ケモノガリ (ガガガ文庫)

【ケモノガリ】 東出祐一郎/品川宏樹  ガガガ文庫

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お見事!! これはもう、お見事と称賛するほかどうしようもない。これだけ思う存分に書きたいことを書き倒されちゃった日には、ねえ。
自分の好きなものを好きなように好きなだけ書き倒したそれが、これだけ面白かったらもう申し分ないわな。
筆者の手掛けたゲームや小説(原作付き)には、これまでどうにも楽しみきれないもやもや、っとした部分があったんですけどね。自分の好きなものに夢中になってて、提供された立場の此方はちょっと置いてけぼりにされているような、そんな感じ。エンターテインメント作品でありながら、どこかエンタメであることを蔑ろにしているような。
でも、この作品にはこれまで著者の作品に感じていたある種の歪さは見事に払拭されていたように思える。全体を俯瞰しても非常にバランスのとれた構成は、最初から最後まで疾走感の途切れない。余分なものを削ぎ落とし、徹底して精査し錬磨されながら、自身の<好き>な部分は一切取り落とさず完全に凝縮して詰め込みこんだストーリー。
まったく、お見事としか言いようがない。これは、書いた当人も満足、読んだこっちも満足、という良縁だな。

これだけダークなストーリーにも関わらず、完全にヒーローものとして立脚しているのは、やはり幼馴染の存在が大きいなあ。主人公の人格云々はあまり問題ではなく、この惨劇の中で開花させてしまった主人公の才能、人間としての領域を踏み外してしまった主人公の在り方を、幼なじみの彼女が拒絶も躊躇もなく、そのすべてを受容し、受け入れ、抱擁しているからこそ、この物語は主人公の苦悩や迷いという停滞を一切とりいれず、一瞬たりとも止まることなく、怪物と化した主人公に熱い血潮をたぎらせたまま、その決意と覚悟を奮い立たせ、その最後まで突っ走ることができたのだろう。

なんにせよ、面白かった。隙間なく、ピッチリとはみ出すことなく面白かった。