神様のメモ帳〈4〉 (電撃文庫)

【神様のメモ帳 4】 杉井光/岸田メル 電撃文庫

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「僕がいる。あんたらはまだつながってる」


そう、そうだ。繋げたのは、君なんだよ、ナルミ。
ヘタレで軟弱で弱虫のくせに、頑固で未練がましく地べたを這いずろうと縋りついて諦めない、君がいたから、まだ繋がっていたんだ。
四代目って本気で怖いじゃないですか。殴るし凄むしにらむし蹴るし。それなのに、ナルミ、ビビッてるくせに何の躊躇もなく彼に近づいていくんですよね。彼の懐に、怖気づきながらズケズケと踏み込んでいく。それで殴られ蹴られしているくせに、体の痛みは恐れない。この子は、一度こうと決めたら、ほんとにためらわないんですよね。根がヘタレなだけになかなかそういう印象持たれないんだけど、いっそその他人の領域に踏み込む姿は、図々しくすらある。ただし、彼の場合はそれ相応の、そして相当の覚悟を決めて踏み込んでるんだろうけど。

こうしてみると、ニートたちにとってナルミという存在は今となってはとてつもなく大きいんだろうなあ。
個々の能力はとてつもなく大きい彼らだけれど、彼ら単独ではぶっちゃけ何一つしようとしない。一歩も踏み出そうとしない。彼らは本来、ただそこにあるだけの存在なのかもしれない。
でも、ナルミの縋りつくような願いがあってこそ、見っともないほどの踏ん張りがあってこそ、彼らニートたちの巨大な力に方向性が与えられ、それはとてつもない大きな流れとなって、沈澱してしまった淀みを押し流していく。
この希薄な人間関係が尊ばれる現代の中で、彼のように他人の心の内側までズケズケと踏み込んでいくことは、とてつもない抵抗感と勇気が必要なはず。実際、ナルミは何度も反発と抵抗に遭い、その人からの信頼や友情を喪うかもしれないという恐怖感にさいなまれ、全身を震わせている。
でも、どれだけビビッても恐れても、彼は歩みを止めないんですよね。その重さを十分知りながら、ちゃんと覚悟を持って踏み出している。だからこそ、前の巻のテツさんも、今回の四代目も彼の行動を疎ましく思い、錨を覚えながらも、決して彼への信頼を失わなかったわけです。
普通無理ですよ、自分がだれにも見せないようにしてきたものの内側に無理やりに入り込もうとしている相手に、これほどの信頼を抱くなんて。
でも、それを成せるからこそ、ナルミという少年は大した野郎なんだろうなあ。四代目が、ナルミに後事を託したシーン、ちょっと本気で感動してしまった。そこまで、あの四代目がナルミを信頼してたのか、って。
最初のころ、ナルミが平坂組の連中から誤解を発端に兄貴として敬されるのを失笑とともに眺めていたのが、懐かしい。
今となっては、この軟弱な高校生には、確かに連中から兄貴と慕われるだけの器があると信じられる。それは彼の成長とも言えるんだろうけど……早々に彼と杯を交わした四代目は、見る目があったんだろうなあ。

しかし、ナルミってまだ高校生なんだよね。この巻で彼がやってる仕事みてると、とてもニートとか高校生のレベルじゃないんですけど?
バンドのプロモ活動って、バイト気分でできるもんじゃないでしょう? 四代目から結構な給与貰って驚いてたみたいだけど、仕事内容を考えるとこれ、多分妥当な金額なんだろうなあ。

アリスは、なんかもう最近、ナルミに甘くなっちゃったよねえ(苦笑
もうベタベタじゃないか。彼がいないともう生きていけないレベルまで至っちゃってるじゃないんですか? ああもう、可愛いなあちくしょう。