幻想譚グリモアリスIV  罪と祈りとほほえみと (富士見ファンタジア文庫 か 7-1-4)

【幻想譚グリモアリス IV 罪と祈りとほほえみと】 海冬レイジ/松竜 富士見ファンタジア文庫

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アイギスの書という、グリモアリスに真っ向から対抗できる力を手に入れたとはいえ、誓護の最大の武器はやっぱりその叡智なんだな。
何だかんだと言って、彼がアイギスの書をまともに使ったのって、キング・オドラと戦った時だけですしね。その時だって、書は彼が仕掛けた策に使われる道具でしかなかったですし。
とはいえ、使わないとはいえ、ただ所有しているだけで誓護は魔書を交渉の道具として、また抑止力として非常に有効に利用しているのである。この辺、彼は魔書をそのカタログスペック以上に使いこなしているとも言える。どんな攻撃も防ぐ絶対の楯たる魔書を、そもそも攻撃すらさせないように活用しているんだから、誓護という男の恐ろしさの一端が伺えるというものだ。彼と一線を交え、その後味方に加わったオドラやアネモネがただの人間である彼に一目置くのもわかるというものである。彼らは誓護が魔書の所有者だから一目置いてるんじゃないんですよね。
そういえば、アネモネはもう少し獅子身中の虫っぽく、味方ながらも油断ならない相手になるかと思ったんだけど。ほら、アコニットに執心している分、誓護に対して敵愾心をもっと見せると思ったんだ。あの侍女みたいに。とはいえ、さすがは一勢の長というべきか、私心で自軍を混乱させるような無様な真似はしないだけの十分な格の持ち主であるということがわかったし、意外とアコニットの味方としての誓護を高く評価してたんだな。でなければ、アコニットを騙す形で誓護の策にああも素直に協力することはなかっただろうし。
まあ、アネモネがあれだけ腹に一物持たずに積極的に協力してくれたのには、アコニットがアネモネに信頼しているという態度を見せたからなんだろうけど。アコニットも変わったよね。以前の彼女なら、アネモネみたいな相手は苦手意識を隠さず、拒絶していただろうに。もっと、狭い世界を維持するのに満足してしまっていただろうに。
その意味では、彼女は多くの人々を導く国主としての素養を身につけつつあるわけだ。
もっとも、そんな国主としての責任を放り出しても、誓護やいのりを助けに行こうとしちゃうのは、どうなんだろう(苦笑
個人的には、ちゃんとアネモネたちを説得しようとしているから、イイと思うんだけど。重鎮たちの間にも、誓護の存在が今後のためにもとてつもなく重いモノだという認識はあったわけだし。
まあ、それらも全部、誓護の掌の上だった、というあたりは凄味すら感じさせる。
とはいえ、彼の場合、その緻密かつ大胆な策の根底にあるのは、他者への信頼にあるところが、好感度高いんだよなあ。願望に寄るものではなく、その相手の人となりを信じるからこその、自分の身を危険にさらす大胆不敵な策謀の網。
そして、その綱渡りをよろめきながらも渡りきる、度胸の良さ。
やっぱり、大した男である。こういう男だからこそ、自然とみんな命をかけて彼を助けようとしてしまうんだろうね。その意味では、彼もまた十分人の上に立つ資質はあるんだろう。
いいじゃん、お似合いじゃないの、アコニットと二人。そろそろ、二人の間で友達友達言ってるのも限界来てるみたいだし。アネモネさんが、二人が口にしている関係と実際の感情の食い違いに気付いて、ちょっかいかけてきそうだしw

あと、興味深いのが、これまでただ守られるだけに終始していたいのりの変化だよなあ。今回の一件を通じて、彼女はある意味兄の庇護から抜け出し、兄を守り続ける意思を得たわけで……そのから彼女がこれまでの彼女からどう変わっていくのか。ちょっと注目してみていきたいところだ。