の感情は介在していないに違いない。彼としてはおそらく最大限の、姉一花に対するそれに匹敵、もしくは上回るだけの親愛の情と一生をかけた覚悟を込めたものではあったんだろうけど。とてもじゃないけど、この男が小学生に対して恋愛感情を抱いているとは思えん(苦笑
まだ小学生でありながら、社会のあるべき未来の展望を思い描き、それを叶えるために自分にできるあらゆる努力を尽くす覚悟を決めた月子の今後の人生は、きっと凄絶極まる厳しいものになるんだろう。それを支える十郎の存在は彼女にとってとてつもなく大きなものとして機能するんだろうけど、女としては傷つくことが多くなりそうだなあ。なんかこれ以上なく近しい存在になりながら、彼女が望む関係からはとてつもなく遠くなったような。それを近づけるには、それこそ尋常じゃない頑張りが必要そう。がんばれ〜、女の子。

氷見谷関連の展開は、ラストちょっとびっくりした。あのキャラがそういう動きに出るとは、そこに至るまでまるで思いもしなかったので。
正直この巻まで、氷見谷たちについては対して関心も抱いていなかったんだけど、なんか面白くなってきたかも。
女医先生と、元テロリストの兄ちゃんとの不思議な関係もなんかイイ感じで、この二人がやり取りしているシーンは妙にニヤニヤしてしまった。
この二人も今後、キーパーソンになってくるんだろうか。
そして、能勢っち。一見、壊れまくってる彼だけど、そう単純な狂キャラにもなりそうになく、このカードがどう機能するか、まだ全然わからんのが楽しみなような不安なような……。