光炎のウィザード  運命は千変万化 (角川ビーンズ文庫)

【光炎のウィザード 運命は千変万化】 喜多めぐみ/宮城とおこ ビーンズ文庫

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……うわぁ、スゴっ。
前回、ヤムセ先生がリティーヤに対してあらわにしてしまった黒い情念。ただの師弟関係ではありえない、弟子に向けるはずのない強烈な感情の発露にさらされたことで、純粋に師として慕っていた男に恐怖の念を抱くリティーヤ。
まさか、この二人の間にここまでドロドロと濃厚な男女の想念の交感が行われることになるとは。その生々しさにあてられて、ちょっと酔ってしまったかも。うはぁ……。
ヤムセって、もっと割り切りのしっかりした質実剛健タイプの人だと思ってたんだけど、ここまでドロっとした執着を見せるとはなあ。いや、あのユーロナに対する執着を思えば、本来この人はこんな淡白で冷厳な人ではなく、そもそもが情念に身をやつす人だったのかもしれない。というより、特定の対象に対しては極端な執着を見せるタイプ、というべきか。
だいたい、相手がリティーヤに手を出さない、と分かった瞬間、一気に冷めたあのヒドイっちゃひどい態度をみたら、元来は淡白だよな、先生って絶対ww
ヤムセとリティーヤ、二人の関係が同性代の対等のものではなく、明確に上下関係が存在する師弟というのも、この背徳的な雰囲気を膨らませている。
自身の手から離れてほかの男のもとに行くというのなら、いっそ殺してしまっても。嫉妬の念が一瞬とはいえ殺意にまで高められるほどの情念。そんなものをぶつけられて、能天気なリティーヤでもそれまでと同じようにヤムセと接することもできず、師のことがわからなくなり、怯えに駆られる彼女の感情は、弟子であり女である彼女からすれば当然のものなんですよね。それでも、必死に彼への信頼に縋りつき、これまでと同じように接しようとするのは、機関車少女の面目躍如と云ったところなんでしょうけれど。
そうやって、必死におびえる心に鞭打ってヤムセから離れまいとすることで、自分がなぜおびえているのか。ヤムセがなぜ、あんな行動をとったのかを、彼女は一生懸命に考え、想像をめぐらせ、胸に手を当て確かめて、徐々に自分の心を、先生の感情を理解していきます。
それに伴って、強張っていた心が解きほぐされていく様子、ピンと張り詰め今にも壊れてしまいそうだった二人の間に流れる緊張感が、溶けていく姿。師であり、弟子であった関係が、決定的に改変されていく過程。ここが、本当に素晴らしかった。
何も知らない無邪気な少女でしかなかったリティーヤの仕草、所作に、不意に混ざりこむ艶めかしいまでの女の色気。それが、ヤムセの漂わせる男の情念とまじりあって、表向きは何も変わっていないはずの二人の関係、やりとりに、なんだか、背筋をなめあげられていくような、ゾクゾクするものが走ってたんですよね。
酔っ払った、というのはこのあたり。
ものすごい濃度だった。



しかし、改めて女ってのはすごいなあ、と思い知らされる。リティーヤって、馬鹿だし無鉄砲だし天然で悪意なくトラブルを引っ張り込む迷惑娘で、ヤムセにとっちゃあ馬鹿弟子、年下で妹のような、もっと言うなら娘に近いような手のかかる弟子なわけですよ。でも、守られるべき存在で、庇護者でしかないはずのリティーヤなんだけど、ふとした瞬間、まるですべてを包み込むような包容力が垣間見える。師でありはるかに年上の男性であるヤムセを、まるでできの悪い弟か息子のように扱うこともある。
なんでしょうかね、この大きさは。リティーヤの普段が普段だけに、この不思議な感覚は顕著に感じられる。
これが、年の差、立場の差のある男女の間に芽生える関係のカタチというやつなのか。


事態は、まるで予想だにしていなかった急展開が発生し、いったいどうなるのか、と思ったら……先生、やりやがった!!
とんでもないことやらかしながら、リティーヤに何か言葉を投げかけるでも、行動を示すでもなく、あろうことかそのあと何事もなかったかのように文庫本ひらいてわれ関せずとばかりに知らん顔をする、この外道(笑

この外道!(爆笑

それでこそヤムセと、爆笑してしまったよ。この人、大好きだわ。あの無茶苦茶なリティーヤには、こういう傍若無人な人でないと付き合えないわ、と改めて思った。
そして、憐れゼストガさん(苦笑
いや、もうね。誘拐だ! とか。無駄な抵抗だって、もうこの人は。可愛いなあw 可哀想だなあw