とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)

【とある飛行士の恋歌 2】 犬村小六/森沢晴行 ガガガ文庫

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そうか、この段階でクレアの方がカルエルの正体を察し始めるのか。これは少々予想外だった。クレアとカルエル、二人ともが何も知らないままもはや二進も三進も行かないほど関係が進行してしまってから、真実を突き付ける展開を予想していたんだが、なるほどそう来たのか。
思いのほかのんびりと騒がしくも楽しげな学園パートが続き、ある種の捨て鉢な覚悟を持って浮遊島<イスラ>に乗り込んだカルエルにとって、クレアという仄かな想いを芽生えさせる少女との出会いや、同世代の友人のいなかった彼にとって初めてと言える気の置けない仲間たちとの日々は、予想外に楽しく心浮き立つものであることが、ここでは記されている。
今、まさに青春を謳歌している彼なのだけれど、その心の隅にはそれでも消えないくっきりとした憎しみの黒がこびりついている。彼が今、光の中にいるからこそ、余計にその黒へのこだわり、執着は濃くなり、増しているのかもしれない。
ひそかに、だが着実に掻き立てられていく憎悪の種、復讐の炎。

そして、ここにきて描かれるクレアの過去。魔女として排斥され、聖女として利用され、心を閉ざし、自らを人形のようにあつかった末に、生まれ持った風の恩寵を喪ってしまった彼女。
彼女の人生は悲劇であるけれども、同時にいかに不可抗力であろうとも彼女の名をもって多くの死が現出したのも確かな話。彼女はそれを必死に、仕方なかったのだとごまかそうとしている。生まれてこの方、幸せなど知らずにただ耐えて耐えるだけの人生を過ごしてきた彼女は、今はじめてただのクレアとして、普通の女の子の人生を謳歌している最中であり、そんな中で不意に突き付けられてきた、カルエルの正体とそれに伴う自分の罪業に、まともに向き合えないのも、それは無理のない話なのかもしれない。
それでも、彼女はきっとカルエルの正体を、好意を抱き始めた男の子が、本当の自分に向けるであろう憎悪を知ったその時から、過去と向き合い、乗り越える試練を課せられたといえる。
そして同時にカルエルもまた、今は憎悪から忘れている母の最期の言葉を思い出さなければならない日が近づいているのだろう。

呉越同舟、本来ならば相容れぬはずの二人を乗せた浮遊島<イスラ>は今、前人未到の領域で未知の国家との遭遇を果たす。
今はただの学生として過ごすクレアとカルエルは、この遭遇をきっかけとして本来の自分にあてがわれている立場に立ち戻らなければならないのかもしれない。おそらくは、きっとその時が、自らとの対決の時なのだろう。

正直、ヒロインとしての立場をクレアに食われてしまうかと思われていたアリエルが、これがまた意外なほど土俵際で踏ん張る……どころか、家族と遠く離れた地で二人きりの肉親同士、という環境が作用したのか、今までアリエルを女の子扱いしていなかったカルエルが、アリエルの存在の大事さ、大切さを思い知り、再認識する場面がたびたびあり、むしろ以前よりも彼の中でその存在感が大きくなってすらいるのである。
ひそかに、過程はともかく、最終的にカルエルを捕まえるのは彼女じゃないかと考えてたんだが、今回のこれを見る限り、どうやらその予想に手ごたえが生じ始めた感じw

筆者の別シリーズ【レヴィアタンの恋人】を読んでる人は、あの人が出てきた途端、ひっくり返ったんじゃないだろうか。私はひっくり返った。
いや、あまりにも普通に出てきたんで、最初は気付かなかったよ。というか、気づかなかったというより、前からこのシリーズに出ているキャラのつもりで読んでしまったというか。あまりにもナチュラルに出てきやがったからなあw
まったく、派遣されたらどこにでもいくのか、この人は。相変わらずわけのわからん面白キャラだしさ。いったいどこから派遣されているのか。あれか? 著者の嫁なのか? だったら仕方がないな。