プリンセスハーツ―初恋よ、君に永遠のさよならをの巻 (ルルル文庫)

【プリンセスハーツ 初恋よ、君に永遠のさよならを の巻】 高殿円/明咲トウル ルルル文庫

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いやすげえ。前巻でのジルとオース王子との熾烈な外交戦争、あれほどのレベルでまだ前哨戦なのか、と前の感想で書いていたのだけれど、本気であれで前哨戦のレベルでした。
凄まじいまでの、あらゆる手段を使い、タイミングを掌握し、搦め手、正攻法、口八丁手八丁、国情や国際情勢をも加味した外交闘争、謀略の嵐、苛烈な駆け引き。いやはや、凄かったー。時に形勢が片方に傾き、また思わぬ一手で状況がひっくり返り、と息をのむような緊張の連続。
ここでジルとオースのみがやりあうのかと思いきや、帰還したルシードの活躍がまたハンパないんだわ。まさに王の威厳。この存在感には圧倒すらされる。この男、まさかここまで王としての大きな器を有した男だったのか。
いや、それ以上に今回ルシードが輝いていたのは、ジルへの想いと、ジルのための行動そのものでしょう。ルシードがジルに訴える言葉の多くは、今回至言というべきものばかりで、この男は決して知恵者ではなくても、賢者が得てして見失いがちな真理を、純真な目で真っすぐ見つめている、というのが良く分かった。
ジル、今回ほんとにメロメロにされたんじゃないのか、これ。
オース王子との対決で頼もしく支えられ、またトーナメントでは思いもよらぬ形で彼が自分をどれだけ大切に想い、気遣い、守ってくれているのかを思い知ったのですから。
この時のジルは、まるでときめく少女のようで、なんかすっごい可愛かったなあ。最後のあのセリフは反則だろう(笑
本人、自分が言ってる言葉の意味、まるでわかっていないのはひっくり返りましたけど。この点に関してはルシードの方が常識人だ。普通はそう考えるって。しかし、どうしてこの女は甘酸っぱい恋や愛情の言葉じゃなくて、管理だとか調教だとかいう物騒な単語しか頭の中から出てこないんだ。

もうどう見ても、仮面夫婦なんか今更の話。それぞれが想いを寄せている相手、メリルローズとグリフォンに匹敵する大切な存在として、お互いの想いは繋がっているはずなのに……。

それなのに、不穏の影は消えないんですよね。高殿さんって、ときどき思いっきりハッピーエンドとは真反対の方に決着持ってくときあるからなあ。いや、ハッピーエンドに終わる場合も多いんだけど。それだけに、どこに落ち着くか予想がつかん。


今回の一件の真相に関しては、殆ど最初でバラしてましたよね。彼の独白を読めば、だいたい想像はつく。それだけに、ジルの最後の一手には仰天させられましたけど。なんで!? と思った。思わされた。これは、うまい事逆手に取られた。
オース王子もなあ……この子は器用なんだか不器用なんだか。13歳にしてあれほどの才を見せ、大人の振る舞いを見せつけながら、それを成し得た動機というのは実に大いなる不器用の結果だものなあ。
彼の想いが真に彼女に向いていたら、というのは考えてしまうことだけれど。オズマニア王女の複雑に絡みきってしまった想いと言うのも、ひたすらに重たい。結局、ほどけないほどに絡まりきってしまったんだなあ。あれは、もう切って捨てるしかなかったのだと、考えざるを得ない。その意味では、ジルの一手は彼女にとって本当に救いとなったわけだ。
その派生として、サラミスたちの人生は大いに変転してしまったのだけれど。味方の少ない、というか殆どいないに等しいジルとルシードだけに、この二人については真に味方になって欲しかったところだったんですよね。二人とも、若いながらも才能は実に豊かで個性的だったんだし。
まあ、味方にはなりつつも、すべてを打ち明けあう仲間にまではならなかったか。惜しい話だけど、あの男の子の気持ちはわからないでもない。男って、ああいう風に考えちゃうんだよなあ。ダメだよなあ……。
でも、二人ののちのちの話を読むに、二人にとって最良ではなくても、なんだかんだとうまく結ばれたみたいだし。うん、良かったなあ。


さて、物語の方は、最後の最後にまた大きな進展を迎えることに。これ、パルメニアシリーズを読んでる人なら、あの騎士団からああいう申し出が来た、というのは、ほんとに衝撃的で仰天するような事だとすぐにわかるでしょう。
遠征王にしても、マグダミリアにしても、その時…シリーズでも、この儀式に関しては何度も繰り返し語られてる、国事に関わる最重要の一件ですもんね。そのパルメニア王国の最重要秘事が、アジェンセン公国のルシードに向けて発せられたわけですから。
これは、ほんとに大事だわ。