Xの魔王 (MF文庫 J い 1-6)

【Xの魔王】 伊都工平/万国あゆや MF文庫J

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……いや、なんというか、参ったな。相も変わらず、この人の語り口というのは強引なのか、他人の目を気にしていないのか、不親切極まりないんですよね。なまじ、自分に酔ったようなめちゃくちゃな筆致とは裏腹の、どこか淡々とした理詰めっぽいような語り口で綴られるものだから、どうにも混乱してしまうのだけれど。なんというか、具体的かつ緻密な世界観やキャラクターの設定がちゃんと作られ、作品の基礎部分に埋め込まれているにも関わらず、その辺を詳細に分かりやすく説明する気がサラサラない、というのが恐ろしいんだな、うん。いや、もしかしたら説明しているつもりはあるのかもしれないけど、正直できてないと思うぞ。
さらに恐ろしいのが、説明する気はないくせに、ちゃんと読んでると何となくわかった気にさせられてしまうところなんだよなあ。言ってることは分かりにくいし、無意識にか色々端折ってるけど、言ってる意味はわかる、みたいな?
いやあ、自分、なんでこの人の作品、こんなに好きなんだろう。方向性なのか雰囲気なのか、この独特の伊都ワールドには毎回、魂のレベルで引っ張られるような感覚があるんだよなあ。無茶苦茶面白いってわけじゃないし、小説としてうまいどころかかなり粗くて破綻している部分も目立つのに、好きという意味では空恐ろしいほど好きなんだわ。

魔王×王女×勇者のトライアングルファンタジー、なんて題材、この人が書くと、こうもエゲつないものになってしまうのか。
ラストの展開なんか悪趣味が過ぎて、背筋がゾクゾクしてしまったくらい。これが悪意の結果ならともかく、魔王ミトラスなりの縋るような願望の結果だもんなあ。最後の彼の苦悩に満ちた独白は、胸に来るものがあったし。確かにこれは、あとがきで作者が云う所の「最悪の三角関係」だわ。
人と化し、人としての愛情と友情を身につけてしまったが故に彼を蝕む絶望と破滅の予感。誰もが良かれと思い、愛情や友情のもとに行動した結果、悲惨しか生まれないというのは、やるせない事である。それが人に備わった弱さが原因と言うのなら、現実と言うのは少々残酷が過ぎるというものだ。
なんとか続きが出て、みんなにそれなりのハッピーエンドを用意してほしいところだけれど、続きが出たら出たでカルセがあれだと、恐ろしい事になりそうなんだよなあ。怖いものみたいさ、というのもあるけれど、やっぱり続きは読んでみたいぞ。